「F1ファンはエンジンの熱効率ではなくドライバーのバトルが見たい」 / ホンダF1撤退の余波
ホンダのF1撤退によって、F1が抱えている問題についての議論が再熱。複雑で高価な開発費用のかかるF1パワーユニットは失敗だとの圧力がさらに強まっている。

かつてF1は“走る実験室”とも言われ、自動車メーカーの研究開発の場でもあった。しかし、その役割はFIA 世界耐久選手権、さらには、電気自動車のレースであるフォーミュラEへとシフトした。

F1も業界の流れに沿ってエンジンのダウンサイジング化を進め、2014年にはエンジンをハイブリッド化。だが、1.6リッター V6ターボハイブリットエンジンは、過去に代名詞だった耳をつんざく轟音を失い、サーキットにタイヤのスキール音が鳴り響く状況にファンは離れていくという悪循環を生んだ。

いや、実際に自動車メーカーはもはやレースに研究開発の価値を見出してはいないのかもしれない。実際、ホンダは、F1撤退の理由を『2050年のカーボンニュートラルの実現』だと説明した。F1はそれより20年も早い2030年にカーボンニュートラルを目指しており、2023年に合成燃料の導入を計画しているにも関わらずだ。さらにフォーミュラEへの参戦も検討していないとしている。

ホンダのF1撤退によって、エンジンメーカーは3社だけとなるが、複雑で高価なF1パワーユニットに自動車メーカーは参入に二の足を踏んでおり、特に独立系エンジンメーカーが入り込む隙はなくなってしまっている。

Sky Sports F1のテッド・クラビッツは、それこそがF1が抱えている問題の核心だと語る。

「現在のエンジンは非常に複雑だ。過去の多くの人々がそれらを馬鹿げていると呼び、不必要に高価だと言ってきた。それらの障壁によって独立系エンジンメーカーは、誰かがそれを実現させるために5億ポンドを投資することがなければ独自に開発することができなくなっている」

2026年には新しいエンジンレギュレーションが導入される。F1はその時点で抜本的な改善が必要だとテッド・クラビッツは語る。

「独立系メーカーのために一石二鳥なのは自然吸気のV8やV10に戻してより安価で実行可能にすることではないだろうか? 2026年にそれを実現すれば、独立系メーカーが戻ってくる可能性がある」

マーティン・ブランドルは、重要な点は、一般的なファンは、F1マシンにどのようなエンジンが使用されているのではなく、ドライバーの戦いに興味があると語る。

「最新のエンジンの機器と設計は非常に印象的だ。しかし、テレビで熱効率について話し始めると、ファンがうめき声を上げるのが聞こえてくるようだ。彼らは熱効率の数値には興味はない。彼らはグラディエーターがホイール・トゥ・ホイールで戦っているのを見たいと思っている。F1はそれを思い出さなければならない」

「サードパーティのサプライヤーが存在し、F1に影響を与える重要な決定を下すのには決して相応しくない人々に頼らない状況に確実に戻らなければならない」

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カテゴリー: F1 / F1マシン