マクラーレンF1 新技術指令に対応する改良型フロントウイングを導入
マクラーレンF1は、スペインGPから施行される新たな「フレキシブルウイング規制」が自身に不利になるとの見方を一蹴している。すでにチームはエミリア・ロマーニャGP(イモラ)で、より剛性の高い改良型フロントウイングを実戦投入し、良好な結果を得ていたことが明らかになった。

FIA(国際自動車連盟)は、今季開幕前からリアウイングの柔軟性に関する制限を強化し、中国GPと日本GPでもさらに厳格化してきた。スペインGPからはフロントウイングにも新たな負荷試験が導入される。

FIAの技術規定では、車体両側に対して100kgの荷重をかけた際、フロントウイングの垂直方向のたわみは最大15mmまでとされていた。今回の新指令ではこれが10mmに縮小され、片側のみへの荷重時は20mmから15mmに変更された。さらに、フラップ部分のたわみ許容値も、6kgの荷重に対して5mmから3mmに厳しくなった。

これにより、低速コーナーでフロントのグリップを高め、高速域では空力的に抵抗を抑える効果が得られていたとされる「フレキシブルウイング」の恩恵が制限される。特にマクラーレンがこの領域で最も進んでいたという見方が強く、ライバルチームや関係者からは、今回の技術指令によって同チームの勢いが削がれるとの予測も出ていた。

だがマクラーレンは、これらの憶測に対し一貫して懐疑的な姿勢をとっている。ランド・ノリスはすでにイモラのFP1でこの“バルセロナ仕様”のフロントウイングを試しており、得られたデータは、新指令によるパフォーマンス低下の懸念を否定する内容だったという。

チーム代表のアンドレア・ステラはスペインGPを前に次のように語っている。

「バルセロナでは、我々の競争力がイモラや鈴鹿のようにやや拮抗したものになると予想している。モナコでも少し触れたように、このサーキット特性は他チームに向いており、接戦になるかもしれない」

「ただし、今週末から導入されるフロントウイングの新技術指令が、戦力図を変えるという考え方は誤解だ。実際には、イモラでランドがこの新ウイングを装着して走行しており、その際のパフォーマンスへの影響は極めて小さく、我々のシミュレーション結果とも一致していた」

「したがって、今週末の勢力図が接近する理由を“新技術指令でMCL39のパフォーマンスが落ちた”とするのは、あまりに単純化された分析だ」

マクラーレン F1 スペイングランプリ

なお、今回の変更はカーボンコンポジットの補強といった構造的な強化であり、エアロダイナミクス形状に変更がないため、FIAに提出されるアップグレード申告書には含まれていない。

マクラーレンがバルセロナでのパフォーマンスにやや慎重な理由は、同サーキットの高ダウンフォース要求が、イモラやジェッダでフェルスタッペンのレッドブルが強さを見せた条件に近いためだ。

ステラは以前から、「イモラやモナコのような低速寄りのサーキットと、バーレーンやマイアミのような全く異なる特性のコースを単純比較するのは間違いだ」と警鐘を鳴らしており、今回のバルセロナGPでも一筋縄ではいかないと見ている。

とはいえ、マクラーレンの躍進は「一発のマジックバレット(切り札)」ではなく、いくつものエンジニアリング的改善とタイヤマネジメントの積み重ねによるものであり、2025年の勢力図が突如として大きく崩れると期待するのは非現実的かもしれない。

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カテゴリー: F1 / マクラーレンF1チーム / F1スペインGP