エイドリアン・ニューウェイ
レッドブルのチーム・テクニカル・オフィサーであるエイドリアン・ニューウェイが、レッドブル RB5のデザインの経緯を語った。

ルール変更の感想は?
大規模なルール変更は久しぶりなので、今日は緊張している。なぜなら、新ルールは新しいアイデアが生まれるチャンスでもあるが、他のチームが自分が考えにも及ばなかったような事を考えている可能性も十分にある。ここ数ヶ月は、短期間にやらなければならないことが多すぎてマクラーレンの初年度以来の忙しさだった。昨年4月にスタートして以来全力で取り組んできた。

一番大変だったことは?
KERSを扱うにあたっての重量配分は難しい挑戦だった。スリックタイヤの復活でウェイトを少し前主軸寄りにしなければならないことは明白だったのだが、KERSで車体後方が重くなってしまうんだ。これは、バラストを動かすことで調整できる余地がほとんどないことを意味する。ドライバーの体重もこの問題に影響を与える。ホイールベースを通してクルマを動かすこともできるが、これは空力的な不利益が発生する可能性が高い。

ライバルチームよりもクルマの発表が遅かったことは有利でしたか?
もちろん他のクルマの写真は見たが、研究する余裕はなかったので、そういった意味ではメリットはなかった。しかし、その時間を使って自分たちの解決策をより細かく検討することができた。他のチームよりもスタッフの人数が少ない分、風洞実験にかけることができる時間も少なかった。リソースが少ない部分を補うために時間をかけたということだ。

新レギュレーションによって、オーバーテイクにも変化が見られるようになるのでしょうか?
これほどの規模のレギュレーション変更なので、ポールポジションと最後尾のクルマのラップタイムが昨年度よりも大きく開くだろう。昨年度はタイムも僅差で、異なる4、5のメーカーがレース優勝を果たすという、F1では久しぶりに見るシーズンだった。今年はそうはならないだろう。たとえオーバーテイクの数が増えたとしても、クルマの性能の差が大きくなるという事実は変わらない。

コックピット内のドライバーの足位置の高さは昨年度と大きく異なりますか?
昨年よりも高い位置だが、それほど大きな変化はない。

クルマの外観の変化は明らかですが、その他に新しい点はありますか?
シャシー底面がこれまでのようにフラットではなく、V字のセクションがある。

リヤサスペンションにはプッシュロッドではなくプルロッドが用いられていますが、なぜですか?また、フロントウィングがあのような形状になったのはなぜですか?
ひとえに新しい空力パッケージに合わせるためにやったことだ。車体後方にきれいな空気の流れを作りたかった。その解決策のひとつとしてプルロッドを使った。フロントウィングに関しては、結果的にあのような形になった。解決策は様々あると思うが、大規模なルール変更があった時のクルマのデザインは、自分たちがレギュレーションに一番適していると感じる一般的なルートやコンセプトで妥協しなければならない。全てのチームが同じルートを辿るわけではない。しかし、どのデザインがベストかは2,3年のうちに分かる。そのぐらい経てば、クルマのデザインがひとつに集中してくるからだ。しかし今年はチームによってかなりの差が出るだろう。

新ルールになったことによって、トップチームとの差を縮めることができますか?
それは分からない。しかし、レギュレーションの変更がある時は楽しい。すでに出来上がっているテーマを少しずつ進化させる作業ではなく、白紙からスタートするチャンスだからだ。これがレッドブル・レーシングにとってメリットになるか否かは何とも言い難い。最高の解決策を見出すことができればチームのためになるが、ルール変更は様々な方法を模索できる規模の大きなチームだけにしか適さない場合もある。

RB5のデザインは、あなたのアグレッシブさの表れだと言えますか?
そうだ。過去のものとはかなり異なったアグレッシブなデザインだが、エンジニアリング的にも理に適ったものであることを願う。思いつきだけではなく、本当にパフォーマンスにメリットがあるということを確認するだけの理性が必用だ。ただ、目立つためにやるだけではだめだ。RB5はその結果だ。

KERSはオーストラリアで使いますか?
準備ができたと感じた時に使うつもりだ。その方が断然メリットが大きい。コスト的にも見合わないとレースに投入できない。例えば海外の遠征レースには高額の輸送費がかかる。現時点では、KERSがドライバーのオーバーテイクの際の助けになるのか、まだはっきりしていない。KERSを使わないことの一番のリスクは、おそらくスタートもしくはセイフティカー導入時の再スタートでオーバーテイクされる可能性があるということだろう。

主要諸元表:レッドブル RB5

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カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング