小松礼雄 ハースF1チーム10周年の節目にグッドウッドでF1マシン走行実現

舞台は英国のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード。普段はパドックに姿を見せない72歳の実業家が、自らのF1マシンを運転するという異例の試みに挑んだ。
この計画を動かしたのは小松礼雄だった。5月のマイアミGPでジーン・ハースに直談判し、「これはあなたのチームの祝典なんです。ぜひ運転を」と声をかけたところ、ハースは少し戸惑いながらも「やってみよう」と快諾。そこから準備が本格的に始まった。
「グッドウッドという場は、チームの成長を象徴する機会にもなる。だからこそ、ジーン自身にそれを実感してもらいたかった」と小松礼雄は語る。
6月20日、オーストリアGPの直前にはシルバーストンのストウ・サーキットでシェイクダウンを実施。天候にも恵まれ、ジーン・ハースは数本のアウトラップを通じて徐々にペースを上げていった。
「最初は緊張していたけど、走るたびに笑顔が大きくなっていった。最後はアクセルも踏めるようになって、クルマを降りた時には本当に楽しそうだった」と小松礼雄は振り返る。
「チーム内にもジーンと直接接する機会が少ないスタッフは多い。今回、彼が全員に握手して感謝を伝える姿を見て、皆が『本当に情熱を持っているオーナーなんだ』と実感できたと思う」

今回のグッドウッドでの参加は、VF-23をジーン・ハースが、VF-24を小松礼雄がそれぞれ走らせる形となった。さらに、元F1ドライバーの中嶋一貴もVF-23で走行し、週末には現役F1ドライバーのオリバー・ベアマンとエステバン・オコンも登場。チームにとって初の公式イベント参加となった。
小松礼雄は、近年ジーン・ハースのF1への情熱が再び高まっていることを実感しているという。
「彼はここ18カ月で何度も買収オファーを受けているけど、まったく関心を示さなかった。それどころか、技術面にも積極的に関わってきていて、僕にも細かい質問をしてくる。彼の中で何かが再点火しているのを感じる」
そして今回のヒルクライム走行は、その情熱を具現化するひとつの瞬間だったと小松礼雄は語る。
「自分のチーム、自分のマシン、自分の10年。その成果を体験してもらいたかった。彼にとっても、チームにとっても、本当に特別な瞬間だったと思う」
F1チームを陰で支えてきた小松礼雄。その静かな手腕が、ジーン・ハースとハースF1チームに新たなエネルギーを注ぎ込んでいる。

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