マックス・フェルスタッペン、エストリルでメルセデスAMG GT3を極秘テスト

このテストが注目を集めた理由は、フェルスタッペンが率いるVerstappen.com Racingの近年のGT活動にある。2025年、同チームはGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(GTWCE)エンデュランスにアストンマーティン・ヴァンテージAMR GT3エボで参戦していた。
ティエリー・フェルミューレンとクリス・ルルハムがハリー・キングとともに耐久レースを戦い、スプリントではエミール・フレイ・レーシングのフェラーリ296 GT3をドライブしていた。
一方、Verstappen.com RacingのGTWCEエンデュランス参戦は、2 Seas Motorsportとの協力体制で行われており、このチームは独自にメルセデスAMG GT3エボを走らせていた。その流れから、2025年シーズン終了からわずか1週間後、雨に濡れたエストリルでフェルスタッペンがメルセデスAMG GT3エボをテストした背景には、明確な理由があると見られている。
関係者の話によれば、Verstappen.com Racingは2026年にGTWCEエンデュランスでメルセデスAMG GT3エボを採用する見通しで、わずか1年でアストンマーティンからスイッチする可能性が高いという。
ドライバー編成についてはまだ流動的だ。2025年のVerstappen.com Racingは、フェルミューレン(ゴールド)、ルルハム(シルバー)、キング(ゴールド)という構成でゴールドカップに分類されていたが、2 Seasのメルセデスはブロンズカテゴリーだった。FIAのドライバー分類制度では、ブロンズからプラチナまで段階があり、ラインアップの強さによって参戦カテゴリーが決まる。
エストリルのテストには、メルセデスのファクトリードライバーであるジュール・グーノンも参加していた。プラチナライセンスを持つ彼が加われば、参戦カテゴリーは一気にプロクラスとなる。さらに、2026年にルルハムがシルバーからゴールドへ昇格する予定であることや、ジェネシスからWECハイパーカークラスに参戦予定のダニエル・フンカデラの名前も候補として挙がっている。フンカデラは、フェルスタッペンのシムレースチーム「Team Redline」でバーチャルレースに出場した経験を持つ旧知の仲だ。
max verstappen today in a rainy Estoril testing gt3
— Ana (@maxvcalloway) December 16, 2025
driving a Mercedes pic.twitter.com/jHKaSYGYO8
では、なぜフェルスタッペン陣営はメルセデスAMGを選ぶのか。その背景には、ニュルブルクリンク24時間レースへの構想がある。ルルハムはHWAが開発したメルセデスAMG GT3を高く評価しており、フェラーリ296 GT3よりも扱いやすいと感じているという。特にメルセデスは、GT3の中でも最も寛容なマシンとされ、世界屈指の難コースであるノルドシュライフェでは大きな強みとなる。
ただし、GTWCEで協力する2 Seas Motorsportが、そのままニュルブルクリンク・プログラムを担う可能性は低い。シルバーストーン拠点の同チームには、全長25.378kmのノルドシュライフェでの経験がないためだ。代わって有力視されているのが、ドイツ・アルテンダイツを拠点とするウィンワード・レーシングである。DTM参戦実績を持つこのチームは、2026年にニュルブルクリンク24時間へ初挑戦する可能性があり、メルセデスAMGの豊富なノルドシュライフェ知見を活用できる点が評価されている。エミール・フレイやフェラーリが同地域のスペシャリストでないことも、この見方を後押ししている。
フェルスタッペンが最近AMG幹部と会談していた事実も確認されているが、それがGTWCEプロジェクトの話だったのか、あるいはニュルブルクリンク24時間への布石だったのかは不明だ。ただ、2 Seasが用意するメルセデスAMG GT3が議題に上ったこと、そしてグーノンがテストで基準ドライバーを務めていることから、フェルスタッペンがフロントエンジンGT3への適応を急いでいるのは確かだ。
問題はスケジュールである。フェルスタッペン自身、シンガポールGPの際に「多くの要素次第だ」と語り、2026年の新F1レギュレーションによる忙しさとGT3プログラムの両立が鍵になると明かしていた。彼はこれまでノルドシュライフェを3回走っているが、いずれもフェラーリであり、メルセデスAMG GT3ではまだ経験がない。
さらに、ニュルブルクリンク24時間(5月14〜17日)はF1と直接重ならないものの、NLSの全準備レースと24時間予選はF1週末とバッティングしている。主催者のADAC Nordrheinは、予選イベントの日程変更を否定しており、フェルスタッペンが参加できる可能性はNLSの限られたラウンドに絞られる。
関係者によれば、フェルスタッペンは少なくとも3月14日のNLS開幕戦に出場できなければ、24時間レース参戦を見送る意向だという。しかしこの日はF1中国GPと重なる。NLS側は当初、日程変更はないとしていたが、最近になって柔軟姿勢を示し始めた。シリーズ代表のマイク・イェーガーは、過密日程の緩和を理由に調整の余地を認めつつも、フェルスタッペン個人のためではないと強調している。
それでも、フェルスタッペンがNLSへの強い関心を示しているのは事実だ。カレンダー調整が実現すれば、メルセデスAMG GT3でのニュルブルクリンク24時間参戦は、現実味を帯びた選択肢となる可能性が高い。
カテゴリー: F1 / マックス・フェルスタッペン / レッドブル・レーシング
