アウディ
アウディは、シルバーストンで開催された2014年のFIA世界耐久選手権(WEC)開幕戦で卓越したパフォーマンスを発揮したものの、その後に大きな不運に見舞われた。

2台のアウディ R18 e-tron クアトロはドライバーに怪我はなかったものの深刻なクラッシュを喫し、リタイアとなった。

アウディは、燃費規制が一層厳しくなった新しいスポーツカー時代の幕開けに優れた技術力を結集して臨み、WEC開幕戦を順調に滑り出した。今年からルーカス・ディ・グラッシ(ブラジル)をメンバーに加えた、ゼッケン1号車を駆る昨年のワールドチャンピオン、トム・クリステンセン(デンマーク)とロイック・デュバル(フランス)は、土曜日に行われた予選でファステストラップをマークした。

翌日にはアンドレ・ロッテラー(ドイツ)が、レースでのファステストラップをマーク。新しい規制をクリアした後も、依然としてアウディのマシンが素晴らしいパフォーマンスを持つことが証明された。

6時間で闘われた決勝レースの序盤は非常にスリリングな展開となり、レース開始から22分後には、予選4番手からスタートしたロッテラーがトップに躍り出た。しかし、その後降り続いた雨により、コースコンディションは最悪の状態となり、不運にもルーカス・ディ・グラッシがウェット路面でスリップし、ガードレールに激突。グラッシは、何とか自力でピットまで戻ったが、モノコックに大きな損傷を受けていたため、アウディスポーツ・チームヨーストは、1号車をリタイアさせる苦渋の決断を下した。

そして34周目に、今度はアンドレ・ロッテラーがスリップしてグラベルトラップに捉えられてた。オフィシャルのマシン回収を待つ間に、ゼッケン2号車はトップから4ラップのギャップを喫した。その後、ブノワ・トレルイエ(フランス)にバトンタッチされたマシンは4番手でレースに復帰したものの、いまだ雨が降り続く中にあって、装着されていたタイヤは、インターミディエイトだった。12周後、トレルイエは高速コーナーでグリップを失ってコースアウト。アウディ R18 e-tron クアトロはフロントセクションに自力ではピットに戻れない程の大きなダメージを負った。

アウディはこれら2つの不幸な出来事により、WECレースで初めて、出場した2車両がともにリタイアを喫するという厳しい状況に直面した。これほどまで厳しい結果を喫したのは、2011年にロードアトランタで開催されたプチ ル・マン大会以来。それ以降、アウディ R18は全24大会で13勝を獲得(優勝確率54%)という素晴らしい好成績を残してきた。

2週間後には、スパ・フランコルシャン(ベルギー)でWEC第2戦が開催される。アウディスポーツとアウディスポーツ・チームヨーストのメンバーには、時間との厳しい闘いが幕を開けた。チームメンバーは、第2戦までに1号車と2号車を完璧に修復し、かつル・マンでフィリップ・アルブカーケ(ポルトガル)とマルコ ボナノミ(イタリア)が駆る、第3のアウディ R18 e-tron クアトロを製作する必要もある。

Dr. ヴォルフガング・ウルリッヒ (アウディモータースポーツ代表)
クラッシュにより2台とも失ったことは、痛恨の極みです。ル・マン プロトタイプカーのレースをノーポイントで終えたのは、2011年のロードアトランタ大会以来のことです。レース序盤で発揮したパフォーマンスは素晴らしかったと思っています。しかし、雨が降り始めた時、自分たちが立てた気象予想にこだわり過ぎ、レインタイヤへの交換を決意するまで、あまりに長い時間を掛けてしまいました。振り返ってみれば、これは多大なリスクを背負う行為であり、我々の戦略ミスでした。このミスにより、2台ともコースアウトを喫するという多大な損失を被ることになりました。ルーカス(ディ グラッシ)のマシンは、レースを継続出来ないほど大きなダメージを負っていました。アンドレ(ロッテラー)のマシンはレースに復帰出来ましたが、大きな遅れを余儀なくされていました。我々は、インターミディエイト タイヤを装着したブノワ トレルイエが無事に走ってくれることを祈っていましたが、その願いは果たされず、再びスリップを喫してしまいました。2台のマシンの損傷は非常に深刻で、次戦のスパ大会に向け、チームは一丸となって難しい局面を乗り越えなければなりません。

クリス・レインケ (LMPプロジェクトリーダー)
レースウィークの前半は、我々が思い描いていた通りの展開でした。何もかもが上手く運び、予選だけでなく決勝レースでも、ファステストラップをマークしました。2台ともリタイアとなったのは遺憾ですが、尋常ならざる状況が原因であったことが、せめてもの救いだと考えています。しかし、今回の不運が、より一層チームを一丸とさせ、次戦のスパに向けた準備に持てるパワーを存分に発揮出来るようになったと考えています。

ラルフ・ユットナー (アウディスポーツ・チームヨーストのテクニカルディレクター)
すべてのマシンがリタイアしてノーポイントでレースを終わるという、最悪のシナリオとなってしまいました。路面コンディションは本当に厳しく、タイヤ選択は非常にリスキーなものでしたが、我々は持てる技術と経験のすべてを使って、何とか完走させようと努力していました。2台ともリタイアし、レースが半分しか終わってないのに撤収を始めるとは、まったく想定外の出来事でしたが、マシンのパフォーマンスは素晴らしかったと間違いなく断言できるのが、せめてもの好材料です。これまで行ってきた新しいレギュレーションへの万全の対策が功を奏し、さらに多くのことを学ぶことが出来ました。チームメンバーにとって、2台のマシンを新たに準備するのは、過酷な作業になります。次戦のスパまでに時間はありませんが、我々はそれを成し遂げ、次こそは優勝を狙います。

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カテゴリー: F1 / アウディ / WEC (FIA世界耐久選手権)