F1 レッドブル
レッドブルは、F1ベルギーGPからピエール・ガスリーをトロロッソ・ホンダに降格させ、ルーキーのアレクサンダー・アルボンをドライバーに抜擢。“冷酷”として有名なレッドブルのジュニアプログラムだが、果たして実際にそうなのだろうか?

レッドブルは、タイトル奪還を目指して今年からホンダのF1エンジンを搭載。オーストリアGPではマックス・フェルスタッペンが新生レッドブル・ホンダとして初勝利を挙げ、F1ベルギーGPでは純粋な速さが要求される予選でポールポジションを獲得した。

マックス・フェルスタッペンは、ここまで全てのレースをトップ5以上で終え、2勝、5回の表彰台を獲得。181ポイントを稼いでドライバーズ選手権でフェラーリの二人を上回り、メルセデスのバルテリ・ボッタスから7ポイント差の3位につけている。だが、コンストラクターズ選手権に目を向ければ、2位のフェラーリからは44ポイントと大きく水をあけられている。

それはピエール・ガスリーの成績によるところが大きい。開幕12戦のうち3戦をノーポイントで終え、63ポイントしか獲得できなかった。唯一輝きを放ったのは最高成績となる4位フィニッシュを果たしたF1イギリスGPだけだった。

レッドブルのF1チーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーはF1ハンガリーGP後にピエール・ガスリーの問題を指摘している。

「問題は彼がまったく絡んでいなかったことだ。今日はメルセデスとレッドブルの両方がチームメイトが戦いに絡んでいなかったことで“一本足”でレースをしていた。2台が上位を走っていないことは我々にとって明らかに痛手だ。特にコンストラクターズ選手権において今日はフェラーリと同じ量のポイントを獲得した。本来ならばもっと多くを奪えたはずだった」

ヘルムート・マルコが指揮するレッドブルのジュニアプログラムはしばしば“冷酷”だと表現され、過去に多くのドライバーが成績不振を理由に解雇されてきた。最近では日本のスーパーフォーミュラに参戦していたダニエル・ティクトゥムが首を切られている。

だが、資金力がなければ活動を続けていくことができないモータースポーツの世界で、レッドブルは裕福な家庭に育っていないドライバーたちにチャンスを与えているのは確かだ。

2011年にプログラムを外されたハイメ・アルグエルスアリは、それ自体には批判的だったが、以下のようにキャリアを振り返っている。

「レッドブルは15歳の僕にすべてを与えてくれたので決定を判断するつもりはない。第2に僕は犠牲者ではない。なぜなら、彼らのおかげで7年間その特権を享受することができたんだからね」とハイメ・アルグエルスアリは語っている。

当時、トロロッソのF1チーム代表を務めるフランス・トストも以下のように語っている。

「厳しい決定のように見えるかもしれない。だが、F1は厳しい環境であり、トロロッソは常にドライバー選定の背景にある原則について非常に明確だった」

ヘルムート・マルコは、レッドブルのF1ドライバーに求める資質として以下のように語っている。

「グランプリドライバー・・・我々にとってそれでは十分ではない。我々はグランプリウィナーを望んでいる」

レッドブルのジュニアプログラムを卒業した後の他のドライバーのキャリアはどうなっているだろう。今回レッドブル・ホンダへの昇格が決まったアレクサンダー・アルボンを含め、ダニール・クビアト、カルロス・サインツはまだF1を戦っている。もちろん、セバスチャン・ベッテルとダニエル・リカルドもそうだ。

ジェン・エリック・ベルニュは2度のフォーミュラEタイトルを獲得し、WECのLMP2クラスでもシートを獲得している。セバスチャン・ブエミはレッドブルのテストドライバーを継続し、WECでル・マン24時間レースとチャンピオンシップを制し、フォーミュラEでもタイトルを獲得している。昨年、トロロッソ・ホンダのF1シートを喪失したブレンドン・ハートレーも、フェラーリのシミュレータードライバーを担当し、来季はトヨタからWEC、ドラゴンレーシングからフォーミュラEに参戦することが決定している。

ヘルムート・マルコは「我々は多くの批判を受けてきた。だが、それはフェアではないと言いたい。なぜなら、それらのドライバーの大部分、90%以上が他のカテゴリーで活躍している」とコメント。

「スパ24時間レースやDTM、LMP1やフォーミュラEを見てみてほしい。彼らはそこで生計を立てている。人生でそれ以上のことを予想できるだろうか?」

レッドブルのドライバー育成での成功を受け、メルセデスやフェラーリも同様のスキームを展開している。だが、必ずしもレッドブルだけが冷酷なわけではない。非常に評価が高かったパスカル・ウェーレインはメルセデスとの関係を解消。ストフェル・バンドーンもマクラーレンで同じ運命をたどった。フェラーリの育成プログラムでもラファエレ・マルチェロが首を切られている。

少なくともレッドブルは“Bチーム”としてトロロッソを有してF1グリッドに4台のマシンを提供し、一度失敗したかつての育成ドライバーにもチャンスを与えている。ダニール・クビアトがその例だ。そして、ピエール・ガスリーにはまだトロロッソ・ホンダで走るチャンスが与えられている。

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カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング