角田裕毅の不振とハジャーの台頭 レッドブルF1の“片翼問題”が再燃

一方で、姉妹チームのレーシングブルズでデビューイヤーを迎えたアイザック・ハジャーは、モナコとスペインで連続入賞を果たし高評価を得ている。
マックス・フェルスタッペン中心に最適化されたマシンへの適応の難しさや、過去のチームメイトたちの苦戦ぶりが議論を呼ぶ中で、レッドブルが長年抱えてきた“セカンドシート問題”が再び注目を集めている。
角田裕毅はこれで3戦連続でQ3進出を逃し、日本GP(第3戦)からレッドブルに昇格して以降、獲得ポイントはわずか7点にとどまっている。
これまでの角田裕毅のレッドブルでの成績は、日本GPで14番手スタートから12位完走、バーレーンGPでは10番手スタートから9位、サウジアラビアGPでは8番手スタートもリタイア。マイアミGPでは予選10位・決勝10位、エミリア・ロマーニャGPでは予選20位・決勝10位、モナコGPは予選12位・決勝17位。そして最新のスペインGPでは再び予選20位・決勝13位だった。
スペインでの予選後、角田裕毅はSky Sports F1に次のように語った。
「ほかのグランプリと比べて、急に明らかにパフォーマンスを大きく失ってしまったんです。FP1からグリップがすごく低くて、何かおかしなことが起きていました。問題を解決しようと最善は尽くしたんですけど、正直なところ、バランスは少し良くなっても、全体的には前に進めなかったです。
Q1のラップにはけっこう満足してましたし、自信もあったんですけど、グリップがまったくついてこなかったんです。かなり厳しい状況ですね」
バーレーン、サウジアラビア、マイアミではQ3に進出したものの、レッドブルが求めているのはマックス・フェルスタッペンの5度目のタイトル獲得を支えるだけの安定したサポートだ。
レッドブル代表のクリスチャン・ホーナーは、角田裕毅について「速さはある。あとはすべてを噛み合わせるだけだ」と評価しつつ、「自信を持てるセットアップを見つけることが重要だ」と述べ、引き続きサポートしていく方針を明らかにしている。
フェルスタッペンのチームメイトとして結果を残したのは、2021~2022年に戦略的に機能したセルジオ・ペレスの一時期のみで、それ以外のドライバーは長続きせず、いずれもフェルスタッペンに太刀打ちできなかった。
Sky Sports F1のカルン・チャンドックは番組『The F1 Show』で、「2018年末にダニエル・リカルドが去って以来、レッドブルは7年間“セカンドシート問題”を解決できていない」と語り、その原因がマシン設計にある可能性を指摘した。
「ピエール・ガスリーやアレックス・アルボンはレッドブル離脱後に他チームで結果を出している。つまり、マシンがフェルスタッペンに特化されすぎているのではないか。かつてのミハエル・シューマッハとベネトンの関係を彷彿とさせる」と述べた。
「シューマッハが去ったあとのベネトンは7年間で1勝のみだった。レッドブルも同じリスクを抱えている」
マックス・フェルスタッペン自身もこの問題に触れ、角田裕毅を擁護しつつ、「ユウキは“パンケーキ”じゃない。これはずっと続いている問題だ。それが何を意味するかは、各自で判断すべきだ」と語っている。
フェルスタッペンは非常に鋭いフロントと緩いリアを好むセットアップで知られ、そうしたマシンを完全に乗りこなせるドライバーは限られている。

一方、レーシングブルズのアイザック・ハジャーは、ルーキーイヤーながらもモナコとスペインで連続入賞を果たし、注目を集めている。2024年末にはレッドブルのマシンをテストし、「快適だった」と語っており、アグレッシブな走りもフェルスタッペンに似ていると評されている。
Sky Sports F1のデビッド・クロフトは、「チーム内ではハジャーがフェルスタッペンに非常に近いスタイルを持っていると考えられている。だからこそ、彼はあのマシンに適応しやすい可能性がある」と述べた。
ホーナーも「彼は今年最も優秀なルーキーだ」と賞賛し、「速くて安定しており、常に結果を出している。我々の期待をはるかに超えている」と評価している。
ただしチャンドックは、かつてローソンに対しても同様の評価がされていたことを引き合いに出し、「もし自分がハジャーなら、レーシングブルズでのポジションを守りながら、将来的にフェラーリやアストンマーティンを狙う」と語った。
実際、予選では7戦すべてでローソンを上回り、決勝でも5回入賞。一方ローソンの入賞は1回にとどまっている。
元F1世界王者のニコ・ロズベルグも、「今のポジションは理想的だ。もしレッドブルから昇格の打診があっても、全力で断るべきだ」と断言した。
これまでマックス・フェルスタッペンのチームメイトを務めたドライバーは、2016年から2018年までのダニエル・リカルド(58戦)、2019年のピエール・ガスリー(12戦)、2019年~2020年のアレックス・アルボン(26戦)、2021年から2024年までのセルジオ・ペレス(90戦)、そして2025年に開幕2戦だけ走ったリアム・ローソンに続き、現在の角田裕毅となっている。
ロズベルグは「マックスはチームメイトキラーだ」と語り、「誰も彼に0.6秒以内で近づけない。F1でこれは完全に別カテゴリーだ」と評したうえで、「角田裕毅も素晴らしいドライバーだが、彼でさえ差が大きすぎる。チームが彼に合うセットアップを提供できていない可能性もあるが、結局はマックスが特別すぎる」と結論づけた。
チャンドックも「本来F1ではトップドライバーがどんなマシンにも順応するものだ」としたうえで、「レッドブルのケースはMotoGPに見られる、特定のライダー専用に作られたバイクのように極端だ」と述べた。
「ドゥカティ時代のケーシー・ストーナーしか乗りこなせなかった例に似ている。だからこそ、たとえ一流のドライバーでも、今のレッドブルに行くことは大きなリスクになり得る」と警鐘を鳴らしている。
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