スーパーフォーミュラ
スーパーフォーミュラ 第4戦が7月14日(日)に富士スピードウェイで行われ、小雨がそぼ降るコンディションの中、今大会が4戦目となるルーキーのアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)がポールポジションからスタートし、独走劇を見せて優勝。予選2番手の坪井翔(JMS P.MU/cerumo・INGING)が、終盤後方から迫ったニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)の追撃を凌ぎ切って初表彰台となる2位。3位には予選5番手からスタートしたキャシディが入賞した。


小雨の朝を迎えた静岡県富士スピードウェイ。午前8時40分からのフリー走行は完全なウェットコンディションのもとで行われた。

その後、富士の天候は回復方向に。お昼頃には完全に雨が止み、サポートレースのTCRジャパンが行われている頃には、少しずつ路面も乾き始めた。そのため、決勝前に8分間で行われたスーパーフォーミュラのウォームアップ走行では、スリックタイヤを装着するドライバーも。しかし、グリッドへの試走が近づくと、再び灰色の空から小糠雨が降り始め、路面は完全なウェットコンディションに戻ってしまった。中には、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)のように、スリックタイヤでダミーグリッドについたドライバーもいたが、最終的には全車レインタイヤを装着してレースに臨むこととなった。また、コンディションが悪化したこともあり、レースはセーフティーカースタートによって行われることが決定している。

午後1時45分、気温22℃、路面温度23℃というコンディションのもと、レースはスタート。2周に渡って隊列走行が行われる。そして、3周を終了したところでセーフティーカーがピットロードへ。ここから実質的にレースがスタートした。

ここで一気に2番手とのギャップを広げたのは、PPスタートのパロウ。坪井、関口がそれに続く。その後方では4番手争いが激化。ヘアピンでキャシディが野尻智紀(TEAM MUGEN)に並びかける。ここでは野尻がポジションを守ったが、続くダンロップコーナーのブレーキングではキャシディが野尻のインに飛び込み、ポジションを上げることに成功した。また、さらに後方では、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)とルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark)が国本雄資(KONDO RACING)をオーバーテイク。小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)と山下健太(KONDO RACING)がアーテム・マルケロフ(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)をオーバーテイクするなど、ポジションの入れ替わりが見られた。この中から、最も勢いある走りを見せたのは、可夢偉。可夢偉は5周目のGRスープラコーナーで国本を捉えると、7周目のダンロップコーナーではブレーキングでルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark)のインに飛び込み、さらにポジションをあげた。
一方、トップ争いは、パロウが1分43秒台前半のタイムを連発して逃げの体制。今回は各ドライバーとも燃費がギリギリということでセーブする走りを強いられたが、最初からリフト&コーストの走りに徹した坪井は次第に引き離されていった。3番手の関口、4番手のキャシディも状況はほぼ同じ。パロウも途中からは燃費走行に徹し、レース中盤にはどのドライバーも一人旅状態となった。その後方では、5番手の野尻に石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)が接近、さらに9番手争いの山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、中嶋一貴(VANTELN TEAM TOM’S)、福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、可夢偉も一つの集団となってくる。石浦は再三、野尻のテールに迫ったが、なかなか前に出ることは叶わない。一方、9番手争いに関しては、18周目に動きが出た。GRスープらコーナーの立ち上がりで、山本がバランスを崩してスピン。一貴、福住、可夢偉が先行する。可夢偉はこの時の勢いのまま、最終コーナーで福住のインに飛び込んだが、立ち上がりでハーフスピン。ここは福住がポジションを守った。さらに福住攻略を諦めない可夢偉は、合間を詰めていくものの、1コーナーでオーバーラン。なかなか前に出ることはできなかった。

一方、山本がいなくなったことで前が開けた一貴はペースアップ。8番手を走行していた牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)に迫っていく。牧野も必死でポジションを守っていたが、一貴の後ろには福住と可夢偉も追いつき、4台による攻防となった。その中で、22周の1コーナーでは一貴がオーバーテイクシステムを使用しながら、牧野のイン側に並びかける。ここでも牧野は守っていたが、コカ・コーラコーナーで一貴が前に出ることに成功する。さらに、牧野は続く100Rでコース外に大きくオーバーラン。その間に、福住と可夢偉も牧野の前に出た。この後、福住と可夢偉は何周にも渡って接近戦を展開。だが、なかなか可夢偉は前に出ることができない。この2人がバトルしている間に、一貴は自分のペースで差を広げ、前を行く大嶋和也(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)に追いついていった。そして、ペースが上がらなくなっていた大嶋を32周目の1コーナーでアウトから豪快にオーバーテイク。またひとつポジションを上げている。この一貴に続きたい可夢偉は、33周目の1コーナーやヘアピンで福住に迫るも、逆転はならず。逆に、34周目の1コーナーでは、一貴にかわされてポジションを落とした大嶋に福住が迫る。しかし、福住はここでオーバーシュート。コカ・コーラコーナーでは大嶋がポジションを守った。この前の動きを見逃さなかったのが可夢偉。可夢偉は同じ周の最終コーナーで福住のインに飛び込むと、ストレートではオーバーテイクシステムを起動させ、ようやく福住の前に出ることに成功した。可夢偉はその後、37周目の最終コーナーで大嶋もパス。予選19番手からついに入賞圏内までポジションを上げてきた。

一方、この頃、にわかに白熱し始めたのは2番手争い。35周を過ぎたところから、3番手の関口と4番手のキャシディがペースを大きくあげて、坪井とのギャップを削り取っていく。42周を終えたところで坪井と関口の差は2秒6余り、関口とキャシディの差は3秒1余りということで、終盤は三つ巴になるものと見られた。ところが、関口は43周を終えたところで給油のためにピットイン。可夢偉の後ろでコースに戻ることに。前が開けたキャシディは、ここから坪井に迫っていった。

その後方では、5番手争いも激しくなる。野尻攻略に手こずっていた石浦に一貴が迫り、47周目のヘアピンでオーバーテイク。一貴はそのまま48周目の最終コーナーで野尻のインに飛び込む。ここからの立ち上がりは野尻の方が速く、一貴は49周目の1コーナーに向かうところでオーバーテイクシステムを起動させる。しかし、もう残り秒数がなく、一貴のシステムはダウン。逆に野尻はまだ残っていたオーバーテイクシステムでこの場を凌いだ。それでも一貴は野尻に食らいつき、同じ周の最終コーナーで前に迫るが、ここでミスを犯してオーバーラン。その隙に石浦が一貴からポジションを取り返す。しかし、一貴は52周目には再度、石浦を攻略。もう一度、野尻を追うことになった。

この頃、坪井とキャシディの2番手争いも最接近。50周目のダンロップコーナーのブレーキングから最終コーナーにかけて激しい攻防となる。最終コーナーではキャシディが坪井のインに飛び込むが、坪井はアウトから上手く被せてポジションを死守。51周目の1コーナーでは2人ともオーバーテイクシステムを使用しながらのバトルとなるが、ここでも坪井が前を守る。結局、坪井は最後まで2番手のポジションを明け渡すことはなかった。その後方では、可夢偉が1コーナーで石浦をパス。ついに6番手まで浮上した。

この段階で、レースの残り規定時間は2分弱。そのため、55周ではなく、95分間のタイムレースとなり、53周終了時にチェッカーが提示される。このチェッカーを最初にくぐったのは、坪井に13秒余りの差をつけて独走となったパロウ。TCS NAKAJIMA RACINGにとっては、2010年開幕戦での小暮卓史以来、9年ぶりの優勝を果たした。これに続いたのは、坪井とキャシディ。4位には、後方からのアタックを凌ぎ切った野尻が入った。以下、素晴らしい追い上げを見せた一貴、可夢偉。そして、石浦、関口までがポイントを獲得している。今回、山本がノーポイントに終わったのに対し、キャシディが6点を加算したことで、2人の差は5ポイントに縮小。初優勝を果たしたパロウがランキング3位、坪井がランキング4位に浮上した。

優勝:No.64 アレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)
「チームのみんなが本当に頑張ってくれて、この場に来ることができました。本当に今日はタフな一戦でした。レースではピットインしない戦略を採るドライバーが多くいて、僕はスタッフから”燃料をセーブするように”と何度も何度も言われました。それでもまた途中で”もっともっと(燃料を)セーブして。(後ろから)坪井選手が来ている”と言われていました。なんとか後ろを押さえなければいけない状況でしたが、後続の選手たちの差が詰まって接戦になったことによって、僕としては後ろを引き離すことができたのだと思います。今日のレースで何度か行き過ぎて大回りに走ったりしたのですが、その中でも一番ヒヤッとしたのは周回遅れのクルマを抜くときでした。当然気をつけて走ってはいたのですが、彼らの背後につくと水煙で何も見えなくなるし、ダウンフォースも抜けてしまうので、とにかくなにもかもが大変な状況でした。(トップを走っていたので)他のドライバーに比べると楽な展開ではありましたが、ブレーキングポイントを少し早めにしたりするなどしていました。参戦4戦目での初優勝になりましたが、正直なところ僕自身としては思ったよりも遅いタイミングでの勝利でした。開幕戦の鈴鹿で(チームメイトの)牧野(任祐)さんもそうですが、クルマはすごく良い状態だったのにピットでのトラブルがあって…。鈴鹿は僕らのレースだったのに勝利を逃しました。その後もルーキーミステイクみたいなこともありましたが、やっと今回すべてが揃って勝てました。この勢いをこのまま続けて勝っていきたいですね」

2位:No.39 坪井 翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)
「優勝できなかったのは悔しいですが、まずは表彰台に上がることができました。開幕から3戦目まではとっ散らかっていいレースができませんでした。今回は予選から決勝にかけてすごくいいレースができたので、そういう意味でも内容には満足しています。アレックス(パロウ)選手が言っていたように、今回はかなり燃費を意識しないといけなかったので、(パロウに)追いつける気配はなく、逆に最後はニック(キャシディ)選手がものすごく追いついてきたので、ちょっと厳しい状態でしたが、なんとか燃料をセーブしながら走り切ることができたので、3位に落ちずに良かったと思います。とりあえずいいレースができました。燃料をセーブすることに関してはずっと意識していました。最初の2〜3周は頑張ろう(攻めよう)かなと思ったのですが、水しぶきで前が何も見えなかったので、もう抜けないなと思ってセーブしました。途中までは控えめにセーブしていたのですが、チームからは”もっともっと(セーブして)”と言われたので、『えっ!? もっと?』という感じでした。そこで結構セーブしていたのですが、後ろからニック選手が追いついて来たので、『もう限界』と言いました。最後は(チームから)”もうギリギリ足りる”と言われたので、50周目くらいから普通に走ることができました」

3位:No.37 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)
「今回はとにかく難しい状況でした。でも僕たちはしっかりといいレースができたと思います。3位という結果にはとても満足しているし、クルマのパフォーマンスのことを考えたらそれ以上の結果だと思います。今日は前のクルマに追い付くだけの力はなかったので、クルマをしっかりと分析する必要があると思っています。燃料セーブについてですが、ちょっと計算上の問題がありました。ただ、今回のレースに関して言えば、チームエンジニアそしてチームマネージャーとのコミュニケーションはこれまでの中で最高のものでした。ここまでうまく行ったのは初めてです。ほとんど毎周のように無線で話をしていたし、状況に合わせてレースを組み立てながら走っていました。ただ走りながらわかったのは、前の関口(雄飛)選手のペースが全然速かったということです。『彼はピットストップが必要なんじゃないか』と聞いたところ、”確認する”ということだったんです。そうこうする中で30周を迎える頃には、今日はフルディスタンスの55周のレースでなく時間レースになることがわかり、結果的に2周減算となり距離が短くなったので、マネージャーから”行ってもいいよ”と言われました。なのでその時点から100%の走りでプッシュすることにしたんです。それで2秒くらいずつ差を詰めていけました」

優勝チーム監督:TCS NAKAJIMA RACING
中嶋 悟監督

「(2010年開幕戦以来となる勝利で、通算43勝目となったが)久しぶりにこういう場(記者会見)に来ることができてうれしく思います。今年になってドライバーのふたりが速く、これまでとは異なる緊張感の中でレースができて、4レース目でこういうプレゼントをしてくれたというのは本当にうれしいし、もう一回くらいはいい(勝ちたい)なと思います。(トップ走行中にコースをはみ出していたパロウ選手について)大事に至らずに良かったなと思っていました。ただペースが悪くなかったのでそのまま行けたら…という感じでした。うちのチームはタイムレースになったことをパロウには伝えていませんでした。伝えることで変になるといけないと思ったからです。なので最終ラップになってから『これで(レースは)終わりだよ』と伝えました。それでないとがんばって走り過ぎてしまうと危ないので…。(チームとして今回9年ぶりの勝利になったが)今日はドライバー、そして我々にとって本当に計算どおりのレースができました。スーパーフォーミュラでの優勝というものが初めてだというスタッフが多いので、チェッカーを受けたときは若いエンジニアやメカニックらが喜ぶ顔を見ていました。それが一番うれしかったですね。彼らには、これまでピット作業など今までにない緊張感もあったでしょうが、それがまず報われたと思います。これからは”この喜びをもう一度”という感じで仕事に励んでくれれば、と思います」

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カテゴリー: スーパーフォーミュラ