MotoGP:スズキ 2021年 第10戦 スティリアGP 決勝レポート
多くのドラマを生んだスティリアGPでミルが2位表彰台を獲得
5週間の夏休みが明け、2021年MotoGP世界選手権の後半戦がオーストリア・レッドブルリンクでスタートした。午前に降った雨は上がったものの、山に囲まれたサーキット上空には雨を含んだ暗い雲が広がり、いつ降り出してもおかしくない天候の下、午後2時に26,000人の観客に見守られてMotoGPの決勝が幕を開けた。

チームスズキエクスターのジョアン・ミルとアレックス・リンスは新たにライドハイトアジャスターを搭載したGSX-RRで揃って好スタートを決める。2列目5番手からスタートしたミルはすぐに2番手に順位を上げるが、2周目にワイドラインになり5番手までポジションダウン。しかしその後すぐに4番手に上がる。リンスも13番手グリッドから8番手まで順位を上げ、さらにオーバーテイクを狙おうとしていたところでダニ・ペドロサ(KTM)とロレンソ・サバドーリ(アプリリア)2選手の転倒により赤旗提示となりレースが中断した。その後コース整備によりライダー達はピット待機を強いられる。

コース整備に長い時間を要し、かなり遅れてレースが再開。スズキのふたりのライダーはその間も集中力を欠くことなく、クイックスタート形式で行われた2度目のスタートでも共に好スタートを決め、ミル3番手、リンス8番手でオープニングラップを終える。その後ミルは2番手にひとつポジションを上げ、数周ファステストラップを記録しながらトップを走行するホルヘ・マルティン(ドゥカティ)と優勝を賭けた一騎打ちに。一方、スタートで大きくポジションを上げたリンスだが、フロントブレーキトラブルにより徐々にポジションダウン。しかし終盤に再びペースを上げて数人のライダーをオーバーテイクし7位でレースを完走した。

トップを走行するマルティンの約1秒後方を付かず離れず走行するミルは終盤の3コーナーでオーバーテイクを仕掛けようとするが失敗。トップとの差が僅かに広がり、ミルは優勝争いを断念。2位でチェッカーを受けた。ミル、リンスはそれぞれランキングでポジションを1つ上げ、ミル3位、リンス13位に。またチームランキングも4位に上がった。

佐原伸一 プロジェクトリーダー&チームディレクター
「今週我々は新しいリヤデバイスシステムを初めて投入し、それの助けもありジョアンは表彰台を獲得することができました。非常に短い期間でこれを開発してくれたファクトリーのエンジニアには大きな感謝を述べたいと思いますし、またそれを即座に使いこなして素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたジョアンには心からおめでとうと言いたいです。アレックスもこの新しいシステムを使ってさらに安定したラップタイムを刻めるようになっているので、同じサーキットで行われる来週末のレースではふたり揃って表彰台に立つことができるようさらに頑張りたいと思います。」

河内 健 テクニカルマネージャー
「今日は総じて良い結果だったと思います。ジョアンはあとほんの少しというところで残念ながら優勝を逃してしまいましたが、2位というのは良い結果だと思っています。非常に短い期間で新しいアイテムを完成させてくれた日本のスタッフに感謝しています。一方アレックスですが、7位という結果は決して彼のポテンシャルを表している順位とは思えないので非常に残念ですが、来週また同じサーキットでもう1戦あるので、次こそふたりのライダーに表彰台に上がってもらえるよう今週末のデータをしっかり分析し、さらに用意周到な体制で臨みたいと思います。」

ジョアン・ミル
「厳しいレースだったね。決勝はほぼずっとホルヘ(マルティン)を追いかける形になったけど、彼のペースが速くて安定していたから容易ではなかった。終盤になんとか追いつこうとちょっと無理をしたらミスをしてギャップがさらに広がってしまい、その後はもう追いつくことができなかったよ。今日のホルヘの走りは本当に素晴らしかったし、素直におめでとうと言いたいね。優勝は逃してしまったけど2位という結果には満足しているし、リヤデバイスをサマーブレイクの間にしっかりと完成させてくれたファクトリーとチームの仕事に本当に感謝している。デバイスの効果は明らかだったし、加速が良くなってマシンのパフォーマンスが上がったことで、ここから先のレースでさらに良い戦いができる自信も持てるようになった。夏休み明け最初のレースで表彰台を獲得できたのはとても気分が良いし、来週のレースも楽しみでならないよ。」

アレックス・リンス
「今日は良い面と悪い面の両方が混在したレースだったよ。一番問題だったのはフロントブレーキで、ハードブレーキングをしなくてはいけないところでうまく走ることができなかった。周回を重ねていくうちに少しずつ慣れていったのと、自分でなんとかすることができるようになってレース中盤からはペースを少し上げることができたけど、マシン自体はトップグループで走れるポテンシャルを十分持っているから、来週末に向けてセットアップをもう一度見直したいと思っている。来週同じサーキットでもう一度レースできるのはその見直しの検証もできるし、もう一度トライして結果に繋げられるチャンスもあるわけだから嬉しいよ。ライドハイトアジャスターの効果は実感できているし、加速が良くなったことでマシンも一歩前進したイメージがある。来週は金曜日から搭載してしっかり走り込むよ。」

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カテゴリー: F1 / MotoGP