シモン・パジェノー キャデラックF1で新たな道「僕に言えるのはありがとうだけ」

元インディカー王者で2019年インディアナポリス500優勝者のパジェノーは、2023年にミッドオハイオでブレーキトラブルに見舞われ、マシンが激しく横転する事故を経験。
それ以来レースには出場しておらず、3年が経過した現在も神経学的な症状が残っている。
2023年の大事故でキャリアが一変
フランス紙『Ouest-France』によると、42歳のパジェノーは疲労の程度によって、現在も強いめまいに襲われることがあるという。
「衝撃による影響があった。特にマシンが非常に速く回転したことによるもので、今でもかなり強いめまいが起きる」
事故はパジェノーの身体だけでなく、それまでレーシングドライバーとして築いてきた自身のアイデンティティにも大きな影響を及ぼした。
「以前の僕はスーパーマンのような気分だった。でも、それがすべてなくなってしまうと、自分がまったく役に立たない人間になったように感じて、完全に道を見失ってしまった」
長年にわたって人生の中心にあったレースを突然失ったことで、パジェノーは自分が何者なのかを見失うほどの苦しい時期を過ごしたという。
キャデラックF1のシミュレーターでも最初は苦戦
そうしたパジェノーに新たな道を与えたのが、キャデラックのF1プロジェクトだった。
ただし、シミュレーターでの仕事も当初から順調だったわけではない。事故の後遺症によって、最初のセッションでは深刻な症状に見舞われたという。
「シミュレーターでの初日はかなり厳しかった」
「目の前に何度も光が走って、ひどい片頭痛があり、乗り物酔いのような状態になって吐き気もした。記憶が飛んでしまうこともあった。でも、時間が経つにつれて、少しずつ状況がクリアになっていった」
それでもパジェノーはシミュレーターでの作業を続け、現在ではキャデラックF1マシンの開発に携わっている。
キャデラックF1マシンの開発を担当
パジェノーは現在、キャデラックのシミュレーターをドライブし、F1マシンの開発作業に直接携わっている。
「今はシミュレーターをドライブしているし、これからもキャデラックのF1マシンの開発を続けていく」
インディカーで培ってきた豊富な経験に加え、パジェノーは以前からマシンの技術的な部分を理解し、開発に生かす能力を自身の強みとしてきた。
「僕の専門分野は昔から技術的な部分だった。テクノロジーを理解することや、それをある意味でマネジメントしていくことだ」
実戦復帰の見通しが立たないなかでも、その経験と技術的な知識をF1という新たな舞台で生かせることに、大きな意味を感じている。
「すべての細部に関われる」新たな目的
キャデラックF1での役割は、パジェノーにとって単なる開発業務以上の意味を持っている。事故によってレースを失い、自身の存在意義さえ見失った時期を経て、再びモータースポーツの最前線でマシン作りに関われるようになったからだ。
「このすべての一員になって、プロジェクトが成長していくところを見ることができる。そして、レーシングカーを可能な限り最高のものにするため、あらゆる細部に取り組む機会がある」
「僕に言えるのは『ありがとう』ということだけだ」
2023年の事故によってレーシングドライバーとしてのキャリアが突然途切れ、現在も後遺症と向き合うパジェノー。それでもキャデラックF1で、自らの経験と技術的な能力を生かせる新たな居場所を見つけた。レースに出場するという形ではなくとも、F1マシンの開発に携わることが、パジェノーに再びモータースポーツの世界で進むべき道を与えている。
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