フォーミュラE:ストフェル・バンドーン 東京E-Prixで雨中の赤旗戦略勝ち

ベルギー出身の元王者は、今季マセラティにとって初めてとなるラップリードを記録しながらチェッカーフラッグを受けた。ピットストップを終えた時点で、2位のオリバー・ローランド(ニッサン)に対して30秒以上のリードを築いていた。
チームはあらかじめ、使用可能エネルギーを急速に消費しながら早期にPIT BOOST義務消化を狙う作戦を立てていた。これにより、悪天候によりレースが一時中断すれば、他車がPIT BOOSTを済ませる前に赤旗となり、再スタートでのタイム損失を帳消しにできる――そんな読みがあった。
そして13周目、昨年の東京ウィナーであるマキシミリアン・ギュンターのマシンに技術的トラブルが発生し、回収のために赤旗が提示されたことで、バンドーンの読み通り、再スタート時には彼のピット作業が「無償」で完了したかたちとなった。
ポールポジションからスタートしたローランドは、序盤から圧倒的なペースでレースをリードしていたが、マセラティの巧妙な戦略により、悲願のホーム勝利には手が届かなかった。
波乱のレースを制したのは戦略と決断力
マクラーレンのテイラー・バーナードは、FP1で激しくクラッシュしたターン16の外側から果敢なオーバーテイクを決め、3位表彰台を獲得した。
モナコを制したセバスチャン・ブエミ(エンビジョン・レーシング)は4位に入り、ダン・ティクタム(クプラ・キーロ)は今季ベストの5位でフィニッシュ。エドアルド・モルタラが6位に入り、復調著しいマヒンドラに再び貴重なポイントをもたらした。
この結果、ローランドはドライバーズランキングでアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(ポルシェ)に対して60ポイント差をつけ、フォーミュラE史上最大の中盤戦リードを築いた。チームランキングではニッサンがポルシェに144対139で首位を維持し、マニュファクチャラーズ争いでもニッサンが225対179でトップを走る。
明日も引き続き、東京で第9戦が開催される。
レース詳細:混乱の東京で読み勝ったバンドーン
スタート直前には25mmもの雨が降り、セーフティカー先導のもとでレースは始まった。
4周目にフィールドが整列し、スタンディングスタートでレースは再開。ローランドがターン1~2のシケインでモルタラをリードし、バーナードはターン1でモルタラのイン側に仕掛けていった。
ATTACK MODE(50kWの四輪駆動モード)を最初に使用した上位ドライバーはブエミで、そのトラクションにより一気に8番手から4番手へと浮上。そのままターン1でバーナードを交わして3位、さらに同ラップでモルタラも抜いて2位に浮上した。
モルタラとバーナードもATTACK MODEを発動し、モルタラはブエミを抜き返して2位に復帰。ただし、ローランドとの差は3秒に開いていた。バーナードはターン16で前戦王者デ・フリースを豪快にオーバーテイクし、P4を奪取した。
10周目にはローランドがエネルギー的にも優位に立ち、モルタラ、ブエミ、バーナード、デ・フリース、ナトー、フラインス、ベルニュ、ティクタム、ギュンターと続いた。
13周目、ギュンターのマシンが停止し赤旗。15周目に再スタートが切られ、ローランドが再びリードを奪った。
その後ATTACK MODEを使いながらPIT BOOSTの準備を進める中、バーナードが18周目にPIT BOOSTへ。だが、すでにバンドーンは赤旗前に完了しており、タイム損失が帳消しとなっていた。
その後、ピット作業が各車に波及する中で、バンドーンがトップへ浮上。ローランド、バーナード、モルタラ、ブエミが追い、ティクタムが一時トップを走るなど健闘したが、27周目時点で5位に収まった。
28周目、ターン2でバンドーンがコースオフからスピンを喫するも、ローランドとの25秒差を保っており、勝利に影響はなかった。
その後はバンドーンが独走態勢に入り、後方ではブエミがATTACK MODEを活用して33周目にモルタラをパスして4位に浮上。マヒンドラはATTACK MODE中でもフルパワーが出ないという問題に直面していた。
2025年FIAフォーミュラE世界選手権 第8戦 東京E-Prix
順位 | ドライバー | チーム | ギャップ |
---|---|---|---|
1 | ストフェル・バンドーン | マセラティMSGレーシング | - |
2 | オリバー・ローランド | ニッサン | +25.893秒 |
3 | テイラー・バーナード | NEOMマクラーレン | +29.012秒 |
4 | セバスチャン・ブエミ | エンビジョン・レーシング | +30.221秒 |
5 | ダン・ティクタム | CUPRA KIRO | +31.645秒 |
6 | エドアルド・モルタラ | マヒンドラ・レーシング | +33.430秒 |
7 | ニック・デ・フリース | アンドレッティ | +34.100秒 |
8 | ノーマン・ナトー | DSペンスキー | +34.711秒 |
9 | ロビン・フラインス | アプト・クプラ | +35.200秒 |
10 | ジャン=エリック・ベルニュ | DSペンスキー | +36.002秒 |
11 | サッシャ・フェネストラズ | ニッサン | +36.400秒 |
12 | フレデリック・ヴェスティ | タグ・ホイヤー・ポルシェ | +37.500秒 |
13 | ルーカス・ディ・グラッシ | アプト・クプラ | +38.200秒 |
14 | ジェイク・デニス | アンドレッティ | +39.400秒 |
15 | ケルヴィン・ファン・デル・リンデ | エンビジョン・レーシング | +40.003秒 |
16 | パスカル・ウェーレイン | タグ・ホイヤー・ポルシェ | +40.550秒 |
17 | ネフュー・エバンス | ジェネシス・ドラゴン | +41.782秒 |
18 | セルジオ・セッテ・カマラ | ジェネシス・ドラゴン | +42.304秒 |
19 | フェリペ・ドルゴヴィッチ | マヒンドラ・レーシング | +43.820秒 |
20 | ルネ・ラスト | NEOMマクラーレン | +1Lap |
21 | マキシミリアン・ギュンター | マセラティMSGレーシング | リタイア |
カテゴリー: F1 / フォーミュラE