ブリヂストン 浜島裕英
ブリヂストンのMS・MCタイヤ開発本部長である浜島裕英が、2009年F1シーズンを振り返った。

2009年シーズンにおけるブリヂストンにとっての重要要素
スリックタイヤの再導入です。それまで11年間に渡り使われてきた溝付タイヤからの変更は、F1レギュレーション上の大きな方針転換でした。また、空力レギュレーションの変更により、チームはシーズンを通じて車両の開発・改良に没頭しなければならなくなった訳ですが、シーズン中のテストが禁止になったことも加わって、こうした開発・改良は更に難しいものになりました。私たちは全チームと緊密に仕事をし、熾烈な競争下でそれぞれの目標を達成できるよう支援を行ってきました。

また今シーズンには、レギュレーションに基づいて用意されるレース用の2種類のコンパウンドの差を拡大して欲しいとの要望が出されましたが、私たちは設定するタイヤ種類間で対応温度域の違うものを組み合わせることによりこれに応えました。またこのことは、チームとドライバーにとってはレースで取り組む新しい課題ともなりました。

今シーズンのF1に於いて最も影響のあった点について
レギュレーションの変更とテストの禁止が重なったことが一番大きかったと思います。昨年までであればシーズンを通じてテストデーが有りましたので、チームは十分な時間と周回数をもって車両とパーツの開発が出来た訳ですが、今年はこうした環境変化が有ったため、結果上位集団の顔ぶれが多彩になりました。一方、上記のような制約にも関わらず、シーズンを通じて素晴らしい進化を見せたクルマも有りました。

11年振りに再びスリックへ戻って
私たちはF1への参戦を通じて多くのことを学んできました。溝付タイヤだった11シーズンは、私たちの開発にとても役立ちました。溝付タイヤは生まれついてのレース用タイヤという訳ではありませんから、レース用のタイヤらしく作り込んでいくことが大きな課題でした。スリックの復活によって、私たちがこれまで培ったテクノロジーと学んだ教訓をスリックタイヤという究極のレース用タイヤに応用することが可能になったのです。

2010年シーズンのフロントタイヤ・サイズ変更について
2010年用のフロントタイヤは幅が狭くなります。これによってクルマのフロントとリアのグリップ間のバランスが良くなります。スリックタイヤが復活したとき、寸法は溝付タイヤと同じでしたから、相対的にリアよりもフロントのグリップが大きくなりました。フロントタイヤの幅を狭くすることで、これを解決することができるのです。

2010年シーズンの給油禁止規定の影響について
レーススタート時のクルマ重量が約100kg重くなりますので、強いタイヤが必要になります。しかし、クルマに作用するダウンフォースが2000kgにも達することを考えると、私たちのタイヤのコンパウンドやコンストラクションに関しては100kg程度の増量はあまり大きな変化ではありません。

チームやドライバーにとっては、給油の中止は新たなチャレンジとなるでしょう。シーズンが進むにつれて誰もが効果的な戦略を理解するようになりますから、レース戦略が進化していくと予想しています。ドライバーにとってはレース序盤、特に車重が一番重く、タイヤ温度が最も低いスタート直後のタイヤマネジメントが重要になるでしょう。

2010年シーズンの新たな開催地について
この数シーズンにわたり、私たちは新しい開催地がF1に加わることを歓迎してきましたし、新しい課題に取り組むことは常に興味深いものです。韓国は新たにカレンダーに加わる新設サーキットであり、また復活が予定されるモントリオールも私たちに独自の課題を呈するでしょう。19戦が開催されるということなので、忙しい1年になりますよ!

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カテゴリー: F1 / ブリヂストン