F1オーストリアGP:記者会見 Part.1 - フェルスタッペン、ハジャー、ガスリー

4度の優勝経験を持つフェルスタッペンは、自身の“ホーム”であるこの地に新型アップグレードとともに臨むにあたり、楽観と現実を織り交ぜた冷静な姿勢を示した。
一方、ハジャーは前戦カナダGPの苦戦を振り返りつつも、相性の良いヨーロッパラウンドでの巻き返しに自信を覗かせ、ガスリーはアルピーヌの現状と将来の焦点について率直に語った。ドライビングスタンダード・ガイドラインの解釈、ペナルティポイント制度、そして2026年レギュレーションへの関心など、多岐にわたるテーマについて各ドライバーの率直な意見が交わされた内容の濃いセッションとなった。
Q:マックス、まずあなたから始めましょう。レッドブルリンクではこれまでに4勝を挙げていますが、今週末に5勝目を挙げられるという自信はありますか?
マックス・フェルスタッペン:4勝?5勝だよ。
Q:5勝目を目指すという意味で。
フェルスタッペン:もう5勝してるよ。
Q:それでは、さらにもう1勝する自信は?
フェルスタッペン:まあ、保証はないからね。もちろん、僕たちは常に最善を尽くそうとしているよ。過去にはここで本当に素晴らしいレースをしてきた。中には、正直言って予想外の勝利もあったと思う。だから今回も、もしかすると優勝候補ではないかもしれないけど、自分自身もチームも、すべてを最適化するために全力を尽くすつもりだ。
今週末はかなり暑くなりそうだし、タイヤを保たせるのが難しくなるのは間違いない。でも楽しみにしているし、ベストを尽くしたい。そしてもちろん、表彰台に上がれたらいいと思っている。
Q:最適化という話がありましたが、今回オーストリアでは新しいパーツも入っています。どんな効果を期待していますか?
フェルスタッペン:うん、パフォーマンスが少しでも上がってくれたらうれしいよ。チームがこれらのパーツのために一生懸命働いてくれたからね。だからアップグレードがあるのはとてもありがたいことだ。少しでも前進できれば競争力が高まるし、ギャップを縮める助けにもなるはず。
でも同時に、他のチームも年間を通じてアップデートを入れてきているから、僕たちもハードワークを続けて、ギャップを縮める努力をしていかなければならない。
Q:昨年の予選ではあなたのポールラップが他の全員より0.4秒も速くて皆が驚きました。ここでの1周の運転について少し教えてください。その秘訣とは?
フェルスタッペン:ブレーキを遅くするか、アクセルを早く踏むか、あとはスムーズなドライビングだね。なぜか分からないけど、ここでは昔からいつもいい感触がある。人によって得意なサーキットとそうでないサーキットがあるものだけど、僕にとってはここは自然と合う方なんだと思う。
もちろん、これは僕たちのホームグランプリでもあるけどね。流れというか、特にセクター2とセクター3の高速コーナーのリズムがいい。ここで戦うには車の性能も必要だし、ほとんどの年で僕たちのマシンはかなり良かった。
昨年の予選のギャップには驚いたけど、あのときは予選でのパフォーマンスをタイヤの準備なども含めて完璧に出し切れたと思う。短いラップだから簡単じゃないんだけどね。レースでは激しいバトルだったと思う。
Q:最後にもう1つ、セバスチャン・ベッテルが今週、ヘルムート・マルコと定期的に連絡を取り合っていて、レッドブルのポジションに関する話し合いをしていると発言しました。ベッテルが何らかの形でチームに加わる可能性について、どう思いますか?
フェルスタッペン:レッドブルであれだけ多くの実績を残し、レッドブルに育てられたドライバーが、いつでも何らかの形でチームに関わる余地があるのは、当然のことだと思うよ。ベッテルはチームを去ったあともヘルムートとすごく良い関係を保っていたしね。
だから、彼らが話をしていたことは知らなかったけど、何らかの形でセブが関わる余地は常にあると思う。
Q:アイザック、次はあなたです。まずは前回のカナダGPについて伺います。あなたとチームにとって少しフラストレーションのある週末だったと思いますが、問題の原因は把握できていますか?
アイザック・ハジャー:1周のペースでは、ドライブするのがかなり難しかったのは確かだよ。乗り心地も本当にひどかった。でもそれでもQ3に進出できたからね。ただ、そういうことは1周ではできても、70周を通してマシンのポテンシャルを引き出すのはずっと難しい。
特にミディアムタイヤでのグレイニングが原因で、他のチームに比べてタイヤのデグラデーションでかなり苦しんでいた。でも中団の他のチームとの差は非常に僅差だったし、今回はたまたまその僅差で悪い側にいたというだけ。いつもなら逆側にいることが多いから、流れを変えられるように頑張るよ。
Q:今季はこれで11戦目です。マシンについてもう少し詳しく教えてください。レースによって良かったり悪かったり、セットアップが難しいマシンですか? それとも一定のパフォーマンスを発揮していますか?
ハジャー:今季は、パフォーマンス面では最も一貫したマシンだと思う。悪い意味で驚かされることは一度もなかった。モントリオールにマシンを最適化して設計するわけじゃないからね。あそこは特殊なサーキットだよ。
だからもっと伝統的なヨーロッパのサーキットに戻れば、バルセロナのときのように競争力が出てくると思ってる。
Q:オーストリアのこのサーキットについて教えてください。F2時代には表彰台に上がったこともありますね。今年は予選があなたの強みでもありますし、土曜日には期待していいでしょうか?
ハジャー:それがターゲットだね。マシンがQ3に行ける性能を持っていれば、僕はミッドフィールドのトップを目指して全力を尽くすよ。
このサーキットは本当に好きだし、これまでにもいい結果を出してきた。でもF2やF3で走ったことのあるサーキットでも、F1マシンで走るとまったく別物に感じるんだ。速さが全然違うからね。
セクター1は純粋なブレーキング性能と超低速コーナーで、そこからは超高速区間に入っていく。だからこのコースは2つに分かれているような感じで、そこが僕はすごく気に入っているよ。
Q:ピエール、次はあなたです。まずはカナダについて伺います。厳しい週末でしたが、そこからどんな学びがありましたか?
ピエール・ガスリー:そうだね、かなりアンラッキーだったと思う。Q1で敗退してしまって、ピットレーンスタートになった。40周にわたってDRSトレインに引っかかっていたし、本当にフラストレーションの溜まるレースだったよ。
ペース的には、トップ10の最後のポイント争いに絡めるくらいにはあったと思うけど、ピットレーンスタートではやっぱり難しかった。学びはあったし、モントリオールに向けては我々のパッケージに合わないサーキットだと分かっていた。
今年は本当に差が僅かで、ほんのちょっとの差で良い方にも悪い方にも振れる。今回は悪い方に出たという感じだったね。
Q:アイザックにも同じ質問をしましたが、アルピーヌのマシンはセッティングが難しいマシンですか?ある週末はうまく行って、次はダメだったり?
ガスリー:難しいとも言えないし、簡単とも言えない。でも、自分たちの弱点と強みは把握していると思う。今は、その強みを最大限に引き出すことに集中している。
今のF1は、コンマ1秒の差で3~4ポジション変わる世界だから、すべての細部にフォーカスすることが本当に大事なんだ。僕たちは今あるマシンでシーズンを戦い抜くわけで、来年に向けての準備も進んでいる。今あるこのマシンを、1回1回ベストな状態に持っていく、それが目標だよ。
記者との質疑応答
Q:マックス、カナダではチャンピオンシップポイントとしては良い結果で2位でしたが、レース後にチームが抗議を出しました。トト・ヴォルフはそれを「小さなこと」「不必要」と評しましたが、その抗議は正当だったと思いますか?
フェルスタッペン:モントリオールについてはもう語り尽くされたよ。少なくとも、僕から加えることは何もない。
Q:処理にかかった時間についても?
フェルスタッペン:何も付け加えることはないよ。話し続けたって何にもならない。
Q:今日の朝、スチュワードガイドラインが発表されました。ここはレースが接近するサーキットですが、Aという状況になれば必ずBという結果、あるいはBというペナルティになると自信を持って言えますか?
ガスリー:僕にとっては、どこまでが限界かは明確だと思っている。もちろん、ドライバーとしては限界ギリギリを攻めるし、グレーゾーンも最大限に使おうとする。でも、少しずつそのグレーゾーンが減ってきていると思うし、何が許されて何が許されないかはかなりはっきりしてきたと感じている。
ハジャー:うん、明確だと思う。
フェルスタッペン:変わったの?僕は見てないんだけど。忙しかったから。
Q:FIAが発表しました。
フェルスタッペン:ああ、じゃあ同じだよ。もう分かってることだ。
Q:マックス、あなたはクルマからのサインにとても敏感だとよく言われますし、他のドライバーもそう話しています。それはあなたの感覚の鋭さによるものでしょうか、それとも経験によるものですか?
フェルスタッペン:まず最初に、ドライバーは皆違う。誰もがクルマに対して必要とするものが違うんだ。僕が求めるものが、他のドライバーには合わないこともある。それは普通のこと。
だから僕は、自分が必要とするものに集中している。若い頃からどうやって運転してきたか、どうやってクルマに順応してきたか、そういった経験が自然と染み付いている。僕にとっては自然なプロセスであって、特別なことをしているとは思っていない。
アンダーステアがあるのか、オーバーステアなのか、それをどうバランスさせるか、ドライビングをどう適応させるか、そういうことを常に考えて、クルマの進化につなげている。
ロケットサイエンスじゃないよ。自分が感じたこと、チームが見ていることをすり合わせて、どこを改善すべきかを伝える。そして毎年新しいクルマが出てくるから、常に改善点がある。
すぐに変えられない部分もあるけど、そこはドライバーとしてどう適応していくか。それがF1の中で常に続くプロセスなんだ。
Q:マックス、今持っているペナルティポイントの数が、今週末のレースでのアプローチに影響することはありますか?
フェルスタッペン:冗談でしょ?罠みたいな質問だね?この質問、毎週末のようにされてるよ。
Q:これが最後の質問ということで。
フェルスタッペン:何も付け加えることはないよ。
Q:マックス、ペレスが今週メキシコのポッドキャストで2022年のモナコとブラジルでの出来事に触れ、あなたは物事を溜め込んでレースで爆発させるタイプだと話していました。このコメントを聞いて、4年間チームメイトだった彼の発言にがっかりしましたか?
フェルスタッペン:いや。でも、君のその言い方は、彼が本当に言いたかったニュアンスとは少し違うと思う。
僕とチェコ(ペレス)は素晴らしい関係を築いてきたし、チームメイトとしても常に良い関係だった。僕は彼をリスペクトしているし、彼も僕をリスペクトしてくれている。それだけだよ。
僕は、また近いうちに彼に会えるのを楽しみにしてる。実は、彼からヘルメットをもらったんだ。素敵なメッセージが書かれていてね。だから僕も、彼に自分のヘルメットを渡すと約束したんだ。メキシコGPの頃に渡せたらいいなと思ってる。
メディアに何が書かれようと、僕はチェコがどんな人か知っているし、僕たちは良い関係だよ。
Q:マックス、あなたはGT3カーでスパを走行しましたね。これはスパ24時間レースに向けてチームを助ける目的ですか?F1から耐久への切り替えで、どういった貢献ができますか?
フェルスタッペン:いや、主に自分自身のためだったよ。アストン(マーティン・GT3)にあまり乗ったことがなかったから、もっと経験を積みたかったんだ。あの時期はまだシーズン序盤だったしね。
もちろん、他のドライバーたちは24時間レースに向けて本格的に準備していたけど、僕にとってはマシンのセットアップや開発についてもっと理解するための機会だった。それが唯一空いていた日で、ここに来る前に走るにはベストなタイミングだった。
天気も良くて暖かく、たくさんのことを試せたし、すごく楽しかったよ。自分の理解を深めるという意味でね。
Q:GT3カーでのスパとF1カーでのスパ、どれくらい違いますか?
フェルスタッペン:かなり違うよ。でも、どんなクルマでも、スパは走ってて最高だよ。
Q:3人に質問です。現在のレギュレーションのもとでは、ドライバー同士のやり取りが自然ではなくなっていると感じますか?多くのことを考えなければならず、過剰に規制されていると感じる場面はありますか?
ガスリー:僕個人としては、そうは感じていないよ。ハードにレースするし、どこまでが限界かは分かっている。ドライバー同士には相互のリスペクトもあるし、その中で限界まで攻めている。
時には少し限界を超えることもあるけどね。今のペナルティの出し方――強すぎる場合もあれば、逆に弱すぎる場合もある――それについては議論の余地があるかもしれないけど、ホイール・トゥ・ホイールの戦いそのものは自然に感じるよ。
ハジャー:僕もそう思う。今年バトルした相手との戦いはどれもクリーンだったし、すごく楽しめたよ。戦ってるときに「ガイドラインを読んでるような感じ」はまったくなかった。本当に自然だったし、今のところうまくいってると思う。
フェルスタッペン:コメントは控えるよ。ペナルティポイントが怖いからね。
Q:マックス、アレクサンダー・アルボンが以前、レッドブルのマシンを「感度最大に設定したコンピューターマウスのよう」と表現しました。ピークは高いけど扱いが難しいという意味ですが、それに共感できますか?
フェルスタッペン:僕は他のマシンを知らないんだよね。レッドブルでキャリアを始めて、基本的にずっとこのチームのクルマに乗ってきたから。だから、僕にとってはこれが「普通」なんだ。
これが一番速いのか、扱いやすいのかどうかは分からない。ただ、自分が持っているものに適応して走るだけ。それに、ここ何年もこのマシンは非常に良いパフォーマンスを発揮してきた。チームとしても素晴らしいことを成し遂げてきた。
ただ、ここ1~2年で他のチームも進歩してきている。だから僕たちは、もっとパフォーマンスを見つけていかないといけない。でも、どんなクルマでも、限界で走らせれば簡単なものじゃないよ。
Q:マックス、今シーズンの成績やパフォーマンスを見て、2026年のマシン開発に焦点を移すタイミングはどれくらい重要だと思いますか?あなた自身、希望するタイミングはありますか?
フェルスタッペン:いや、まあ、もちろんどのチームもすでに2026年に向けて動き出してるよね。今のクルマについても、ある程度前から計画されていたアップデートが進んでいる。
でも同時に、2026年は大きなチャンスでもある。だから、今のところ見聞きしている限りでは、チームは正しいアプローチを取っていると思う。
Q:マックス、以前は2026年の新レギュレーションについて懸念を表明していました。これまでに行われた修正によって状況は改善されたと思いますか?期待している点、不安な点があれば教えてください。
フェルスタッペン:まあ、今のところは中立だね。「良くなるかも」「悪くなるかも」っていう感じ。正直なところ、あまり深く考えていないんだ。
今この瞬間を楽しんでいるし、来年そのクルマに乗ってから考えるよ。僕はルールを作る立場じゃないし、懸念を示したところで何かが変わるわけでもない。
だから、クルマに乗ってから理解していけばいい。過去のどのレギュレーションでもそうだったように、最初は慣れが必要だし、そこから最適化していく。その繰り返しだよ。
Q:マックス、ペレスがポッドキャストで「エイドリアン・ニューウェイが去ってから、レッドブルにより多くの問題が起きている」と話していましたが、それは正当な指摘だと思いますか?
フェルスタッペン:今それについて話す必要はないと思う。
Q:マックス、来年もレッドブル・レーシングで走りますか?
フェルスタッペン:その質問は、前にも聞かれたことがあるよ!
Q:去年、この場所でですね。
フェルスタッペン:そうだったね。話す必要はないと思う。同じ答えを繰り返すことになるし……まあ、去年何て言ったか覚えてないけど、とにかく今はあまり気にしていない。僕はパフォーマンスを出すことに集中してるし、それが今考えていることだよ。来年のことはまたそのときに。
Q:マックス、映画はもう観ましたか?
フェルスタッペン:もう公開されたの?Apple TVではまだ見かけてないけど。昨日Apple TV見てたんだけど、表示されなかったな。
Q:映画のレビューには解禁がかかってないので、アイザックとピエール、お二人に伺います。良かった点、少し現実離れしていた点などあれば。あとピエール、ブラッド・ピットがあなたを「未来のハリウッドスター候補」と名指ししてましたが、それについても。
ハジャー:まあ、あの映画から学べることはあまりなかったね。ドライバーが1人しか出てこなかったし(笑)。でもF1に新しい次元をもたらす可能性があるとは思ってる。Netflixのときみたいにね。それによって僕たちにもメリットが出るならいいなと思うし、きっとそうなると思ってる。
ガスリー:まずマックスに伝えたいんだけど、映画の中で君がレースに勝ってるシーンがあるんだ。だから絶対に観た方がいいよ、楽しめると思う(笑)。
僕は本当に楽しんだよ。すでにいろんなところでコメントしてきたから多くは語らないけど、クールな作品だった。これをきっかけにもっと多くのファンがF1に興味を持ってくれたらいいなと思ってる。
それと……ブラッド・ピットのコメントについては、正直なところ、うちの母親が一番喜んでたよ(笑)。家族のグループチャットに一番乗りで送ってきたくらいだから。まあ、今シーズンもう少しポイントを取れなかったら……ハリウッド行きもあり得るかもね(笑)。
Q:子どもの頃、演技の経験は?
ガスリー:ゼロだよ(笑)。でもフランス人だからね。フランスの恋人役なら演じられるかもしれない。
Q:アイザック、あなたの左右にはレッドブル・レーシングの過去と現在が座っています。あなた自身はレッドブルの未来だと思っていますか?今の立場からトップチームに昇格するには、何が必要だと思いますか?
ハジャー:レッドブルにサインしたのは4年前なんだけど、そのときから目標は明確だった――最終的にトップチームにたどり着くこと。それは今も変わっていないよ。
まだその途中だけど、今のチーム(レーシングブルズ)で学べていることには満足しているし、多くのことを吸収している。だから、それが自然なステップになると思っているし、隠す必要もない。目指すのは、もちろんそこだよ。
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