マックス・フェルスタッペン F1出場停止の危機にも「何も変えない」

前戦スペインGPでジョージ・ラッセルと接触したことで、フェルスタッペンには累積で11ポイントのペナルティポイントが科されており、自動的な1レース出場停止まで残り1ポイントという危機的状況にある。
レース後、フェルスタッペンはメルセデスのラッセルとの接触を「判断ミス」と語り、さらに翌日には「起きるべきではなかった」と自ら非を認める異例の声明を出した。
しかし、カナダGPでのアプローチに何か変化はあるかと尋ねられると、フェルスタッペンの答えは簡潔だった。
「いや。少し時差ボケがあるくらい。それ以外は何も変わってない」
リスクを考慮してスタイルを変えるつもりはないのかと問われても、
「さあ、なぜ変える必要がある?」
と一蹴した。
この姿勢はファンにとっては痛快であり、批判者にとっては苛立ちの種かもしれないが、これこそがフェルスタッペンという存在を象徴するものだ。率直で、取りつく島がなく、自信に満ちている。スペインGP後の殊勝な声明とは打って変わって、いつもの彼が戻ってきた格好だ。
フェルスタッペンは、あの声明についても「ただ自分の見解を述べただけ」と語り、「レースがどうだったかについての意見を共有した。そのあとは一日を楽しんでいた」とさらりと述べた。
一方で、ラッセルは「彼が責任を認めたのを見てちょっと驚いた。あまり彼らしくないから」と皮肉を交えたコメントを残している。
フェルスタッペン自身は、もはやスペインGPの件を過去のものにしたいようで、記者会見の大半は、控えめかつ内容の薄い受け答えに終始した。「なぜそこまで出場停止に近づいているのか」について聞かれても、「知らない……人生ってそんなもんだろ」とあっさり。
そして何度も繰り返したのは次の言葉だった。
「僕はいつだって全力で走る。自分が正しいと思う方法でレースをする」
フェルスタッペンは、今季のタイトル争いには自分が絡んでいないという姿勢を繰り返し示しており、現在ランキング3位ながら、首位のオスカー・ピアストリやランド・ノリスに大きく後れを取っている。特にスペインGPではラッセルとの接触で順位を落とし、ポイント差が一気に倍増した。
それでもフェルスタッペンにとっては重要ではないという。
「だからって何でも引き下がるわけにはいかない」と語り、「これまで通りにレースするだけ。自分の判断を信じている」と強調した。
スペインでの苛立ちについては、やや詳細に語った。レッドブルがマクラーレンに対抗して戦略を工夫していたが、終盤のセーフティカー導入によりハードタイヤへ交換を強いられ、残っていたミディアムやソフトが使えなかったことが、再スタート後の苦戦に繋がったという。
結果的に、レッドブルが「コース外走行によってラッセルの前に出た」場面でペナルティを恐れて「譲るように」と指示。フェルスタッペンはその指示を誤って受け止めたことが、混乱の始まりだったと明かす。
「どうすべきだったか、はっきり言うのは難しいけど、あの譲るという指示のコミュニケーションがそもそも正しくなかった。あのタイミングで普通に走り続けるべきだった」
「終盤の数周は本当にフラストレーションが溜まる展開だった。それまではいいレースだった。戦略的にも良かったし、マクラーレンに多少プレッシャーをかけられていた。彼らは非常に速かったけどね」
さらにこう続けた。
「その後もフラストレーションが続いた。ハードタイヤで走っていたとき、ほとんどクラッシュしかけた後に、(シャルル・)ルクレールにストレートでぶつけられた」
「その後ターン1でも当てられて、さらに無線で『ポジションを譲れ』って言われて。『意味がわからない』って思った」
「いろんなことが重なったんだ」
それ以上スペインの件を振り返るつもりはなかったようで、再び記者たちは出場停止リスクに話題を戻したが、返答はさらに簡潔だった。

――出場停止になったらどう思うか?
「理想的じゃないね」
――回避するために何かするつもりは?
「もちろん、出場停止になるためにここに来てるわけじゃない」
――オーストリアGP後もペナルティポイントは8点残る。話題はまだ続きそうだが?
「それは君たちの話でしょ。僕は気にしてない」
――出場停止になったらF1にとって損失では?
「それはF1に聞いてよ」
サーキットでも、記者会見でも、フェルスタッペンの姿勢は一貫している――変えるつもりは一切ない。
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