2026年F1マシンのリバリーを格付け デザイナーが斬る11台

それを受けて『The Race』のクリエイティブ・リード、オリバー・カードが改めて各車のデザインを精査し、ワーストからベストまで独自の視点で順位付けを行った。
もっとも「ワースト」という表現は相対的なものであり、今年は全体として完成度が高く、優劣をつけること自体が難しいシーズンだとされる。背景には、2026年からのリバリー規則変更によって塗装面積が増え、デザインの自由度と表現幅が広がったこともある。
■11.マクラーレン:オレンジセグメントの復活

コンストラクターズ王者は大枠のコンセプトを維持し、細部をアップデートする方針を取った。サイドビューではラインの連続性が読みやすく美しく見える一方、角度によっては要素が分断されて見え、オレンジのパネルが細切れに映る点が課題とされた。
一方で、コクピット周辺を包み込むパパイヤの面積が増え、フロントから見た際の印象は強化。中央に黒い“タイガーストライプ”がより明確に出るなど、正面の見え方は改善したとされる。
スポンサー面では、マスターカードのブランドカラーが好相性であるにもかかわらずロゴの存在感が控えめで、代わってグーグルのジェミニがホイール上で強く見える点が意外だと評された。2025年のスペシャルリバリーが印象的だっただけに、2026年の特別仕様への期待も示されている。
■10.アルピーヌ:労力は別の場所へ

2025年の高評価デザインを、2026年はほぼ踏襲。視覚的連続性そのものは問題ではないが、新時代に入るタイミングで“発展”が見られないことが順位に影響した。
ただし昨年のコンセプトは2026年型の車体形状にもよく馴染み、バブルガムピンクの映え方と光沢のあるアルピーヌブルーのダイナミックさは健在。細部の調整余地はあるが、完成度としては十分に機能しているとされる。
一方で、昨季の成績を踏まえるとイメージ刷新を狙ってもよかったはずで、現状維持は「リバリー以外に注力している」というメッセージにも見える、と解釈されている。
■9.アストンマーティン:急進的ではないが前進

急進性は抑えつつ、ブランドDNAの取り込みを着実に進めた進化型と位置付けられた。デュアルトーンのグリーンを軸に、ネオンアクセントがストライプに留まらずサイドポッド上面へ拡張され、ドットグラデーションが後方へ流れる形で視覚的な“質感”が増した。
シャークフィンには疑似フィッシュスケールのような繊細な表現が入り、明るいグリーンから暗いトーンへのグラデーションが“クラフトマンシップ”を強調。高級ブランドとしての文脈に合うディテールだと評された。
一方、スポンサー統合では色アクセントを小面積に“にじませる”手法(いわゆるブランドフラップ)が散見され、水平ラインの優雅さを損ねる側面も指摘。ホンダのワードマークは控えめで、伝統的なロゴほどのパンチはないとも触れられている。
■8.ウィリアムズ:企業的だが自信あるブルー

2019年以降の迷走を経て、近年の“企業向けに強い”方向性が定着し、スポンサーが増えた状況をポジティブに捉えている。2021〜23年のスポンサーが少ない時期と比べ、現在の大胆な露出はチームにとって好材料だとされた。
配色はタイトルパートナーのアトラシアンのコバルトが主役で、近年のグラデーションよりも単色ブロックに寄せた表現。コマツは白背景に反転して衝突を抑え、ボディからリアウイングへ“切り抜く”白の区画が新規パートナー枠としても機能している。
新たにバークレイズが加わり、別の青が増えたことで、複数の青の同居が課題に。黒で分断することでさらに要素が増え、整理感を損なっているという評価が付いた。
ただし実走では見え方が良く、青の存在感は強い。デュラセルのエアインテークは引き続き象徴的で、極細の白と赤のストライプが上品な締めとして効いている。
■7.キャデラック:目を引く非対称だがアクセント不足

タイムズスクエアとスーパーボウルの同時公開で強い話題性を作り、非対称のダイナミックな構成は、90年代後半〜2000年代初頭のマクラーレンを想起させる“ノスタルジー”も伴ったと評された。
ただし、モノクロ主体のコンセプトがクロームというより磁器のような白に読める場面があり、決定的な差し色が不足している点が弱点とされた。キャデラックには黄色・青・赤というブランドカラーがある中で、とりわけ黄色を前面に出せば、ルノー不在の今、グリッドで埋もれない個性になり得たという見立てが示されている。
スポンサー獲得途上の今だからこそ、ブランド要素の再解釈は魅力的で、エンジンカバー後部に大きく展開された意匠は見事。キャデラックの筆記体ロゴの美しさなど、歴史の厚みを感じさせつつF1時代へ再定義する姿勢は高く評価された。
■6.レッドブル・レーシング:実環境で損なわれた秀逸デザイン

約10年ぶりの大刷新として、2016年から続いたダークなマット基調を終え、フォードと結び付く“新章”を示す光沢のレーシングブルーと白アクセントへ。ブルとワードマークの白アウトラインは、レトロ感を出しつつ過去の焼き直しにはならず、フォードのブランド性とも噛み合うとされた。
さらに、ピクセル・グリッチ風のパターンでワードマークをゴースト状に散りばめ、近年不足していたテクスチャーを補強。ブランドの“アクティブさ”とも整合し、デザイン自体は強い評価を得ている。
一方で、照明条件が悪いとブルーが黒に近く見え、ローンチで示した象徴性が実車で伝わりにくい点が欠点として挙げられた。曇天のバルセロナでは特に暗く読め、実環境での再現性が順位を下げた。
■5.アウディ:控えめな脅威、使命のために

歴史あるブランドとして注目されたが、2026年は“商業ミッション”に即したミニマル寄りの三色構成に落ち着いた。2022年のストライプ調コンセプトは鮮烈だった一方でスポンサーに不向きであり、今回は高級消費者ブランドとしての表現に重心を置いた整理された設計だと位置付けられる。
幾何学的なカラーブロッキングは、横方向のラインが多い他チームとは異なる方向性で、識別性と販売可能な“余白”を両立。ただし今後スポンサーが増えると清潔感が損なわれるリスクもあるとされた。
アクセントのラヴァレッドは強烈で、光の当たり方でオレンジ寄りにも深紅にも振れるため、実写での見え方に幅が出る可能性が示唆されている。黒との対比でリングは非常に強い存在感を放つとも評された。
■4.フェラーリ:HPの違和感が緩和

2025年よりパンチの効いた光沢レッドに戻し、上面の白を大きく拡張。ピンストライプで縁取りながらエアボックス〜エンジンカバーを抱き、後方へ抜ける構成で、テール側に赤い面積を残した。シャークフィンを活かした大きく読みやすいドライバーナンバーは高評価とされた。
白が増えたことで、支配的なHPロゴがようやく“落ち着いて見える”ようになり、2025年からの改善点として扱われる。モンツァのラウダ風リバリーが、完全レトロに振り切らない“中間解”の参考になった可能性にも触れられている。
一方で、後方のIBMロゴ付きの青いリアウイングは依然として課題。青はアクセントなら成立するが、パネル全面色としては主張が強すぎるという評価だ。ウイングは黒より白の方が、HPの青・白ロゴとも噛み合い、統一感が増す可能性があるとも述べられている。
■3.レーシングブルズ:兄を脅かす存在

2025年の人気要素を継承しつつ、2026年も白基調を維持。ボディ形状に沿うスリムなディテールで、引き締まった“リーン”な印象を作り、ハース同様に白ベースを活かした造形の見せ方が評価された。
多色スポンサーの統合という難題を抱えながらも、全体として要素の総和以上の完成度に到達。ミニブルを外して整理し、フォードとも親和性のある面構成に改めた点もプラスに捉えられている。
トロロッソ時代が依然としてブランドの到達点という前提は残り、独自キャラクターの完全確立という意味では“まだレッドブルの特別仕様にも見える”という含みもある。
ただ、それでも今年屈指のハンサムさで、兄チームの注目を奪い得る存在とされ、エンジンカバー上の太い赤いドライバーナンバーは特に高く評価された。
■2.メルセデス:衝撃波を送る

フロントは2025年の延長線上に見えるが、車体後方に向けてシルバーのラインが崩れ、ショックウェーブのグラフィックへ移行し、黒い基盤の上で星のパターンが展開される。複数コンセプトが同居して“忙しい”が、それでも成立して強い印象を残すと評された。
星モチーフは近年の定番で、量産EVの意匠ともつながるブランド連動として肯定的に捉えられている。俯瞰ビューではシルバー面積が大きく、ショックウェーブの意図が最も伝わるとも述べられている。
スポンサー統合では、マイクロソフトがエアインテーク側面やフロントウイングで目立つ配置となり、視認性のため黒が増えた。ただしフルカラーの窓アイコンを含め、下手な統合例より整理されているという評価だ。
総じて、ピットでも走行中でも“他と違う”存在感があり、静止していても動いて見えるような視覚効果が2026年屈指とされた。
■1.ハース:最高だ

従来は目立ちにくかったが、近年は鼻先からテールまで一貫したバランスの良い設計を継続しており、2026年はそれをさらに押し上げた年と位置付けられた。
新しいボディシェイプを活かし、ミニマルだが薄味ではなく、ダイナミックだが過剰でもない。“モダンクラシック”として成立し、ミッド2000年代のBARホンダを想起させる完成度と評された。
最重要のブランド配置は、トヨタのモータースポーツ部門であるガズーレーシングのGR。シャークフィンに沿って流れと調和し、タイトルスポンサーがデザインと衝突してしまう例とは対照的だとされた。
GRの文字は重なり気味でも判別可能で、ブランド側がリバリーを引き立てるために柔軟に表現を調整できる強さを示している。
赤の要素に“ほつれた”縁取りを与える案が小さな改善案として挙げられたが、全体評価を揺るがすものではない。契約上の貼り付けではなく、真のパートナーシップに見える点が大きな美点として強調されている。
カテゴリー: F1 / F1マシン
