キアヌ・リーブス F1の新たな語り部 映画界からモータースポーツの最前線へ

2023年のドキュメンタリー『Brawn: The Impossible Formula 1 Story』でナレーターと製作総指揮を務めた彼は、2026年にF1参戦予定のキャデラック・チームを追う新シリーズの企画にも関わっており、“F1アンバサダー”としての存在感を高めている。
F1ファンの間ではおなじみになりつつあるリーブスだが、彼がどのようにしてF1の語り部となったのか──その歩みを振り返る。
ブラウンGPへの情熱がすべての始まり
リーブスがF1ドキュメンタリーに本格的に関わったのは、2023年に配信された『Brawn: The Impossible Formula 1 Story』(ディズニープラス)。わずか1ポンドで買収されたブラウンGPが、F1デビューシーズンの2009年にタイトルを獲得し、翌年には売却されたという驚異の実話を描いたこの作品で、彼はインタビュアーとしてロス・ブラウン、ニック・フライ、ジェンソン・バトンらの心の内に迫った。
「事実だけでなく、当事者たちがどう感じていたのかを掘り下げたかった」と語るリーブスの姿勢は視聴者に好評を博し、同作はエミー賞も受賞した。
この成功がきっかけとなり、リーブスはF1新規参戦を目指すキャデラック・チームを主題とした新たなドキュメンタリーの製作にも携わることに。2026年開幕前のリリースが予定されている。
子どもの頃からのF1ファン
では、そもそもリーブスのF1愛はどこから来たのか。本人によれば、「子どもの頃からF1が大好きだった」とのこと。
「毎シーズン全部を追っていたわけじゃないけど、レースを観るのが好きだったんだ。ある時、友人が“1ポンドで買われたチームがタイトルを獲った2009年のシーズンを知ってる?”って話してくれて、それがブラウンGPのことだった。それを聞いて、もっと知りたいと思ったんだ」と、彼は『talkSPORT Drive』の取材で明かしている。
その“もっと知りたい”という好奇心が、のちにブラウンGPドキュメンタリーへとつながった。
リーブスは北米F1ファンの象徴的存在
リーブスのように「物語をきっかけにF1に夢中になった」というファンは、北米──特に米国で急増中だ。Netflixの人気シリーズ『Drive to Survive』がF1の舞台裏を可視化し、新たなファン層を呼び込んだのと同じ構図である。
F1はかつて“敷居が高く、排他的”という印象が強かったが、リーブスのような著名人が情熱をもってその魅力を伝えることにより、より多くの人々が関心を寄せるようになったのだ。
“ただのゲスト”ではない、本物のレース愛好家
リーブスがF1のパドックに姿を現すのは珍しいことではないが、彼のモータースポーツへの関わりは表面的なものではない。2009年にはロングビーチGPのセレブレースで優勝経験があり、最近ではインディアナポリス・モーター・スピードウェイでトヨタGRカップ車両をドライブしてプロデビューも果たした。
さらには自身のバイクメーカー「ARCH Motorcycle」を共同設立するなど、二輪・四輪を問わず「走る」ことに情熱を注いでいる。

2026年、キャデラックと共に再びF1へ
次なる挑戦となるキャデラックF1のドキュメンタリーは、2026年のF1開幕前に公開予定。かつてブラウンGPの奇跡を伝えたリーブスが、今度は米国メーカーの“F1挑戦”をどのように語るのか、注目が集まっている。
スター俳優にして本物のレース愛好家──キアヌ・リーブスは、F1における新しい“伝道者”の形を体現している。
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