MotoGP:ヤマハ 2021年 第16戦 エミリア・ロマーニャGP 決勝レポート
Monster Energy Yamaha MotoGPのファビオ・クアルタラロが第16戦エミリア・ロマーニャGP決勝を4位でゴールし、チャンピオンシップのリードを65ポイントに拡大。シーズン終了まで2戦を残してタイトル獲得が決定した。

PETRONAS Yamaha Sepang Racing Teamのバレンティーノ・ロッシはキャリア最後となるホームMotoGP、第16戦エミリア・ロマーニャGPで10位を獲得した。チームメイトのアンドレア・ドビツィオーゾは13位でポイントゲット。

クアルタラロ、エミリア・ロマーニャGPでチャンピオン決定
クアルタラロは強い精神力で、グリッド15番手から4番手まで挽回。ライバルたちに絶え間なくプレッシャーをかけ続けることで2021MotoGPの栄冠を手中にした。チームメイトのフランコ・モルビデリもレース前半は真のポテンシャルを見せたが、後半になると疲れが見え始め、14位でチェッカーを受けた。

クアルタラロはグリッド15番手から慎重にスタートを切り、オープニングラップのいくつかのコーナーを17番手で抜けた。しかしそのあと素早くチャージを開始。6ラップ目にはトップ10まで浮上した。

ポイントのひとつひとつが非常に重要であることを認識しながらプッシュし続けるクアルタラロ。A・リンス(スズキ)の背後につけ、ともにJ・マルティン(ドゥカティ)をパスすると、さらに上位を目指していく。13ラップ目には5位争いに加わり、モルビデリとL・マリーニ(ドゥカティ)をパス。残り10ラップの第4コーナーではリンスもとらえて6番手へと浮上した。

後半戦の走りは、1か月前に同サーキットで行われたサンマリノGPと同様に見事なものだった。一気にA・エスパルガロ(アプリリア)との距離を詰めると間もなく抜き去り、素早くリードを拡大していった。

この時点で5番手。しかしトップまではまだ遠く、チャンピオン争いは次回ポルティマオまで持ち越されるかに思われた。ところがこのあと大逆転劇が展開される。残り5ラップでF・バニャイア(ドゥカティ)とM・オリベイラ(KTM)が転倒リタイアとなり、クアルタラロはいきなり3番手へ浮上。そのまま表彰台獲得とともにタイトルを決めるべくプッシュし続けたが、E・バスティアニーニ(ドゥカティ)が背後に迫ってきたため、クアルタラロは4位でゴールすることを選択した。トップとの差は12.775秒。これによりタイトル獲得が決定した。

一方のモルビデリはグリッド6番手から好スタートを切り、懸命の走りでポジションをキープ。4ラップ目にJ・ミラー(ドゥカティ)の転倒があり、自動的に5番手に浮上した。しかしこのあと少しずつ上位との差が開いてくると、安定したペースを維持することに意識を転換。

膝の疲労もあり、11ラップ目でエスパルガロを先行させたあとはポジションキープが難しくなり、最終的には14位まで下げてチェッカーを受けた。トップとの差は42.830秒だった。

この結果、クアルタラロはチャンピオンシップ・ポイントを合計267ポイントまで伸ばし、2戦残して65ポイントをリードしたためチャンピオンが決定。モルビデリは怪我から復帰後、初めてとなるポイントを獲得し、合計42ポイントでランキング17位につけている。Monster Energy Yamaha MotoGPは合計364ポイントでチーム・ランキング・トップに返り咲き、ヤマハは合計295ポイントでコンストラクターズ・ランキング2位をキープしている。

次回、第17戦は11月5日~7日、ポルトガルはアルガルベ・インターナショナル・サーキットで開催される。

ロッシ、最後のホームGPを10位でフィニッシュ
前日までは雨続きだったミサノ・ワールドサーキット・マルコ・シモンチェリ。決勝はウイーク初めてとなるフルドライ・コンディションで行われ、合計8台が転倒リタイアとなるなか、ロッシはミスなくスマートに走り切った。

グリッド23番手からスタートしたあと少しずつポジションを上げ、13ラップまでにポイント圏内まで浮上。そして最終ラップではゴールラインまで激しいバトルを披露し、見事10位を獲得した。そのあとミサノで最後となる感動的な1ラップを走行し、イメージカラーの"イエロー"に身を包んだ大勢のファンとともに功績を祝った。

チームメイトのドビツィオーゾはグリッド21番手からスタート後、23番手に下げてオープニングラップを終了。ロッシとしばらくバトルを楽しんだあと、少しずつ離された。終盤でコース・リミット越えによるロングラップ・ペナルティを課されたが、13位でチェッカーを受けてポイントを獲得している。

ロッシとドビツィオーゾは2週間後、ポルトガルはアルガルベ・インターナショナル・サーキットで第17戦に臨む。

Monster Energy Yamaha MotoGP
ファビオ・クアルタラロ(4位)
「今日のことがまだ信じられないというのが正直な気持ちです。とにかく、とてもいい気分です! 決して簡単なレースではありませんでした。序盤でミラーが転倒しましたが、私はそれをマルク(マルケス)だと思っていました。そのあと大型モニターを見たら、マルクとペコが競り合っていました。それから赤いマシンが転倒するのが見えたのです。あの時はただ"ペコが無事でよかった"と思っていました。最後は表彰台獲得を目指しましたが、すでにフロントの状態が悪くなっていたため抑えきれませんでした。でも大丈夫。今日、私は世界チャンピオンになったのです。今はただ、チームのみんなとともにこの瞬間を楽しみたいです」

フランコ・モルビデリ(14位)
「今回のすべてのパフォーマンスに満足しています。私は大きく前進できたと思います。マシンのフィーリングも、そして私自身の怪我の状態も良くなってきているので、レース前半はハイペースで走ることができました。でもこのペースを最後まで維持するのはまだ難しく、後半はスピードを落としてのんびり行くしかありませんでした。それでも大幅に前進しておりハッピーです。チームとファビオ(クアルタラロ)に"おめでとう"と言いたいです。彼らは今年、とても素晴らしい仕事をしました。今シーズンのファビオは本当に速く、まさに完璧でした。彼が本当の一番だったので、チャンピオンを獲得しました。そして彼とチームがこの素晴らしい結果を手にしたのです」

マッシモ・メレガリ(チーム・ディレクター)
「まず初めに、MotoGP世界選手権のチャンピオンになるという夢を実現したファビオを心から祝福します。今日の非常に緊張した状況を最後までしっかりコントロールしたことが、彼が素晴らしいチャンピオンであることを、より一層、強調し、またその成長ぶりを示しています。プレッシャーに屈することなく、グリッド15番手という困難に立ち向かい、4位でチェッカーを受けてタイトルを獲得したのです。私はまた、この場を借りてバニャイアの力強いタイトル・チャレンジを称賛し、祝福したいと思います。彼に対してはリスペクトの気持ちしかありません。怪我がなくて本当に良かったと思っています。私たちとしてはこのような形でのタイトル獲得は望んでいませんでしたが、それによってファビオとチームの素晴らしさが損なわれることはありません。チーム・メンバーとヤマハ・エンジニアの貢献もたたえたいと思います。フリープラクティスでドライ走行がほとんどできないまま、決勝でいきなり挑むのは通常でも簡単ではありません。その上に今日はチャンピオンシップ・タイトルがかかっていたのです。このような厳しい状況のなかでもチームが一丸となって戦ってくれました。このタイトルは彼らの貢献によるところが非常に大きく、早く祝福したい気持ちでいっぱいです。最後に、フランキー(モルビデリ)にも"よくやった!"と伝えたいと思います。前半はとくに素晴らしく、未だ怪我が完治していない状態では決して簡単なことではありません。27ラップをそのまま走り切るのが難しいことはわかっていましたが、前半ではモータースポーツのトップライダーとしてのポテンシャルを見ることができ、とても良かったと思っています。怪我が完治し、フルレースを全力で戦えるようになるのは時間だけの問題です。彼はまもなく、本来いるべき場所に戻ってくるでしょう。次回からはプレッシャーから解放され、いくらか'楽な戦い'になるでしょう。しかしながらチームおよびコンストラクターのタイトル獲得のために、引き続きトップを狙っていきたいと思います。最高の形でシーズンを終えられるようトライし続けます」

PETRONAS Yamaha Sepang Racing Team
バレンティーノ・ロッシ(10位)
「グリッド最後尾からのスタートにもかかわらず、非常にいいレースができたので満足しています。ペースが良く、マシンとタイヤのフィーリングも上々だったので、思い通りにプッシュして何度かポジション争いも展開し、最後はトップ10を獲得することができました。コースを埋め尽くすほどの大勢のファンに、最高の形で"Ciao(チャオ)"のあいさつができたと思います。彼らが素晴らしい雰囲気を作ってくれたおかげです。チェッカーフラッグを受けたあとも、うれしい瞬間を楽しむことができました。ふだんはあまり、サプライズは好きではありませんが、サーキットのいたるところに"Grazie Vale(ありがとう、バレ)"を見たり、そのほかにもいろいろなお祝いの場面を用意してもらったりして、とても感動しました。ファビオは常に強く、ミスもおかしませんでした。だからこそのタイトル獲得です。心から祝福します」

アンドレア・ドビツィオーゾ(13位)
「ウエット・コンディションに苦しめられ、昨日はまったく速く走れず、非常に厳しいウイークでした。今日はドライになり、ポジションではなくペースでは、もう少し上を目指せると思いましたが、スタート直後からあまりフィーリングが良くありませんでした。今回はあまり前進できませんでしたが、最悪のコンディションと闘ったことは今後のマシン改善においても役に立ってくれるでしょう。全体的には満足していません。でも次回ポルティマオではフィーリング向上を目指していきます。ファビオは驚くべきことをやってのけました。素晴らしい走りを見せ、シーズンを通して安定していました。彼のタイトル獲得は私にとっても非常にうれしく、大きな"おめでとう"を贈りたいと思います」

ラズラン・ラザリ(チーム代表)
「9ポイントを加算し、チーム・ランキングをひとつ上げることができました。イタリアで最後となるバレンティーノの"ダンス"に感動し、彼の最後のホームレースに立ち会えたことに喜びを感じています。一方でドビツィオーゾはかなり苦戦しましたが、ポイント獲得と健闘してくれました。ファビオのタイトル獲得を祝福するとともに、前の2年間で彼の旅に同行できたことを誇りに思っています。Monster Energy Yamaha MotoGPとヤマハにとっても素晴らしい結果となりました。ファビオは今後も強力なライダーであり続けるでしょう。シーズンはあと2戦残っているので、私たちもまたポイント獲得を目指していきます」

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / MotoGP