F2とF3出身者はなぜF1で通用するのか 若手が即戦力になる理由
FIAの下位カテゴリーであるF2とF3が、単なる登竜門ではなく、F1で通用するための実戦的な準備の場として機能していることが、近年あらためて注目されている。

インディカーからF2に転向したコルトン・ハータの挑戦も、スーパーライセンスポイントの問題だけではなく、F1に必要な環境へ適応する意味合いを持つ動きとして位置づけられる。

実際、2025年にF2からF1へ昇格したルーキーたちは高い適応力を示した。キミ・アントネッリ、オリー・ベアマン、アイザック・ハジャー、ガブリエル・ボルトレトらの好走は、F2とF3がドライバーに対して、単に速さを競わせるだけでなく、F1に必要な操作、判断、対応力を段階的に身につけさせる場になっていることを裏付けている。

F2とF3はF1のシステムに慣れるための土台
F2のテクニカルディレクターを務めるピエール=アラン・ミショは、F2とF3の役割について、F1に上がる前の段階で必要な道具を与えることにあると説明した。

「我々にとって重要なのは、彼らをしっかり準備させ、フィーダーシリーズの段階でシステムやあらゆるものに慣れるためのツールを与えることだ」とミショはRACERに語った。

「だからこそ、F3やF2でもバーチャル・セーフティカーを使用するすべてのマーシャリングシステムを導入している。昨年末まではDRSも使っていて、そうしたシステムに慣れるようにしていた」

「つまり、F1で経験することを学べるようにするため、舞台裏では多くのことが行われている」

F3ではすでにソフト、ミディアム、ハードという異なるタイヤコンパウンドが用意されている一方で、1大会で使うのは1種類のみとなる。これに対してF2では週末を通じて2種類のコンパウンドが用意され、フィーチャーレースではピットストップを行ってタイヤを交換しなければならない。

「F3ではすでに異なるコンパウンドがある。我々にはソフト、ミディアム、ハードがあるが、週末ごとに使うのは1種類だけだ。そしてF2では週末の間に2種類のコンパウンドを使い、フィーチャーレースではコンパウンドを変えるためにピットストップを行わなければならない」

「だから彼らは、すべてを管理しなければならないし、あらゆる変化やクルマに備わる機能に素早く適応しなければならない」

「それは彼らにとって段階的に良い学習曲線になる。そしてF1に到達する頃には、かなり良い準備が整っている。昨年そこに進んだルーキーたちがどういうパフォーマンスを見せたかを見ると、我々としても彼らがそこで戦っているのを見て非常に満足している」

公平なワンメイクを成り立たせるための細かな配慮
フィーダーシリーズの役割は、ドライバーを育てるだけではない。同時に、できる限り平等な条件のもとで才能を示せる舞台を提供することにもある。ただし、全員にまったく同じマシンを与えるだけでは、身長や体格の差がそのまま不利として現れてしまう。

その例のひとつとして挙げられるのが、F3でタイトル争いに挑むウーゴ・ウゴチュクだ。若いアメリカ人ドライバーであるウゴチュクについては、昨季にマシンから塗装を落とした時期と成績向上が重なったことで、体格面の不利が話題になった。ただ、状況はそれほど単純ではない。実際にウゴチュクは、今季はフル塗装のカンポス車でメルボルンを制し、シーズン序盤のランキング首位にも立っている。

こうした背景もあり、F2とF3では、さまざまな体格のドライバーができる限り快適な着座姿勢を得られるよう、FIAと連携しながらコクピット設計が進められている。

「これは、あらゆるドライバーをクルマに適合させるために何が必要かを定義するべく、FIAと緊密に進めてきた作業だ」とミショは説明する。

「FIAは“3種類のマネキン”と呼ぶものを定義した。1.55メートルから1.95メートルまでの3サイズのマネキンを我々に示し、それをもとにクルマの設計を始めた」

「それに沿って作業し、異なるペダル位置や異なるシートシェルフを用いることで、どのドライバーでもきちんと収まり、期待どおりのパフォーマンスを発揮できるコクピットを実現するようにしている」

40センチもの身長差に対応するのは簡単ではなかったが、細部に至るまで調整が加えられてきたという。エンジン始動やブレーキバランス変更に必要なスイッチ類、さらにはステアリングホイールの扱いやすさに至るまで、標準部品でありながら幅広い体格に対応する工夫が施されている。

「これはかなり大きな挑戦だった。想像できるように、2人のドライバーの間に40センチの差があるというのは非常に大きい。それでも我々はそれを実現し、多くの作業を重ねてきた」

「さらに、クルマの中のあらゆるコンポーネントの位置、たとえば始動やブレーキバランス変更のためのスイッチ、そしてステアリングホイールについても、ドライバーが道具の扱いに苦労しすぎないようにしている。ステアリングホイールは全員共通の標準品だから、それにすべてのドライバーを合わせなければならない」

「小さな手の者にも、大きな手の者にも対応しなければならない。結局のところ、手が小さすぎてステアリングホイールを握れないようでは困る。まだ若く成長途中のドライバーもいるから、最初にクルマへ座った時点では大人の手の大きさに達していないこともある」

そのため2年前には、より小さなハンドル形状も導入された。手の大きいドライバーはテープで太くして対応できるようにし、小さな手のドライバーでも無理なく扱えることを優先したという。

「だからこそ、2年前にいくつか変更を行い、より小さなハンドルを用意した。そうすることで誰でも扱えるようにし、手が大きいドライバーはテープを巻いて太くして自分の手に合わせることができる。そうやって、誰もが満足してクルマに座れるようにしたいんだ」

F1 フォーミュラ2/フォーミュラ3

男女差を含む体格差にもほぼ対応
ミショによれば、フィーダーシリーズは身長だけでなく、男女による体格差も含めて、着座姿勢やコクピット設定に対応できるよう取り組んでいる。そのうえで、特別な変更なしで対応できる割合は99.5%に達するという。

これは、ドライバーがマシンに合わせるのではなく、可能な限りマシン側がドライバーに合わせることで、純粋な才能がより表れやすい環境を目指していることを意味する。ワンメイクの公平性を保ちながら、個々のフィジカル差を極力パフォーマンス差へ直結させないという考え方だ。

F3からF2への移行を容易にした共通コクピット
近年は、F3王者が翌年にF2へ上がり、そのままルーキーイヤーでタイトルを獲得する流れも目立っている。これまでのF2王者9人のうち5人が、前年にF3を制したルーキーだった。こうした流れは、両シリーズが移行しやすい設計を整える前から見られていたものだ。

そして現在では、その流れをさらに後押しするため、F3とF2のコクピット内寸が共通化されている。

「この2年間で我々が行った良いことのひとつは、F3とF2のコクピットを同じにしたことだ」とミショは語る。

「モノコックそのものは、エンジンや燃料タンクなどの関係で外側は異なる。だから外殻には違いがあるが、ドライバーが乗る内側、つまりコクピット部分は2台でまったく同じだ」

「だからF3でシーズンを終えたドライバーは、自分のシートやペダル、ステアリングホイールの寸法をそのままF2チームへ持ち込み、すぐに作業を始められる。シートを作り直す必要もない」

「もちろん成長して体格が変われば別だが、そうでなければすぐに移行できるし、これはとても良いことだ。この冬、初めてF2チームでそれを実際にやってみたが、彼らはとても満足していたし、メカニックたちも非常に喜んでいた」

ハータにとっては険しい挑戦 だが後続には希望もある
F2がF1での成功に直結する有力な準備の場になっているのだとすれば、F3もまた、将来のF2王者を育てる舞台として同じ役割を果たしていることになる。そう考えると、インディカーからF2へ飛び込んだコルトン・ハータに待ち受ける課題の大きさは明らかだ。

一方で、それは若い世代にとって希望でもある。ウーゴ・ウゴチュクのようなドライバーにとって、F3とF2は単に速さを示す場所ではなく、F1に必要な技術、適応力、レース運営への理解を積み上げるための現実的なステップとして機能している。

近年のF1ルーキーたちの適応ぶりは、その仕組みが確かに成果を生み始めていることを示している。F2とF3は、もはや下位カテゴリーというだけではない。F1で戦うための“準備された環境”として、その価値を強めている。

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カテゴリー: F1 / FIA F2 / FIA F3