2025年F1 カナダGP 予選:トップ3インタビュー&記者会見全文

Q3終盤の最終アタックで0.160秒差でマックス・フェルスタッペンを退けたラッセルは、「人生で一番エキサイティングなラップだった」と語り、その走りには本人も「鳥肌が立った」と明かすほどの自信が宿っていた。
2番手にはレッドブルのフェルスタッペン、3番手にはマクラーレンのオスカー・ピアストリが続いた。2人ともミディアムタイヤでのアタックを選んだラッセルに対しソフトで挑むも、わずかに及ばなかった。
予選後には3人によるパルクフェルメインインタビューと記者会見が行われ、それぞれが決勝への意気込みと、週末のセッションを振り返った。
パルクフェルメインインタビュー(インタビュアー:ジャック・ヴィルヌーヴ)
Q:オスカー、3番手でしたね。ポールではなかったけど、今日はすごく大変そうでした。マシンのドライブは難しかったですか?さっきちょっと壁に当たってましたけど、それでもチャンピオンシップ争いには残ってますよね。明日のレースに向けて、良いポジションだと思いますか?
オスカー・ピアストリ: 正直、プラクティスの内容を考えると今の自分にはかなり満足している。いい巻き返しができたと思う。Q3ではミディアムにするかソフトにするかという判断があったけど、僕たちはたくさんの問題を抱えていたから、一貫性を持たせるためにソフトを選んだ。けっこう満足しているよ。今年はちょっと違う形だけど、ここではそれが合っていたと思う。
Q:チームメイトがずっと後ろにいることを考えると、チャンピオンシップ的にはいいポジションですよね。明日、頑張ってください。
ピアストリ: ありがとう。
Q:マックス、あとちょっとでしたね。本当に接戦でした。でもこのサーキットって、鈴鹿みたいに予選で走るのが難しい場所ですよね。ウイングを削って速く走って、トップスピードもあって、でもコーナーでも速さが必要で。どうやってそのバランスを取ってるんですか?
マックス・フェルスタッペン: 週末を通してかなりいい感触だった。クルマもずっといいウインドウに入っていたと思う。このサーキットはけっこうクールだよ。縁石を使って走る感覚がビッグゴーカートみたいだし、長いストレートと強いブレーキングポイントがあって、直線での効率が重要になる。そこは僕たちの強みでもある。だから、予選には満足しているし、今日もクルマはよく機能してくれた。あとはタイヤ選択が難しかったけど、正しい判断ができたと思う。
Q:ターン1と2のレイアウトを見た時に、2番手って実は右側スタートになるじゃないですか。それって有利だったりしません?
フェルスタッペン: ポールを選べるなら、いつだってポールの方がいい。スタート位置がちょっとでも前になるからね。でもまあ、2番手でも大丈夫。明日どうなるか見てみよう。今日の結果にはすごく満足しているし、明日はいいレースができればと思っている。
Q:それじゃあ明日は楽しんでくださいね。頑張って。
フェルスタッペン: ありがとう。
Q:ジョージ、2年連続のポールですね。トップスピードが足りないって言われてる中で、また最後のラップで決めてきました。今年は勝利争いまでは届かないけど、ずっとポイントを取り続けてチャンピオンシップに残ってますよね。今日のポールって、流れ的にも完璧なタイミングでした?
ジョージ・ラッセル: 今日は本当に最高だった。この素晴らしい観客の前でポールを獲れて、すごくうれしい。正直言って、最後のラップは人生で一番エキサイティングなラップだったと思う。ステアリングにデルタが表示されていて、各コーナーで0.1秒ずつ速くなっていくのが見えて、最終コーナーに入る時点で0.6秒アップしてた。「このラップはすごい」って思いながら走ってた。ゴールラインを越えてP1だと分かった時は本当に驚いたし、めちゃくちゃうれしかった。
Q:隣にはタフなファイターがいますね。あなたもチャンピオンシップ争いの中にいるわけですけど、明日はどう戦うんですか?
ラッセル: 僕らは友達だから、全然問題ないよ。
Q:でも、ヘルメットを被ったら違いますよね!ターン1のスタート、彼の方がトップスピードは上です。勝ちを狙って攻めていくのか、それともポイントを確実に取りに行くんですか?
ラッセル: ペナルティポイントは僕の味方だからね。さて、どうなるか見てみようか。
記者会見(F1カナダGP予選後)
Q:ジョージ、2年連続のポールですね。あの最後のラップは本当にすごかったです。どれくらい気持ちよかったですか?
ラッセル: 正直言って、人生で一番エキサイティングなラップだったと思う。このサーキットはすごくアグレッシブに攻めないといけないし、バンピーで簡単にミスできる。最後のラップでほぼ0.7秒見つけたんだ。コーナーごとに0.1秒ずつ速くなっていって、本当にクルマがレールの上を走ってるみたいな感覚だった。完全にリズムに乗れてたし、あのラップの後にポールが決まった瞬間は本当にすごかった。鳥肌が立った。ポールやいい結果で鳥肌が立ったのは初めてかもしれない。それくらい意味のあるラップだった。
Q:ミディアムタイヤの違いはどうでしたか?
ラッセル: 今日に限って言えば、間違いなくミディアムの方が速かったと思う。こういうことは時々あるけど、今日の予選は本当にトリッキーで、順位もセッションごとにガラッと変わってた。Q1では僕は下位だったけど、Q2ではいいラップが出て、Q3の最初のランではまた少し遅れてた。けどその時も「悪くないな」と思ってたんだ。でもミディアムに変えてからは一段と自信が持てた。ただ、オスカーがソフトで出したタイムと比べても3〜4テンポ差があったから、別にミディアムがソフトより0.3秒速いとは思ってない。どっちにしろ、あのラップは自分の中で特別だった。
Q:Q3では、まだ路面が上がってきていた感じがしましたか?
ラッセル: そうだね。ラップごとに路面は確実に良くなっていた。特にここはストリートサーキットだから風があるとダストが乗るし、セッションの合間にコンディションが変わる。だからQ3の最後の最後が勝負どころになるんだ。週末ずっと調子が良かっただけに、もし予選でそれが出せなかったら「失敗だった」と感じてしまう。だからあの結果は本当に嬉しかった。
Q:じゃあレースを見据えて、何が一番の課題になりそうですか?
ラッセル: 今のところは正直まだ分からない。金曜の時点ではロングランのペースは良かったけど、今日は気温が5度も高くて、それが大きく影響するんだ。金曜はクルマが完璧に近い状態だったけど、明日気温がさらに上がったら逆方向に振れる可能性もある。レースは午後2時スタートで、予選は午後4時だったから、そこも違う。簡単な展開にはならないと思うし、周りにも速いクルマがいる。1ストップになるのか2ストップになるのか、それもまだ見えていないし、色んな要素が絡んでくると思う。
Q:スペインの件もありましたが、ターン1でマックスに対して少し強気にいけそうな気持ちはありますか?
ラッセル: もちろん、ここでは勝利を争ってるから、互いに全力で行くしかない。僕はまだ今年1勝もしていないし、何としても1つは勝っておきたい。あとはタイミング次第だね。
Q:マックス、あなたにとっても素晴らしい予選だったと思います。Q3であと少し詰められる部分はありましたか?
フェルスタッペン: ない。
Q:じゃあセッション全体を振り返って、特にQ3はどんな感触でしたか?セクター1はとても良かったように見えました。
フェルスタッペン: 問題なかった。予選を通して毎回ステップアップできてたし、ミディアムを使うという戦略も計画通りだった。それがうまくいったから満足している。
Q:じゃあロングランでの感触はどうでしたか?
フェルスタッペン: 悪くなかった。昨日の段階ではかなり満足していた。タイヤをうまく管理する必要がある。昨日は全体的にグレイニングが出ていたから、それをどう抑えるかが鍵になると思う。明日は気温も高いから、そこをどう対応できるかだね。
Q:「安定したレースがしたい」とさっき言ってましたけど、それって具体的にどういう意味ですか?
フェルスタッペン: 表彰台に立つこと、できる限り競争力を発揮すること、そしてクルマのポテンシャルを最大限に引き出すことだと思う。でもそれが実際にできたかどうかは、レース後にしか分からない。ただ、タイヤマネジメントをうまくやれればいい結果が出せると思う。
Q:ちなみに…ジョージの隣ということもあって、またペナルティポイントの話題が出ましたけど、気にしてますか?
フェルスタッペン: またその話か…マジでうんざりしてる。木曜にも聞かれたけど、こんなの本当にくだらない。幼稚だよ。だから僕もあんまり喋りたくない。こんな世界になってしまったことがただただ残念だ。
Q:じゃあオスカーに移りますね。今日の予選も素晴らしかったですけど、ご自身としてはどんな内容だったと思いますか?
オスカー・ピアストリ: プラクティスと比べたら、はるかに良かった。正直、3番手にはかなり満足してる。ここまでのすべてのプラクティスセッションでは苦しんでたし、今朝もあまりスムーズには行かなかった。だけど、予選ではすべてが正常に戻ったというか、クルマがちゃんと反応してくれた。だから、「ミディアムにすべきだったのか」っていう疑問は常にあるけど、プラクティスの状況を踏まえると、同じコンパウンドでクリーンなラップをまとめることが最善だと判断した。それがうまくいったと思うから、かなり満足してる。
Q:そのミディアムを使わないという判断は、どのタイミングで決めたんですか?Q3直前の判断ですか?
ピアストリ: 常にオプションとしてはあったけど、正直、自分はそこまで惹かれてなかった。さっき言ったように、プラクティスはかなり苦しかったし、予選ではとにかくシンプルに進めたかった。余計な変数を入れて、もっと難しくしたくなかったんだ。今年の僕たちの強みのひとつは、自分たちの判断を貫くことだと思ってる。ミディアムを使えばポールだったかもしれないけど、失敗するリスクもあるし、今より悪いポジションに終わっていた可能性もある。だから、今の結果にはけっこう満足してるよ。
Q:予選ではクルマの調子が戻ってきたとのことですが、明日は優勝を狙えると思いますか?
ピアストリ: 狙えると思う。金曜の段階ではどのセッションも良くなかったけど、今朝よりはかなりマシな感触がある。昨日と比べてもかなり良くなってる。レースでは僕たちはだいたいいつも強いからね。ただ、隣の2人も昨日のロングランではすごく速かったし、簡単に勝てるようなレースにはならないと思う。でも、勝負には加われると思ってる。

質疑応答セクション
Q:ジョージ、今季ここまでマクラーレンの速さをずっと評価してきましたが、明日オスカーと本気で戦う状況になるとは予想してましたか?
ラッセル: さっきも言ったように、気温次第なんだよね。今のところはタイヤがオーバーヒートしていないから、僕たちはかなり良い状態にある。タイヤがオーバーヒートしないサーキット、例えばここや去年のラスベガスでは、すごく良いパフォーマンスを出せている。昨日はマクラーレンがかなり苦しんでいたのを見ていたし、明日も天気や気温の変化が大きな鍵になると思う。ほんのちょっと曇っただけで、僕らに0.2秒のアドバンテージが出るかもしれないし、逆に晴れて気温が上がれば、全部フラットになる。明日どうなるかは少し運次第なところもあるけど、どんな状況でも僕らは一番前からスタートできるんだから、それはすごく大きい。
Q:オスカー、今回は新しいサスペンションを使う選択肢があったけど、使わなかったですよね。その理由を教えてもらえますか?
ピアストリ: 特に気にしてないよ。詳細についてはあまり言えないけど、自分が使いたいと思えば使えた。でもそうはしなかった。いくつかの点では良くなるけど、他の点ではそうじゃない。だから単純なアップグレードというより「別の部品」なんだ。今季ここまでのクルマの状態に満足してるし、今回は一貫性を保ちたかった。それだけだよ。
Q:ジョージ、GPDA(F1ドライバー協会)代表としての立場から。今回デレック・ウォーリックがスチュワードから外された件について、スチュワードがメディアに話すのは問題だと思いますか?
ラッセル: 僕らはみんな自分の意見を持つ権利があると思ってる。今回デレックが言ったことって、たぶん誰も傷つけてないと思うし、だからこそ彼はまた復帰するんじゃないかな。今の時代、誰が何を言ってもすぐに細かく取り上げられる。そういう世界になった。あと、忘れちゃいけないのは、スチュワードってボランティアなんだ。F1から給料をもらってるわけじゃないし、みんな他に仕事を持ってる。その上でメディア対応するのも自然なことだよ。今回みたいに、週末だけ外れる程度で済んだなら、それ以上はやりすぎだと思う。
Q:ジョージ、去年のモントリオールでポールからスタートして、結果は厳しいものになりました。今年のレースに向けて、何か学んだことはありますか?
ラッセル: 去年のレースで分かったのは、このサーキットでは本当に何が起きるか分からないってこと。天気もそうだし、トラック上のアクシデントもある。ストリート寄りのサーキットだから、最後の最後まで気が抜けない。去年はレースの内容が悪かったし、もっと良くできたと今でも思ってる。今年はまったく別の展開になると思う。みんなレース中にハードタイヤを使うことになると思うけど、それが1ストップで持つのかどうか、誰にも分からない。だから、そのへんが波乱要素になるかもしれないね。
Q:マックス、スペインではちょっとチャンピオンシップについて悲観的な発言がありましたけど、それは一時的なものですか?今日みたいなパフォーマンスを見て、まだタイトル争いにいると感じてますか?
フェルスタッペン: 僕はいつもレースごとに集中してるだけ。チャンピオンシップのことは、別に毎週考えてるわけじゃない。仮にリードしてても、そんなに気にしてない。とにかく毎戦ベストを尽くすこと、それだけに集中してる。
Q:ジョージ、モントリオールはブレーキングの安定性が試されるサーキットですが、今日のブレーキの感触はどうでした?特にターン10について。
ラッセル: 今日の感触はすごく良かった。特にこういう涼しいコンディションのときはクルマの性能が出しやすいんだ。…ちょうどいま靴のサイズ比べをしてたんだけどね(笑)。僕の足がデカすぎて、ペダルに入れづらい。でも、それでも問題はなかった。今日のQ3は赤旗もあって予選全体が1時間15分ぐらいかかってたと思うんだけど、その間に路面温度も下がっていった。それもあってQ3の方がQ1よりも速かったんだと思う。チームとしては、こういう条件での良さは活かせてるけど、シーズン全体ではそれだけじゃ足りない。24戦のうち3戦くらいしか完璧な状態で戦えてないから、残りに向けて改善が必要だと思ってる。
Q:マックス、今週ずっとほぼ完璧な走りでした。クルマの改善による部分と、自分がゾーンに入っていた部分、どれくらいの割合だと思いますか?
フェルスタッペン: バルセロナと同じマシンだけど、今回はチームがすごくうまくやってくれたと思う。到着した時点ですでにクルマのセットアップがすごく良かった。それから微調整して、タイヤの選択も適切にできた。今シーズンはクルマの仕上がりが良かったり悪かったりすることが多かったけど、今回は最初から良かった。だから今日こうして良い結果を出せて嬉しい。
Q:最後に、ジョージとオスカーに聞きます。ペナルティポイントの件が話題になってますが、相手にそれがあることを知った上で、戦い方に変化はありますか?
ラッセル: そもそも誰だって他人にぶつけに行こうなんて思ってない。マックスはトップクラスのドライバーだし、だからって彼が特別にスペースをくれるなんてことはないと思ってる。むしろ、逆に見せつけようとしてくるかもしれないから、気をつけないとね。でも僕らはみんな勝つためにここにいる。自分のレースを台無しにするようなことは誰もしないさ。もし出場停止になったら、家で過ごすことになる。まあ、理想ではないけど、世界の終わりってわけでもない。
ピアストリ: 僕自身は何も変わらない。リスクを減らすつもりもないし、増やすつもりもない。いつも通りにレースするよ。
Q:オスカー、今年のマクラーレンはこれまで支配的な速さを見せてきましたが、今回の週末はちょっと違いました。それはサーキットの特性が理由ですか?それとも他チームが追いついてきたのでしょうか?
ピアストリ: 今週末は正直、かなり苦戦していたと思う。予選では少し立て直せたけど、それでもいつもの感じには戻りきってなかった。今季の予選は、ほとんどのレースですごく接戦になってる。今日はそこに「ミディアムかソフトか」っていう要素が加わって、さらにややこしかった。ジョージが言ってたように、こことか去年のラスベガスみたいにメルセデスが強い場所もあるし、条件が合ってたのかもしれない。要因はいろいろあるよ。昨日の段階では僕たちは完全に後手に回っていたし、今日の午前中も個人的にはあまり納得できる内容じゃなかった。予選ではある程度持ち直せたけど、週末全体としてはちょっと荒れてた。そのぶん、最後にほんの少し届かなかった感じがある。差はもっと小さくできたと思うけど、いろんな要因が重なって、こうなったんだと思う。
カテゴリー: F1 / F1カナダGP / F1ドライバー