レッドブル、ホンダのF1エンジンを搭載しても遅い理由は?
レッドブルは、ホンダのF1エンジンを搭載した今年、本来のマシンの強みを失っている。
伝統的にレッドブルのマシンは“コーナリングマシン”としての特性があり、ルノーのエンジンパワー不足によるストレートでの赤字を、巧妙なダウンフォースによるコーナーでのスピードとトラクションでカバーしてきた。
今年、レッドブルはルノーからホンダにF1エンジンを変更。スペック2を投入し、新たに予選モードを備えたホンダのF1パワーユニットは、フェラーリ、メルセデスには劣っているものの、勢力図ではルノーを上回っていると考えられている。
単純にこれまでの特性にホンダのF1エンジンによるストレートのスピードが加われば、レッドブルのマシンはさらに強さを発揮すると考えられたが、逆に昨年強さを発揮したサーキットで苦しんでおり、得意だった区間ではメルセデスに負けている。
昨年のこの段階では第3戦中国GP、第5戦モナコGPで勝利を挙げてきたが、今年はまだ未勝利であり、開幕戦オーストラリアGPと第5戦スペインGPでの3位がベストリザルトとなっている。
そこには2つの理由がある。特に顕著なのは今年から新たに導入された空力レギュレーションとタイヤだ。カスケード・フラップなどを禁止とし、エンドプレートを単純化することでフロントウイングから空気をタイヤの外側に流す“アウトウォッシュ”効果が抑えられた。そのため、ダウンフォースを得るために、気流をアンダーボディに導く“インウォッシュ”型にせざるを得ず、ダウンフォースと空力バランスに大きな変更を及ぼした。
また、各チームはトレッドが薄くなったタイヤに対応するために2019年のコンセプトはダウンフォースを減らすことに焦点が置かれた。メルセデスを除いては。それによってレッドブルだけでなく、大部分のチームがタイヤを適切な作動温度領域に入れることに苦労いている。
レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは「すべてのクルマのコンセプトをダウンフォースを減らすというものだった」とコメント。
「メルセデスだけが、多くのダウンフォースとトラクションを備えたクルマを製造してきた。後から考えれば、まさにそれが新しいタイヤから最大限を引き出すための方法だった」
デザイナーを務めるエイドリアン・ニューウェイも、新しいフロントウイングとタイヤのための設計が間違っていたことを認めている。グリッドでは、ルノーのF1パワーユニットで速さを見せているマクラーレンのマシンを注意深く観察しているところも目撃されている。
「シャシー側に関して正直に本音を言えば、現時点で期待しているほどクルマは良くない」とエイドリアン・ニューウェイはコメント。
「タイヤの作動ウインドウは完全にメルセデスに有利に働いている」
「クルマの全体的なコンセプトはタイヤが熱くなりすぎないように設計されている。そのコンセプトから抜け出すのは常に困難だ。新しいフロントウイングはメルセデスのコンセプトにより調和している」
また、近年、レッドブルはルノーの非力なF1エンジンでのストレートスピードをカバーするためにドラッグを減らし、ダウンフォースを削る方向でマシンを設計していた。実際にはレッドブルの強みが失われていたということになる。そのデザインの方向性は今年にも継続された。
「我々にはもっと多くのダウンフォースが必要だ」とヘルムート・マルコはコメント。
「近年、我々は可能な限りダウンフォースを少なくして、ドラックが大きすぎないクルマを製造してきたからだ」
ダウンフォースが減り、エンジンのパワーが増したことで、特にリア周りのバランスがうまく取れないマシンに仕上がっている。昨年、フェラーリがエンジンアップグレードで馬力を増した後、同じような理由で失速している。
皮肉なことに、トロロッソからレッドブルに移籍してきたピエール・ガスリーにその影響がモロに出ている。ガスリーはトラションのかかり具合をマシンの問題点として挙げている。興味深いことに、昨年のレッドブルのリアエンドを搭載する姉妹チームのトロロッソの方がマシンバランスには苦労していない。
「昨年のトロロッソと比べてクルマに適応していなければならない。トロロッソの方が僕のドライビングに合っていた。現時点ではちょっとパッセンジャーのように感じている」とピエール・ガスリーはコメント。
「まだ少しクルマにアグレッシブすぎるし、現時点ではクリーンなトラクションを得る必要がある。実際、パワーにかなりアグレッシブなスタイルが成果を挙げるときもあるけど、クルマがかなりぎくしゃくしてタイヤがオーバーヒートしてしまうこともある。そうなるとこのタイヤがどうなるかはわかっている」
「このエリアが僕自身で改善させることができる分野だと思っている。満足できるものを見つけられたと思うけど、まだ変えたいと思うことはいくつかある。どれくらいかを正確に知るのは難しいけど、少なくともより一貫性と予測可能性があることはわかっている」
マックス・フェルスタッペンもバランスが問題だと指摘する。
「今後のレースで僕たちがどのレベルまで行けるか見てみよう。もっと多くのパワーがあり、クルマのバランスがもっと良くなれば、状況は変わってくるはずだ」とマックス・フェルスタッペンは語る。
近年、シーズン中盤から大幅なアップグレードを施して戦闘力を回復してきたレッドブル。だが、エイドリアン・ニューウェイも認めるとおりコンセプト自体の問題で迷走しており、まだRB15には劇的な空力アップグレードは施されていない。
レッドブルのF1代表クリスチャン・ホーナーは「ホンダはストレートで進歩を果たしている。我々はまだ前のクルマに対して見い出さなければならないものがあるが、近い将来、その助けになるであろう開発が進行中だ」と語る。
今後、ホンダのF1エンジンアップグレードと同様にどのようなシャシーアップグレードが施されるか注目していきたい。
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1
伝統的にレッドブルのマシンは“コーナリングマシン”としての特性があり、ルノーのエンジンパワー不足によるストレートでの赤字を、巧妙なダウンフォースによるコーナーでのスピードとトラクションでカバーしてきた。
今年、レッドブルはルノーからホンダにF1エンジンを変更。スペック2を投入し、新たに予選モードを備えたホンダのF1パワーユニットは、フェラーリ、メルセデスには劣っているものの、勢力図ではルノーを上回っていると考えられている。
単純にこれまでの特性にホンダのF1エンジンによるストレートのスピードが加われば、レッドブルのマシンはさらに強さを発揮すると考えられたが、逆に昨年強さを発揮したサーキットで苦しんでおり、得意だった区間ではメルセデスに負けている。
昨年のこの段階では第3戦中国GP、第5戦モナコGPで勝利を挙げてきたが、今年はまだ未勝利であり、開幕戦オーストラリアGPと第5戦スペインGPでの3位がベストリザルトとなっている。
そこには2つの理由がある。特に顕著なのは今年から新たに導入された空力レギュレーションとタイヤだ。カスケード・フラップなどを禁止とし、エンドプレートを単純化することでフロントウイングから空気をタイヤの外側に流す“アウトウォッシュ”効果が抑えられた。そのため、ダウンフォースを得るために、気流をアンダーボディに導く“インウォッシュ”型にせざるを得ず、ダウンフォースと空力バランスに大きな変更を及ぼした。
また、各チームはトレッドが薄くなったタイヤに対応するために2019年のコンセプトはダウンフォースを減らすことに焦点が置かれた。メルセデスを除いては。それによってレッドブルだけでなく、大部分のチームがタイヤを適切な作動温度領域に入れることに苦労いている。
レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは「すべてのクルマのコンセプトをダウンフォースを減らすというものだった」とコメント。
「メルセデスだけが、多くのダウンフォースとトラクションを備えたクルマを製造してきた。後から考えれば、まさにそれが新しいタイヤから最大限を引き出すための方法だった」
デザイナーを務めるエイドリアン・ニューウェイも、新しいフロントウイングとタイヤのための設計が間違っていたことを認めている。グリッドでは、ルノーのF1パワーユニットで速さを見せているマクラーレンのマシンを注意深く観察しているところも目撃されている。
「シャシー側に関して正直に本音を言えば、現時点で期待しているほどクルマは良くない」とエイドリアン・ニューウェイはコメント。
「タイヤの作動ウインドウは完全にメルセデスに有利に働いている」
「クルマの全体的なコンセプトはタイヤが熱くなりすぎないように設計されている。そのコンセプトから抜け出すのは常に困難だ。新しいフロントウイングはメルセデスのコンセプトにより調和している」
また、近年、レッドブルはルノーの非力なF1エンジンでのストレートスピードをカバーするためにドラッグを減らし、ダウンフォースを削る方向でマシンを設計していた。実際にはレッドブルの強みが失われていたということになる。そのデザインの方向性は今年にも継続された。
「我々にはもっと多くのダウンフォースが必要だ」とヘルムート・マルコはコメント。
「近年、我々は可能な限りダウンフォースを少なくして、ドラックが大きすぎないクルマを製造してきたからだ」
ダウンフォースが減り、エンジンのパワーが増したことで、特にリア周りのバランスがうまく取れないマシンに仕上がっている。昨年、フェラーリがエンジンアップグレードで馬力を増した後、同じような理由で失速している。
皮肉なことに、トロロッソからレッドブルに移籍してきたピエール・ガスリーにその影響がモロに出ている。ガスリーはトラションのかかり具合をマシンの問題点として挙げている。興味深いことに、昨年のレッドブルのリアエンドを搭載する姉妹チームのトロロッソの方がマシンバランスには苦労していない。
「昨年のトロロッソと比べてクルマに適応していなければならない。トロロッソの方が僕のドライビングに合っていた。現時点ではちょっとパッセンジャーのように感じている」とピエール・ガスリーはコメント。
「まだ少しクルマにアグレッシブすぎるし、現時点ではクリーンなトラクションを得る必要がある。実際、パワーにかなりアグレッシブなスタイルが成果を挙げるときもあるけど、クルマがかなりぎくしゃくしてタイヤがオーバーヒートしてしまうこともある。そうなるとこのタイヤがどうなるかはわかっている」
「このエリアが僕自身で改善させることができる分野だと思っている。満足できるものを見つけられたと思うけど、まだ変えたいと思うことはいくつかある。どれくらいかを正確に知るのは難しいけど、少なくともより一貫性と予測可能性があることはわかっている」
マックス・フェルスタッペンもバランスが問題だと指摘する。
「今後のレースで僕たちがどのレベルまで行けるか見てみよう。もっと多くのパワーがあり、クルマのバランスがもっと良くなれば、状況は変わってくるはずだ」とマックス・フェルスタッペンは語る。
近年、シーズン中盤から大幅なアップグレードを施して戦闘力を回復してきたレッドブル。だが、エイドリアン・ニューウェイも認めるとおりコンセプト自体の問題で迷走しており、まだRB15には劇的な空力アップグレードは施されていない。
レッドブルのF1代表クリスチャン・ホーナーは「ホンダはストレートで進歩を果たしている。我々はまだ前のクルマに対して見い出さなければならないものがあるが、近い将来、その助けになるであろう開発が進行中だ」と語る。
今後、ホンダのF1エンジンアップグレードと同様にどのようなシャシーアップグレードが施されるか注目していきたい。
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1