ホンダ、2026年F1パワーユニットで再定義される内燃エンジンと電動の関係

ICEは簡素化され、燃料は100%持続可能燃料へ移行する。エンジン単体の絶対性能ではなく、エネルギー全体をどう使い切るかが問われる時代において、ホンダはゼロベースに近い開発アプローチを選んでいる。
「単純化されたICE」はホンダにとって不利か、有利か
2026年向けICEは、FIAの方針により、あえて“複雑にできない”設計が求められる。
高精度な燃焼監視センサーは禁止され、ノックセンサーによる管理へ移行する。可変吸気システムも廃止され、吸気管長は固定。さらに圧縮比は18:1から16:1へ引き下げられる。
これらは一見すると「開発の自由度を奪う制約」に見えるが、ホンダにとっては必ずしも不利とは限らない。なぜなら、2026年のICEは限界性能を攻める存在ではなく、電動側を成立させるための“エネルギー供給装置”として再定義されているからだ。
ピークパワーよりも、
・燃焼の安定性
・ノック耐性
・電動システムとの協調
こうした領域こそ、ホンダがこれまで培ってきた制御技術が活きる分野でもある。
100%持続可能燃料という最大の未知数
2026年PU開発で、ホンダが最も難題と捉えているのが燃料だ。
バイオ燃料とe-fuelを組み合わせた100%持続可能燃料は、従来燃料と比べてノッキングを起こしやすく、燃焼を安定させること自体が難しい。ホンダのPU開発責任者・角田哲史は次のように語っている。
「新しい燃料はノッキングを起こしやすく、性能を引き出すのが難しい。ほぼゼロからの再スタートで、内燃機関はまったく新しいコンセプトになる」
さらに燃料使用量はkg/hではなく、3000MJ/hというエネルギー量で制限される。これは、燃料の“量”ではなく“質”がそのまま性能に直結することを意味する。
発熱量が高くても燃焼効率が低ければ意味はなく、ICEと電動系を含めたトータル効率が問われる。ホンダはまさに、この全体最適の構築に注力している。

予算上限を使い切らなかったホンダの現実
日本からの情報では、ホンダは2023年・2024年ともに、2026年PU開発に割り当てられた予算上限を完全には使い切っていないとされている。
これは
・レギュレーションの確定を待ち、無駄な初期投資を避けていた
・後半フェーズにリソースを集中させる判断をしていた
といった、戦略的・構造的な理由による可能性が高い。
それでもホンダが「伸び代」を期待される理由
重要なのは、ホンダが「短期間で差を詰める前例」を持っている点だ。
2015年からの第4期F1参戦では苦戦を強いられたが、最終年となった2021年初頭には、メルセデスPUに匹敵するレベルまで性能を引き上げた。しかも当時は、現在のような厳格な予算上限は存在していなかった。
今回は、
・ICEの単純化
・電動比率の拡大
・燃料特性の刷新
という“リセット条件”が揃っている。これは、過去の経験値がそのまま優位に働かない領域でもある。
2026年F1はホンダにとって「再挑戦」ではなく「再定義」
2026年F1のパワーユニットは、もはや内燃機関の性能競争ではない。
エネルギーをどう作り、どう使い、どう無駄なく変換するか――その思想そのものが問われる。
ホンダは、かつての成功体験をなぞるのではなく、「2026年型F1とは何か」を一から定義し直す立場にある。
その答えが正しければ、2026年のグリッドでホンダPUは、単なる追い上げ役ではなく、再び基準点となる可能性を秘めている。
カテゴリー: F1 / ホンダF1
