マクラーレンF1、常識を覆すフロントサスペンションでMCL40が衝撃デビュー
マクラーレンMCL40がついに実走行を開始し、初日からパドックの視線を集めた。ピーター・プロドロモウ、ロブ・マーシャル、ニール・ホルディというテクニカル・トリオが手がけた新車は、とりわけフロントサスペンションで従来の常識を覆す設計を採用している。かつてマクラーレン自身が築き、他チーム、フェラーリまでもが追随してきた流れを、自ら陳腐化させるような一手だ。

バルセロナでのシェイクダウンに姿を現したMCL40は、革新性とリスクを併せ持つプロジェクトであり、その成否を測る最初のステップに踏み出した段階と言える。

フロントサスペンションの大胆な再設計
新型MCL40で最も目を引くのがフロントサスペンションだ。ここ数年採用してきたプルロッドを捨て、2026年レギュレーションとフロントウイング思想に適すると判断したプッシュロッドへと回帰している。

しかし、真に革新的なのはロッド方式そのものではない。上側ウィッシュボーンは従来同様に強く傾けられ、後方側を低く配置することで、フロアやラジエター開口部へと気流を導く役割を担う。その一方で、MCL40ではさらに後方かつ低い位置でシャシーに接続される要素が追加された。

それが、極端に後方へと延ばされた下側後部アームだ。このアームはプッシュロッドの取り付け位置付近でハブと結ばれ、前側の2本のアームと比べて高さ・長さともに大きくずれた配置となっている。結果として、下側のリンクがほぼフロア前縁に届くほど後方へ伸びる、マルチリンク的な構成が成立している。

短縮ホイールベースを最大限に活かす発想
2026年レギュレーションではホイールベース上限が3600mmから3400mmへ短縮され、前後輪の距離が20cm縮まった。これによりフロントタイヤが車体中心に近づき、タイヤ乱流の処理は難しくなる一方で、サスペンションアームを使った気流制御の重要性は増している。

マクラーレンはこの点を最大限に突き詰めた。後方へ引き延ばされた下側アームは、フロントウイングから流れてくる空気を積極的に整流し、フロアへと導く役割を担う。その代償として、サスペンションの運動学的自由度や設計難易度は大きく跳ね上がるが、それでも踏み込んだところにMCL40の性格が表れている。

特にシャシー設計の観点では、この特殊なフロントサスペンションを成立させつつ、厳格化されたクラッシュテストをクリアする必要があり、開発難度は相当高かったはずだ。

マクラーレン F1

ドライバーの感触が成否を左右する
技術的に見れば、MCL40のフロント周りは極めて攻めた構成だが、最終的な評価はドライバーのフィードバックに委ねられる。特に重要なのは、フロントタイヤの接地感だ。

2025年、ランド・ノリスはフロントの挙動をつかみにくい場面があったとされており、今回の設計変更がその点を改善するのか、それとも別の難しさを生むのかは注目点となる。

フロント空力とアクティブエアロの考え方
マクラーレン首脳陣によれば、MCL40の空力仕様は開幕戦オーストラリアGPに近い形であり、フェラーリのように大幅な初期アップデートを前提とした構成ではない。

フロントウイングは外側で強く荷重を稼ぐデザインとなっており、サスペンションと連動して狙った気流を作り出す思想がうかがえる。エンドプレート外側には、タイヤ乱流を抑制するための追加フラップも確認できる。

アクティブエアロの使い方についても、トップチーム間で解釈の違いが見え始めている。マクラーレンのフロントウイングは強いスプーン形状を描くのに対し、レッドブルはより直線的なプロファイルを選択しており、各チームがフロント空力を車全体の流れの起点としてどう位置づけているかが浮き彫りになっている。

冷却とパッケージングの継承と進化
冷却系に目を向けると、2025年に高く評価された基本思想は踏襲されている。エアスクープは楕円形を維持し、パワーユニット前方に一部ラジエターを配置するレイアウトを示唆する。

一方でサイドポッド開口部はより扁平化され、従来のP字型から変更された。フロアやサイドポッドの詳細は今後の公開を待つ必要があるが、レンダリングからは、上部の流れを後方へ強く導く“絞り込まれた”コンセプトが引き継がれているように見える。

革新は保証ではないが、姿勢は明確
現時点で確認できるのは主にフロント周りに限られるが、それだけでもMCL40が極めて意欲的なマシンであることは明らかだ。革新性は成功を約束するものではなく、ライバルもまた興味深い解決策を示している。

それでも、失敗のリスクを承知の上で踏み込む姿勢こそが、マクラーレンが世界王者に返り咲いた理由を物語っている。仮にメルセデス製パワーユニットの優位性が事実だったとしても、タイトルを奪う側にとって、マクラーレンは依然として最も手強い存在であり続けることになりそうだ。

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カテゴリー: F1 / マクラーレンF1チーム / F1マシン