ルカ・デ・メオがルノーCEOを退任 アルピーヌF1の将来に再び不透明感
ルノー・グループのCEOを務めてきたルカ・デ・メオが辞任を表明した。この動きは、アルピーヌF1チームの今後に新たな疑念を投げかけることとなった。

2020年にCEOに就任したイタリア人のデ・メオは、ルノーの企業再建を「ルノーリューション(Renaulution)」と称し、大規模な改革を主導。その一環としてルノー・スポール部門を「アルピーヌ」ブランドに再編し、F1チームも「ルノー」から「アルピーヌ」へと改称された。

この再編には、F1用パワーユニットを開発するヴィリー=シャティヨンのファクトリーもアルピーヌの名に改称されるなど大きな変化が含まれていた。そして2021年には、エステバン・オコンがハンガリーGPで優勝し、改革の一つの成果とされた。

しかしその後のF1活動は順風満帆とはいかず、チーム代表はたびたび交代。直近では2025年5月にオリバー・オークスが「個人的理由」で辞任していた。

デ・メオの退任について、アルピーヌは次のような声明を発表している。

「ルカ・デ・メオは、自動車業界以外の新たな挑戦に取り組むため、自らの意思で辞任する決断をしました」

ルノー・グループ取締役会のジャン=ドミニク・スナール会長もコメントを発表した。

「この5年間でルカは、ルノー・グループを本来あるべき姿に戻してくれた。経営の安定、魅力的な製品ラインナップ、成長の回復。そのすべてが彼の指導によるものだ」

「彼は産業界の卓越したリーダーであり、創造的で情熱をもった人物だ。彼との仕事は忘れがたい経験となった」

ルカ・デ・メ・メオ ルノー アルピーヌF1チーム

ブリアトーレ体制にも影響か? CEO交代でアルピーヌの将来に揺らぎ
ルノー側は今後のCEOについて「すでに策定された後継計画に基づき選定を開始する」としているが、F1チームの将来には不透明感が広がる。

とりわけ注目されるのは、エグゼクティブ・アドバイザー兼暫定チーム代表として復帰したフラビオ・ブリアトーレの去就だ。彼の復帰はデ・メオの主導によるものであり、今回の辞任によりブリアトーレの権限や立場にも影響が及ぶ可能性がある。

両者は、F1チームがヴィリーのファクトリーを手放し、2026年以降はメルセデス製パワーユニットを使用する「カスタマーチーム」へと転換する決断を共に下していた。これは大幅なコスト削減の一環でもあり、F1活動の再建を図るための方策だった。

この動きについて、メルセデスF1代表のトト・ヴォルフは次のように語っている。

「レース中に聞いたばかりだが、ルカは私にとって尊敬する友人であり、ルノーを立て直した人物だ。彼が今後どこへ向かうのかは分からないが、彼を得る人々は幸運と言える」

F1界での成績不振が続けば、アルピーヌの価値は下がり売却も難しくなる。だが、デ・メオの下で収益性を回復した現在は、企業としての売却価値が最も高まった時期とも言える。

そして、デ・メオという後ろ盾を失ったブリアトーレの立場が今後どうなるか――それもまた、アルピーヌF1チームの未来を大きく左右する要素になりそうだ。

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カテゴリー: F1 / アルピーヌF1チーム / ルノーF1チーム