アストンマーティンF1を支える“ストロール資金”に限界説 中国メーカー参入の現実味

2026年シーズンのアストンマーティンは、トラック上でも深刻な苦戦が続いている。
ホンダ製パワーユニットの出力不足や振動問題に加え、レース完走すら難しい状況が続き、フェルナンド・アロンソとランス・ストロールはコーナー区間で意図せずバッテリーを温存してしまうほどの性能不足に直面している。
だが、本当の危機はサーキットの外側にある。
8度目の“緊急資金注入”で広がる不安
英テレグラフ紙によると、ローレンス・ストロール陣営は最近、アストンマーティンに追加で5000万ポンド(約106億円)を投入した。上場企業化以降、これで8回目の“緊急資金注入”となる。
ストロールは2020年の参画以降、事実上アストンマーティンを個人資金で支えてきた。さらに近年は、エイドリアン・ニューウェイ、エンリコ・カルディレ、そしてアウディF1のジョナサン・ウィートリー獲得など、大規模な投資を続けている。
しかし、その負担は想定を超え始めているとされる。
報道では、共同投資家の間で「このプロジェクトは本当に成立するのか」という疑念が広がっており、“ローレンス・ストロールが撤退する可能性”まで噂され始めている。
株式市場でも状況は厳しい。アストンマーティンの時価総額は約4億3000万ポンド(約912億円)まで低下し、一部では「事業継続性そのもの」に疑問符が付けられているという。

ジーリーが“最有力候補”として浮上
こうした中で名前が浮上しているのが、中国自動車大手ジーリーだ。
ジーリーは現在、アストンマーティン株の17%を保有しており、これまでも同社の資金調達を支援してきた。関係者の間では、仮にストロールが撤退した場合、既存株主の中で最も買収に動きやすい存在と見られている。
もし実現すれば、中国メーカーによる本格的なF1チーム所有という新時代が到来する可能性がある。
さらに、FIA会長モハメド・ビン・スライエムが「中国メーカーによるF1参戦を望んでいる」と公言していることも、この流れを後押ししている。
BYDも水面下で接触か
興味深いのは、アストンマーティンに関心を示しているのがジーリーだけではない点だ。
BYDもF1パドック内で接触を進めているとされ、アストンマーティン、あるいは別チームを通じた参戦ルートを模索しているとの見方が出ている。
特にレッドブル陣営は、レーシングブルズ売却の可能性を完全には否定しておらず、BYDやジーリーと接触したとの報道も浮上している。
つまり現在のF1では、「中国メーカーが既存チームを買収して参戦する」という構図が現実的なシナリオとして語られ始めている。
アストンマーティンF1は“未来への投資”だったはずが…
本来、アストンマーティンF1プロジェクトは、ニューウェイ加入、新ファクトリー、新風洞、ホンダとのワークス提携によって、“次世代王朝”を築く計画だった。
しかし現実には、2026年シーズン序盤の時点でマシン性能、PU性能、財務状況のすべてが不安定化している。
しかも、F1全体では2028年以降のレギュレーション変更やV8回帰議論も進行中であり、巨額投資の回収シナリオそのものが不透明になりつつある。
その状況で、中国メーカーが“既存チーム買収”という近道を狙うのは極めて合理的な動きとも言える。
アストンマーティンの危機は、単なる1チームの経営問題ではなく、F1の資本構造そのものが変化し始めている兆候なのかもしれない。
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