クリスチャン・ホーナーの次なるF1移籍先を決める要因と有力候補は?

ホーナーは過去にフェラーリからのオファーを断ったこともあるが、それはあくまで「レッドブルにとどまりたい」という意志からだった。
だが今回は状況が大きく異なる。突然の解任を受けた今、他チームに登場する可能性は飛躍的に高まっている。
現時点でホーナーに差し迫った移籍の意志はなく、この18カ月間に及ぶ私的・職業的混乱を経て、まずは家庭での時間を優先しているという。だが、現代F1における最も経験豊富で成功を収めたチーム代表であることに変わりはなく、リーダー交代を検討しているチームにとっては、魅力的な選択肢となるのは確実だ。
フェラーリとアルピーヌ、可能性は?
現在のところ、フェラーリはホーナーと接触しておらず、招聘の意図もないとされている。しかし、チーム代表のフレデリック・バスールは年末で契約満了を迎え、伊メディアからの批判も強まっている。ホーナー自身も先週のイギリスGPでバスールについて次のように語っていた。
「どんな組織でも安定性は極めて重要だ。我々は21年の安定を築いてきたことで、今日のような結果を出すことができた」
「フレッドは非常に有能なマネージャーで、いわば国を代表するチームであるフェラーリを率いている。そこには当然、大きな期待とプレッシャーがある。彼はまだ就任して間もないし、正しいプロセスや人員、文化を構築するには時間がかかる」
ホーナーがバスールの続投を支持したのは、自身の解任を予期していなかったからだろう。とはいえ、フェラーリという特異な環境を熟知していることは確かであり、状況次第ではふたたびジョン・エルカン会長のレーダーに浮上する可能性はある。その際は「十分な権限」を保証されることが前提となるだろう。
一方、長年混迷が続くアルピーヌ(ルノー)も有力な移籍先候補として挙げられている。ただし現在の体制では、旧時代的で扱いの難しい顧問であるフラビオ・ブリアトーレが影響力を持っており、ホーナーがそうした人物の下で働くことは考えにくい。だが、ルノーがブリアトーレに代わって近代的なF1リーダーを求めるなら、ホーナーはその筆頭候補になる可能性がある。

本格始動は2026年以降?カギは「どれだけ権限を与えられるか」
新レギュレーションが導入される2026年に向けて、各チームは大規模な再編を迫られている。ルール変更によって成績が急落するチームが出てくれば、経営陣はその責任を問われ、指導体制の刷新に動く可能性がある。そのタイミングこそ、ホーナーにとって最も好機となるかもしれない。
ホーナーはレッドブルの単なるチーム代表にとどまらず、CEOとして巨大企業へと成長させた実績を持つ。パワートレイン部門の創設を主導し、ホンダ撤退後も自社エンジンで競争力を維持する体制を築き上げた。しかしこの広範な権限こそが、レッドブル本社との軋轢を生んだ要因でもあった。
とはいえ、こうした包括的な経験を持つ人物はF1界でも非常に希少であり、「結果が出ていないが経営は残っている」チームにとっては、ホーナーのようなリーダーが切望される状況が生まれる可能性は十分にある。
「我々には明確な構造がある。すべての主要部門が私にレポートする体制だ。それがオン・トラックでもオフ・トラックでも非常にうまく機能してきた」と、ホーナーはつい先日のシルバーストンで語っていた。
この構造がレッドブルにとってはもはや合わなかったとしても、別のチームでは理想的なモデルとなり得る。
結局のところ、ホーナーが次にどこで指揮を執るかを決める最大の要因は「どれだけの裁量権を与えられるか」だ。そして、結果が求められるF1の世界では、彼ほどの手腕を持つ人物が再び引く手あまたになる日はそう遠くない。
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