スズキ、MotoGPラストレースで勝利を収めて有終の美を飾る
2022年のMotoGP最終戦であると同時に、チームスズキエクスターにとって最後のレースとなったバレンシアGPにおいて、アレックス・リンスとジョアン・ミルは感動的で素晴らしい走りを披露した。

スタートから飛び出したリンスは1度もトップを譲ることなくスズキ最後となるレースで有終の美を飾った。また、12番グリッドからスタートしたミルは忍耐強く走り6位を獲得した。

8年間という短い参戦期間にも関わらず、チームは多くの素晴らしい仕事を成し遂げたが、そのハイライトは2020年、ジョアン・ミルによるMotoGPワールドチャンピオンの獲得だった。2012年に最初のプロトタイプマシンを走らせた瞬間からチャンピオン獲得。そして最後のレースを優勝で飾ったこの瞬間までは決して平坦な道のりではなかった。この8年間を振り返る。

2014
2014年のシーズンは2013年のオフィシャルMotoGPテストから始まったが、本格的に物事が進んでいくのは2014年のシーズンが始まってからだった。アレイシ・エスパルガロがチームに合流した初日、彼は「The Story Restarts」と文字入れされたヘルメットを被り、チームの目標も明確なものとなった。

2015
フル参戦初年度となった2015年は、GSX-Rシリーズ生誕30周年でもあった。それを模したカラーリングを纏ったマシンで参戦したアレイシ・エスパルガロとマーベリック・ビニャーレスはいくつかのレースでトップ10フィニッシュを達成。シリーズランキング11位と12位を獲得した。

2016
チームスズキエクスターにとっての初優勝は2016年のイギリスGP。マーベリック・ビニャーレスによって成し遂げられた。この勝利により、チームの勢いにも弾みがついた。

2017
2017年はレギュラーライダーを刷新。アンドレア・イアンノーネとルーキー、アレックス・リンスを起用。順風満帆ではなかったが、テストライダーであるシルバン・ギントーリ、津田拓也の尽力もあって幾度かの入賞を達成した。

2018
2年目となるリンスはマシンを乗りこなしつつあり、アルゼンチンGPではクラス初表彰台を獲得。3度の2位を含む5度の表彰台を獲得。また、イアンノーネも4度の表彰台を獲得。チームはシーズン9度の表彰台を記録。

2019
アメリカズGPにおいて、リンスはクラス初優勝を達成。それにとどまらず、8月のシルバーストーンではチャンピオンライダー、マルク・マルケスとの激闘の末2勝目を獲得。また、才能あふれる若きスペイン・マヨルカ島出身ライダーのジョアン・ミルがチームに合流し、いくつかのレースで光る才能の片鱗を見せた。

2020
新型コロナウイルスによるパンデミックにより、MotoGPシリーズのスケジュールは大きな影響を受けた。そんな中でもチームは目標に向けて集中し続けた。シーズンの序盤ではいくつかのアップダウンもあったが、シーズンが進むにつれてチームは存在感を示していった。ミルはシーズンを通して安定した成績を残し、見事MotoGPワールドチャンピオンに輝いた。これはスズキにとって20年ぶりとなる最高峰クラスでの栄冠となり、スズキ創立100周年・レース活動60周年という記念すべき年に花を添えることに成功した。またリンスもシリーズランキング3位となり、真の意味でのスズキの復活を世界の人々に印象付けた。

2021
チャンピオンチームとして迎えた2021年の目標は再び優勝を含む表彰台の獲得、そして出来る限りチャンピオンシップでの高いランキングを狙うことだった。この年は運に見放されたシーズンでもあったが、チームは不屈の精神でチャンピオンシップに望んだ。リンスにとっては厳しいシーズンとなったが、得意とするシルバーストーンでの2位獲得で士気を高めた。ミルは持ち前の安定性をこの年も披露し、6度の表彰台を獲得。ランキング3位でシーズンを終えた。

2022
チームスズキエクスター最後となる2022年のハイライトは、最終戦となるバレンシアGPにおけるリンスの劇的な優勝だろう。これはこれまでハードに戦ってきたチームに対する最大の報酬と言えるだろう。オーストラリアGPで激闘の末に獲得した優勝も感動的だったが、今回はまた格別だったと言えるだろう。ミルもまた、数々のレースで勇敢さと強さを披露した。シーズンを通じて、全てのセッション。そして最後の瞬間まで、チームスズキエクスターは一丸となって戦った。

佐原伸一 MotoGPプロジェクトリーダー
「2022年11月6日は今シーズン最終戦であると同時に、チームスズキエクスターにとって最後のMotoGPレースとなりました。2012年から2014年まで3年間の休止期間を経て2015年にMotoGPに復帰し、2016年にはイギリスGPで復帰後初優勝、2020年にはシリーズチャンピオン獲得と、まさに再起を果たすことができたのは、応援いただいたファンの皆さんの支えがあったからであると思っています。そして、このプロジェクトを共に作り上げ戦ってきた仲間にも感謝の言葉しかありません。ライダー、レース現場のスタッフ、浜松の開発陣も含めて、ファミリーという言葉が最も相応しいチームであったという自信と誇りを持っています。レース撤退に伴いこのチームが解散してしまうのは本当に寂しいことです。私自身、最終戦は泣かないつもりでいましたが、レースが終わりこのファミリーとの別れが現実のものになったときには、熱くこみ上げるものを止められませんでした。このプロジェクトの関係者それぞれが新しい未来に向かって力強く進んでくれることを望んでいます。最後にチームを応援してくださったファンの皆さんにお願いです。どうかこれからもMotoGPを観て、好きなライダーやチームを応援して盛り上げて下さい。本当にありがとうございました。」

リビオ・スッポ チームマネージャー
「これ以上、なにを望むことがあるでしょうか。もしもあるならば、2人がともに表彰台に登ることくらいだったでしょう。アレックスは今回もやってくれました。我々のマシンの、そして彼自身のポテンシャルを見事に証明してくれました。そしてジョアンも本当に頑張ってくれました。私が過ごしたスズキでの時間はとても短いものでしたが、非常に内容の濃いものでした。象徴的なブランド、そして素晴らしい人々と一緒にこのマシンを走らせたことは私にとって大きな喜びでした。本当にありがとうございました。」

河内 健 テクニカルマネージャー
「最後のレースで優勝という素晴らしい結果で有終の美を飾ることができました。撤退が決定されてからも諦めずに頑張ってくれたライダー、チーム、そして日本で開発してくれたみんなの努力の賜物だと思います。フィリップアイランドで優勝した時も言いましたが、今日の優勝で我々はまだまだ十分コンペティティブであることを証明できたと思います。撤退しなければいけないことは非常に残念でなりませんが、今まで応援してくださった皆さん、そしてこのプロジェクトに関わってくださった全ての皆さんに改めてお礼を言いたいと思います。ありがとうございました。」

アレックス・リンス
「望んだ通りの結果を得ることが出来て本当に嬉しいよ。特にこの優勝は自分の地元でもあるだけでなく、スズキで最後のレースだったんだからとても特別なもので少し感傷的にもなってしまったよ。何年にも渡ってこのチームで走って来て、いくつかの優勝を達成できたと同時に、多くの素晴らしい時間をこの家族と一緒に分かち合ってきたんだ。みんなとお別れするのは本当に寂しいよ。この経験と思い出を糧として、これからのキャリアを戦っていきたいと思う。」

ジョアン・ミル
「スズキ最後となったレースで無事に6位完走出来たことは嬉しいよ。とくにこれまでの数レースはとてもタフなものだったからね。このチームでワールドチャンピオンになれたことは一生の思い出だよ。スズキと過ごした日々は、いつでも全身全霊で勝つために取り組んできた。それが2020年のタイトル獲得に繋がったんだ。協力してくれたチーム、全ての関係者の方たちに感謝の気持ちでいっぱいだね。」

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カテゴリー: F1 / MotoGP