2010年 F1マシン
2010年のF1は開幕4戦を終了した。マシンは一見すると昨年のトレンド上にあるように見えるが、今年から給油が禁止となり、フロントタイヤの幅が狭まったことにより、タイヤへの特性が重要な要因となっている。

ここまでの4戦は、ウェットコンディションでのレースもあり、プレシーズンでのベースラインが非常に現れた展開となっている。ヨーロッパで大幅なアップデートが投入される前の各F1マシンのポテンシャルを分析してみたい。

頭ひとつ抜き出たレッドブル

レッドブル
開幕4戦で圧倒的なパフォーマンスをみせたのがレッドブルだ。RB6は、開幕4戦全てでポールポジションを独占。昨年マシンからさらに進化し、リアの低重心化が徹底的に追及されたRB6は、抜群なトラクション性能を発揮。一発の速さでは他のマシンから頭ひとつ抜き出ている印象だ。レースペースでのバランスも優れているが、昨年同様、タイヤに厳しいという特性も持ち合わせているのも事実。そして、問題のひとつが信頼性だ。開幕2戦ではセバスチャン・ベッテルが、レースを支配しながらマシントラブルで優勝を逃している。通常のコンディションでトラブルなく走ることができれば、後半戦の巻き返しが大いに期待できる。

マクラーレンの開発力とフェラーリの信頼性

レッドブルを追いかけるのが、フェラーリとマクラーレン、そしてメルセデスGPだ。

マクラーレン
開幕4戦で大きな進歩を遂げたのがマクラーレンだ。昨シーズンにみせた開発力を発揮し、一発の速さではすでにフェラーリよりも優れたポテンシャルを感じさせる。今シーズンの新たなトレンドになるとみられる“Fダクト”で他チームを先行しているのも大きなアドバンテージといえるだろう。他チームがスケジュール外となるFダクトで迷走すれば、大きな追い上げをみせることになるだろう。

フェラーリ
フェラーリは、プレシーズンテストでの前評判通りの優れたレースペースをみせている。反面、予選での一発の速さが課題といえる。今年からフェラーリに加入したフェルナンド・アロンソが、マシンのポテンシャルを引き出して予選で奮闘しているという印象だ。しかし、開幕4戦ではエンジンの信頼性問題が発覚。中国GPでは新品エンジンを投入せず、FIAにエンジン調整を要請しているともされている。マクラーレンに対してここからどれだけ開発のペースをあげられるかがポイントとなってくるだろう。

メルセデスGP
4強のなかでやや遅れている感があるのがメルセデスGPだ。昨年のタイヤでは優れたバランスをみせていたが、今年フロントタイヤが狭くなったことで、ホンダ時代からあったアンダーステアリーな特性が顔を出している。そのため、コーナーの立ち上がりでトラクションが得られず、一発およびレースで苦戦している。ヨーロッパラウンドからはホイールベースを延長したシャシーを投入して重量配分に対応してくるとされており、そこでどれだけ取り戻してくるかで今シーズンが決まるだろう。

アグレッシブな開発でルノーがリード

ルノー
4強に最も近いチームがルノーだ。開幕前から宣言している通り、アグレッシブな開発を進めており、現状では5番手の地位を確立している。パフォーマンス面では4強にまだ及ばないものの、あらゆるサーキットコンディションで安定したパフォーマンスをみせている。このままの開発ペースを維持できれば、後半戦では上位に組み込むパフォーマンスを発揮することが予想される。

フォース・インディア
今年急上昇しているのがフォース・インディアだ。昨年は直線番長的なマシン特性でサーキットを選ぶマシンだったが、VJM03はエアロダイナミクスを向上させ、オールマイティなマシンへと進化を遂げている。しかし、開幕4戦では上位チームと比較すると開発面で後れがみられるようになっている。どれだけ開発でついていけるかが後半戦の鍵となるだろう。

ウィリアムズ
予想外に苦戦しているのがウィリアムズだ。プレシーズンテストでは、現在のルノーの位置くらいにいることが予想されていたウィリアムズだが、平均的にペース不足な状態に陥っている。信頼性はあるため、開発面でこれからどれだけパフォーマンスを上げられるかがポイントとなってくるだろう。


トロ・ロッソ
トロ・ロッソは、昨年のレッドブルマシンをベースにしていることもあり、それなりのパフォーマンスを維持している。若手ドライバーのハイメ・アルグエルスアリが着実に経験を積んできており、セバスイチャン・ブエミとあわせてポイントを狙える立場まできている。しかし、小規模チームなこともあり、チーム力という面でやや遅れているのがこのチームの特徴。小さな予算でどこまで開発を進めてくるかに注目したい。

ザウバー
最も期待外れな結果となっているのがザウバーだ。特に信頼性に乏しく、4戦で完走したのは第2戦でのペドロ・デ・ラ・ロサの一回のみ。小林可夢偉に至っては、まだピットストップさえ経験できていない状況に陥っている。フェラーリエンジン自体の信頼性に加え、BMWエンジン前提で設計されたことも影響しているかもしれない。第2戦からFダクトをテストするなど、積極的な開発を進めているが、結果に現れていない。またデ・ラ・ロサに対する不協和音が聞こえてくるなど、チームマネジメント面も懸念される。

新規参入チームは信頼性が鍵

やはり既存チームとのパフォーマンス差が否めない新チーム。マシン設計においても、既存チームと比較すると一世代前に見えてしまうのは仕方のないところか。

ロータス
その中でも安定した信頼性をみせているのがロータス。経験豊富なテクニカルディレクターであるマイク・ガスコインのもと、堅実なマシン開発で新チームのなかでは最もレースらしいレースをしている。スペインGPでは大幅なアップグレードを持ち込むとしており、どのくらいパフォーマンスを向上させられるかに注目したい。

ヴァージン・レーシング
プレシーズンテストから信頼性に悩まされているヴァージン・レーシング。レースを完走できない燃料タンクを設計するという致命的なミスをするなど、チーム力においてもまだまだF1のレベルには達していないと感じてしまうのが正直なところ。風洞を使用せずにCFDのみで設計されたマシンもパフォーマンスは予想通りといったところ。まずは完走できるチーム力をつけるのが先決といったところか。

ヒスパニア・レーシング
ぶっつけ本番で開幕戦に挑んだヒスパニア・レーシング。ダラーラが設計・製造したマシンだが、開幕直前の財政問題からかディテールの詰めが甘いのは一目瞭然。しかし、ドライバーが両方ともルーキドライバーであることを考えれば、“動くシケイン”となりながらも2度のダブル完走を果たしている点は、ヴァージンよりも評価できるポイントか。

Fダクトをどう処理できるかが注目

今シーズン、マクラーレンが導入したFダクトが合法となったことで、昨年のダブルディフューザーほどではないにしろ、開発に大きな影響を与えることは必至。マクラーレン以外のチームにとっては、エクストラの開発になるため、マクラーレンの持つアドバンテージは大きいだろう。既存チームではトロ・ロッソ以外がFダクトの開発に取り組んでおり、通常の開発スケジュールとどのようにバランスを保つことができるかが後半戦を大きく左右するAことになるだろう。

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カテゴリー: F1 / F1マシン