2025年F1 イギリスGP 決勝:トップ3インタビュー&記者会見全文

天候の変化とペナルティによって明暗が分かれた激闘を、それぞれが異なる視点から振り返った。
トラックインタビュー
(インタビュアー:ジェンソン・バトン)
Q:ニコ・ヒュルケンベルグ、ついに表彰台に上がることになりました。この気持ちはいかがですか?
ニコ・ヒュルケンベルグ:いやあ、最高だ!長かったね。でも、僕らにはその力があるって、どこかでずっと信じてた。ほぼ最後尾からのスタートで、先週に続いてまたやり直すことになったレースだったけど、本当に非現実的な気分だ。どうやってここまで来たのかよく分からないけど、とにかくクレイジーなコンディションだったし、生き残りをかけた戦いだったと思う。正しい判断、正しいタイヤ、タイミングも完璧で、ミスもなかった。本当に信じられないレースだった。
Q:200戦以上戦ってきたわけですが、その間にはあと一歩ということもたくさんあったと思います。今日はそのすべてを報われた瞬間ですよね。今の心境をもう少し教えてください。
ヒュルケンベルグ:今日はね、最後のピットストップまでずっと「本当にこれ現実なのか?」って思ってた。でも、そのピットのあとでルイスとの差が広がったと聞いて、「これはいける、少し余裕ができた」と思ったよ。でも、彼はかなり速く追いついてきたから、プレッシャーはずっとあった。激しいレースだったけど、僕らは崩れなかったし、ミスもしなかった。それがすごく嬉しいんだ。
Q:そして追いかけてきた相手は7度のワールドチャンピオン、ルイス・ハミルトン。イギリスGPでこれ以上ないようなプレッシャーだったのでは?
ヒュルケンベルグ:まさにそれを考えてたよ。ルイスは地元ファンの前で全力を出してくるって分かってた。でも僕も「今日こそは自分の日だ」って、腹をくくって挑んだ。本当に嬉しい。毎年こうやって応援してくれる皆さんに感謝したい。
Q:おめでとうございます。
ヒュルケンベルグ:ありがとう。
Q:オスカー、感情が高ぶっていると思います。普段は冷静なあなたでも、今日の件ではかなり悔しさを見せていましたね。
オスカー・ピアストリ:あまり多くは言わない方がいいかな。何か言うと問題になりそうだから。ニコ、おめでとう。今日一番のハイライトだったと思う。だから、これ以上は言わない。
Q:レース序盤ではマックスに対して素晴らしいオーバーテイクを決めて、ペースも良かったですね。ただ、問題の場面、セーフティカーの後ろでの件について触れないわけにはいきません。
ピアストリ:セーフティカーの後ろでブレーキをかけたらペナルティを受けた。でもその前の5周でも同じことをやってたし、特に変わったことはしてないんだよね。これ以上言うと危ないから控えるけど、天気が悪い中でも最後まで応援してくれた観客の皆さんに感謝したい。今日はあまり好きになれなかったけど、それでもシルバーストンは好きなんだ。みんな本当にありがとう。
Q:ランド、やりましたね!母国グランプリで優勝しました。
ランド・ノリス:うわあ、信じられない。本当に夢見てたことだし、ずっと達成したかったことが叶った。チャンピオンになること以外で、これ以上の感動はないと思う。達成感、誇り、そのすべてが詰まっているレースだった。F1を観始めたのがここで、昔はテレビで君(ジェンソン)を見てた。その自分が今、こうして勝てた。本当に信じられないよ。ファンの声援がなかったら成し遂げられなかったと思う。本当に感謝してる。
Q:最後の数周、頭の中では何を考えていましたか?
ノリス:頭が真っ白になる。レース前に考えていたことなんて全部吹っ飛ぶ。ただひとつのルールは「失敗しないこと」。それが最優先。最後の数周はただ観客を見て、すべてを感じようとしてた。次はもうないかもしれないからね。だからこの瞬間を大切にしたい。この思い出は一生忘れない。
Q:今日は本当に大変なコンディションでしたね。簡単な勝利ではなかったはずです。
ノリス:これ以上ストレスのかかるレースはないと思う。でもオスカーも本当に良いレースをした。だから称賛を送りたい。彼が後ろにいるときの方が好きだけどね(笑)。とはいえ、マクラーレンとして母国で勝つことができて最高だった。友人や家族、スタッフ、みんなに感謝してる。
Q:最後に、ここに集まってくれたファンの皆さんにメッセージを。
ノリス:レース前は「今日は何か見せたい」と思ってた。でも52周は長いし、天気も変わりやすいから、どうなるかは分からない。それでも、今この瞬間を味わえてることが信じられない。すべてのファン、イギリスの皆さん、マクラーレンファンに感謝したい。そして僕のグランドスタンドの皆にも。毎周声援をくれて、本当に素晴らしかった。

記者会見
Q:ランド、母国レース優勝おめでとうございます。この瞬間があなたにとってどれほど特別な意味を持つか、教えてください。
ランド・ノリス:どこから話せばいいのか分からないくらい、波乱万丈なレースだった。本当に特別な意味がある。ホームレースでトップに立つっていうのは、ものすごく特別なことだって思う。さっき他のインタビューでも言ったけど、僕がF1を観始めたのはここだった。テレビで観てたんだ。ルイス、ジェンソン、フェルナンド――確か2007年か2008年の、大雨のレースだったと思う。あれが僕のF1の原体験で、ルイスが勝って、観客が総立ちで祝福してる姿を見て、「いつかあれを自分で体験したい」って思った。それが今日、実現したんだ。自分の目でその光景を見ることができた。本当にすごいことだったし、信じられない気持ち。家族も友人も、兄弟も両親も祖父母も、来れる人は全員来てくれた。だから、本当に特別だった。
Q:モナコ、そして今回のシルバーストンと、大きなレースを制してきました。いま、自分が「波に乗っている」と感じていますか?
ノリス:うーん、どうだろう。「勢いがある」とかってよく言われるけど、僕自身はそういうふうにはあまり考えない。結局のところ、一戦一戦だからね。確かに先週もいいレースだったし、いいバトルができて、今週もまた良いレースになった。でも、だからといって「今絶好調です」って感じではないかな。
それに、オスカーも今日は素晴らしい走りをしてたから、彼にも称賛を送りたい。2勝目だけど、簡単に取れたわけじゃない。毎回、何コンマ何秒の争いで完璧を目指して戦ってるから、本当に疲れるんだよ。特に今日みたいなレースはね。確かに2週連続で良い週末を過ごせたけど、それを維持するにはもっと一貫性が必要だと思ってる。2回じゃまだ足りない。これからも努力を続けなきゃいけないんだ。
Q:今回のレースはかなり予測が難しかったと思います。チームとして正しい判断をするのはどれほど難しかったですか?
ノリス:チームとしては本当によくやってくれた。僕自身もすごく満足してる。タイミングも判断もすべてうまくいったと思う。ただ、スリックタイヤへの交換はあと2周くらい早くてもよかったかもしれないけどね。
レース序盤はオスカーとマックスが結構争ってたから、僕は少し控えめに走ってタイヤを温存してた。でも、もしかしたらそれが間違いだったのかもしれない。結果的にまたインターに替えることになったからね。
このコンディションでクラッシュせずに走るって、口で言うほど簡単じゃない。ターン1のアクアプレーニング、ターン2、ターン9――アイザック(ハジャー)がクラッシュしたところ――ああいうのは、マジで一歩間違えたら全部終わりなんだよ。ほんのコンマ数秒の差でね。
でも怖さの中にワクワクもある。集中力を取り戻して走り切るっていう、スリルがあるレースだった。決断は多かったけど、チームとちゃんと話し合いながら、落ち着いて対応できた。それが最終的に勝利に繋がったと思う。
Q:ではオスカーに。素晴らしい走りでしたが、10秒のペナルティが響きました。あのセーフティカー中の出来事について詳しく教えてください。
オスカー・ピアストリ:ブレーキを踏んだ瞬間に、セーフティカーのライトが消えたんだよね。それもすごく遅いタイミングで。僕はそのまま加速しなかったけど、あの時点で僕がペースをコントロールする立場だったから、それで問題ないと思ってた。最初のリスタートと同じようにやったつもりだったし、特に遅くもしてないし、何も変えてない。だから残念だよ。
Q:スチュワードに話をしに行くつもりですか?
ピアストリ:分からない。今はやる意味があるとも思えないし、正直あまり建設的になるとも思えないんだよね。だから、今のところは考えてない。
Q:これまでも悔しい経験はあったと思いますが、今回の件はどのくらい引きずりそうですか?
ピアストリ:分からない。でも、今日は明らかにもっと良い結果が得られるはずだったっていう悔しさがある。自分としてはすごく良いレースができたと思ってるから、それが報われなかったというのはやっぱり辛い。
Q:マックスに対するアグレッシブなオーバーテイクもありました。今日の走りを通して、自信はどれくらい深まりましたか?
ピアストリ:すごく深まったよ。チームとしても、去年とは全く違う内容のレースだったし、みんな本当によくやってくれた。マシンも最高だったし、自分にも少しは称賛を与えていいと思う。だからこそ、勝てなかったのが余計に悔しいんだ。
Q:ではニコ、改めておめでとうございます。F1で初の表彰台を獲得しました。率直に、今どんな気持ちですか?
ヒュルケンベルグ:嬉しいけど、まだすべてを受け止めきれてない感じだ。すごく激しいレースだったし、ランドが言ってたことはよく分かる。こういう難しいコンディションのなかで、限界まで攻めてると、常に「このまま壁に突っ込むんじゃないか」って感覚がある。でも、それでも攻めなきゃいけない。
最後はルイスとの遠距離バトルみたいな感じだったけど、彼が追いついてくる前に差をつけられててよかった。昨日はグリッド最後尾近くで絶望的だったけど、今日はそれがこんな結果に変わった。信じられないし、これをちゃんと実感するには少し時間がかかりそうだ。でも今はすごく幸せだし、ポジティブな気持ちでいっぱい。2週間空くから、しっかりお祝いもできそうだね。
Q:表彰台が見えたと感じたのはいつ頃ですか?
ヒュルケンベルグ:スリックに戻る前かな。ランスを抜いて、すぐにルイスもランスを抜いた。でもその後、僕がルイスとの距離を保てて、インターの摩耗が進む中で逆に差を広げられた。あの時点で「いけるかも」と思った。
それに、僕らはルイスより1周遅らせてスリックに交換したことで、10秒近く稼げた。その差が決定的だったと思う。そのあと10周ちょっとはとにかく長く感じたけど、「ここからは自分次第だ」と思って集中して走った。
質疑応答:記者からの質問
Q:ニコ、おめでとうございます。あなたが最後に表彰台に立ったのはル・マン24時間レースの10年前ですね。今回はまったく違う種類の表彰台だったと思いますが、この30分、1時間でシャンパンをかけたり、表彰台で祝ったりしたときの気持ちはいかがでしたか?
ニコ・ヒュルケンベルグ:最高の気分だったよ。やり方はちゃんと覚えてた(笑)。ジュニアカテゴリの頃はよくやってたしね。でもF1ではずいぶん長い間待たされて、あっという間にレースが終わって、それをまだ整理してる最中なんだ。
今はとにかくたくさんの感情が押し寄せてきてるし、たくさんの人が祝福してくれて、前向きな言葉をかけてくれる。だから、今はただただ嬉しいし、ホッとしてる。でも数時間、数日経ってようやく本当に実感が湧いてきて、もっと楽しめるようになると思う。
Q:オスカーに質問です。今回のペナルティは、カナダでの判定と比べて矛盾しているように感じますか?
オスカー・ピアストリ:どう違うのかは分からないけど、自分としてはルールの範囲内でやったつもりだよ。実際、同じレースの中で1回目のリスタートでも同じことをしている。だから、よく分からないというのが正直なところ。
Q:ニコにも質問です。15年F1を戦ってきて、ようやく表彰台に立って手にしたのがレゴ製のトロフィーというのはどんな気分ですか?
ヒュルケンベルグ:えっ?マジで?レゴなの?(笑)それなら娘が遊べるからいいじゃないか。ポジティブに考えればね。でもまあ、銀とか金のトロフィーでも良かったけど、文句は言わないよ。
Q:ニコに2つ質問です。まず、序盤にインターミディエイトに早めにピットインしましたが、あれはアンダーカット狙いでしたか?それから、しばらくランスの後ろを走っていたとき、表彰台のチャンスを失ったと感じましたか?
ヒュルケンベルグ:そうだね。インターからインターへの交換だったけど、路面が乾いてきて、最初のインターはかなり摩耗してた。ただ、チームが「雨がまた来る」と言ってて、実際そのとおりになったんだ。
だから僕はあまり深く考えず、直感でピットに入った。それが大正解だった。すべてのピットストップのタイミングが完璧だった。こんなことは本当に稀だよ。
ランスの後ろにいたときは、彼も速かったし、僕らのペースはかなり似ていた。でもその後、路面が乾いてきて、僕の方がタイヤの劣化が少なかった。それで抜けるようになった。あの時点では表彰台なんて考えてなかった。ただ走り続けて、ミスしないようにすることしか頭になかったよ。
Q:ランドに質問です。チェッカーを受けた直後、無線ではかなり感情的になっていましたね。泣きそうになったりしましたか?最後のラップではどんな感情が込み上げてきましたか?
ランド・ノリス:泣いてはないよ。泣こうとしたけど出なかった(笑)。僕、感情が高ぶっても涙は出なくて、ただニヤニヤしちゃうタイプなんだ。写真映え的には泣いた方がいいんだろうけどね。でも、ただただ幸せで、その瞬間を楽しんでた。
前にも言ったけど、僕にとってこの場所がすべての始まりだった。自分のグランドスタンドもあって、レース前にふと思ったんだよ。「今日誰かが勝つなら、たぶん自分が一番チャンスがある」って。
普段はレース前にそんなふうにポジティブになれるタイプじゃないけど、今日はなぜか期待してた。そして本当に速さもあった。これで僕も過去の名ドライバーたち――ほとんどはルイスだけど(笑)――が勝ってきたこの地で名を連ねることができた。本当に誇らしいし、ファンのためにも嬉しい。
最後の2周、スタンドを見上げたら、みんな立ち上がって応援してくれてて――あれは特別な瞬間だった。僕らしか体験できない、ものすごく自己中心的で(笑)、でも人生で最高の瞬間のひとつだった。
Q:ランド、おめでとうございます。新しいフロントサスペンションの効果についてですが、2勝を挙げた今、どれくらい自信がつきましたか?
ノリス:君の方が僕よりポジティブだね(笑)。まあ、悪くはないよ。悪くなるよりはいい。
でも正直、みんなが話しすぎな気もしてるんだ。効果があるとしても、せいぜいコンマ0秒いくつとか、コンマ00いくつってレベル。数値的には何とも言えない。チームが「感触が良くなるかもしれない」って言ってくれて、それを信じて走ってるだけなんだ。
もちろん2勝してるし、カナダでも速かった。でもそれが全部サスペンションのおかげとは思ってない。僕自身の努力、トラック外での準備、チームとの連携、そういう積み重ねの方が大きいと思ってる。もし前の仕様でも同じ結果が出せたかもしれないし、正直分からないんだよ。
だから、いつか同じ条件で比較テストできたらいいけど、たぶんあまり差は感じないかもね。ここ数戦は良い感触があるけど、それもマシンの改善というより、自分がその不十分な感触をうまく扱えるようになってきた結果かもしれない。もちろんアップグレードの効果もあるけどね。先週は20秒差、今日は30秒差で勝ったわけだから、マシンはかなり良い。でも、やっぱり僕の努力の成果でもあるし、両方がうまく噛み合った結果だと思ってる。
Q:オスカーに質問です。ペナルティ消化後、チームにポジション交代をリクエストしましたか?
ピアストリ:うん、一応聞いてみたよ。どうせ答えは分かってたけどね(笑)。ほんのわずかな希望に賭けて聞いてみたけど、やっぱりダメだった。
Q:ニコに。今日の結果で、雨のドイツGPで表彰台を逃したあの時のことを思い出しましたか?
ヒュルケンベルグ:思い出したよ。でも、今日の方がいいね。
Q:オスカーに。チームの対応には納得していますか? そして今回の悔しさが、今後のチャンピオン争いに向けた転機になると感じていますか?
ピアストリ:チームの対応には何の問題もないと思ってる。ランドは何も悪くないし、ポジションを入れ替えるのはフェアじゃなかったと思う。だから、それでいいんだ。
今回のことがチャンピオンシップに大きな影響を与えるとは思ってない。でも、今日は自分のやるべきことはすべてやったと思ってる。その気持ちがあれば十分だし、今日の悔しさは今後の勝利につなげていくつもりだよ。
Q:オスカーに。今回の裁定では「マックスが衝突を避けるための行動をとらざるを得なかった」と書かれていましたが、リスタート時の感覚として、そこまでだったと思いますか?
ピアストリ:いや、彼が僕を避けなきゃいけなかったとは思ってない。むしろ1回目のリスタートの方がよほど大変だったと思うし、カナダのときの方がよっぽど避けてたんじゃないかな。正直、混乱してる。
カテゴリー: F1 / F1イギリスGP / F1ドライバー