マクラーレンF1、ノリスとピアストリの接触後に車高設定の“保守的説”浮上

クラヴィッツによると、マクラーレンはスプリントで両マシンがリタイアしたため、翌日の決勝に向けた走行データを十分に得られなかった。
結果として、マシンが車検で失格になるリスクを避けるため、通常より高めの車高設定にせざるを得なかったという。
クラヴィッツ:データ不足で車高を上げざるを得なかった「スプリントでオスカーがニコ・ヒュルケンベルグと接触してノリスに当たったことがすべての原因だった」とクラヴィッツは語った。
「2台ともスプリントを走れなかったことで、マクラーレンはライドハイトの最適値が分からなくなってしまった。つまり、どこまで地面に近づければ合法的にダウンフォースを稼げるか、そのバランスをつかめなかった」
「だから彼らは安全策を取るしかなかった。マクラーレンは車高を少し上げてマージンを確保した。その分だけパフォーマンスが犠牲になった」
クラヴィッツはさらに、他チームとの対比をこう語る。
「レッドブル?マックスはスプリントに勝った。つまり、彼らは完璧に理解していた。フェラーリもメルセデスも同じだ。だがマクラーレンだけは余裕を持たざるを得なかった」
ノリスは2位、ピアストリは5位も“勝機を逃す”
マクラーレンは高温のオースティンで有利と見られていた。MCL39はタイヤの熱劣化に強く、路面温度の高いサーキットで本来なら優位性を発揮できるはずだった。
しかしスプリント1周目の接触で貴重なロングランデータを失い、決勝ではノリスがフェルスタッペンに次ぐ2位、ピアストリが5位にとどまった。チームは結果的に「安全策」が裏目に出た格好となった。
グラウンドエフェクト時代の難題:車高設定と失格リスク
現在のグラウンドエフェクトカーでは、車体下の空気流によるダウンフォースが大きな割合を占めている。車高を下げすぎると空力効果は高まるが、フロア下のスキッドブロック(通称「プランク」)の摩耗が進み、レギュレーション違反のリスクが生じる。
2023年のアメリカGPでは、ルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレールがプランク摩耗で失格。さらにハミルトンは2025年シーズン第2戦の中国GPでも同様の理由で失格処分を受けている。
このため各チームは以降、車高を高めに設定してリスクを回避する傾向にある。特にフェラーリF1では空力負荷を抑えるため、ロングストレートでは「リフト・アンド・コースト(惰性走行)」を指示するなど、車体の底打ち対策を強いられている。
マクラーレンの“保守策”が招いた代償
今回のマクラーレンのケースは、短縮週末+スプリントフォーマットにおける典型的なリスクを浮き彫りにした。1回のミスがデータ欠如を招き、その結果としてセットアップ全体が保守的にならざるを得なかった。
結果論としては、スプリント完走で得られる路面データの有無が、レースペースやピット戦略にまで影響する形となり、フェルスタッペンが理想的なライドハイトを掴んでいたことが勝敗を分けた。
次戦メキシコではさらに標高が高く、空気密度の低下がライドハイト調整に直結する。マクラーレンが再び同様のジレンマに陥らないためには、1回目のプラクティスから確実な走行データを積み上げ、リスクを恐れず攻めたセットアップを選べるかが鍵となるだろう。
カテゴリー: F1 / マクラーレンF1チーム
