ホンダF1 F1プロジェクト経験者を呼び戻し反撃へ「体制は回復できる状態」

ホンダ・レーシング(HRC)のトラックサイドマネージャー兼チーフエンジニアを務める折原慎太郎氏は、以前のF1プロジェクトを経験した技術者を呼び戻し、組織の立て直しを進めていることを明かした。
RacingNews365の独占インタビューで折原氏は、問題が悪化していく過程や現在までの改善状況を詳しく説明。シーズン後半に投入されるアップグレードへの自信も明かした。
「競争力があると思っていました」 想定外だった開幕の苦戦
2026年レギュレーションに合わせて開発されたホンダの新型PUは、アストンマーティンとの新プロジェクトとして大きな期待を集めていた。
しかし実際には、バッテリー由来の激しい振動、信頼性不足、エネルギーマネジメントの問題が重なり、アストンマーティンはシーズン前半をキャデラックと争うほど苦しい状況で過ごした。
エイドリアン・ニューウェイは後に、この振動がフェルナンド・アロンソとランス・ストロールの手に神経障害を引き起こす可能性まで懸念していたことを明かしている。
折原慎太郎氏は、その状況について率直に語った。
「大きな衝撃だったと言えると思います。通常であれば、私たちは競争力があることを期待しています」
「それがF1に復帰した理由でもあります。ですから、自分たちのパフォーマンスが良くないと分かった時は、本当に大きな衝撃でした。ある程度は予想していた部分もありましたが、実際にそうだと分かった時は衝撃でした」
実は1月には異変を察知していた
折原氏によれば、問題はバーレーンテストや開幕戦メルボルンで突然発生したものではなかった。
2025年シーズン終了後から徐々に状況は悪化しており、2026年1月には危機感を抱いていたという。
「状況は突然悪くなったわけではなく、少しずつ悪化していました」
「今年の1月になって、状況が悪化していることに気付きました。昨年はトップコンテンダーではありませんでしたが、ウインターテストのような状態ではありませんでした」
「ですから状況は徐々に悪化していて、年明けには『あまり良いポジションではないかもしれない』と感じていました」
この証言は、ホンダがバルセロナで初めて問題の深刻さを認識したと以前説明していた内容とも一致しており、開幕前から危機的状況だったことが改めて裏付けられた。
振動問題を克服 「誇りに思っています」
その後、ホンダとアストンマーティンは原因究明を最優先事項として開発を進めた。
マイク・クラックは「まず問題を理解することが最優先」と繰り返し説明し、アロンソも前半戦を「学習期間」と表現していた。
その成果が表れたのがハンガリーGPだった。アストンマーティンは大規模なシャシーアップデートを投入し、空力性能と車体バランスを改善。さらにホンダもPU側で振動対策や耐久性向上を進めてきた。
まもなく迎えるオランダGPでは、ホンダも2026年最初のアップグレードを投入する予定となっている。
折原氏はここまでの成果について強い自信を示した。
「冬季テストから現在まで、そしてファクトリーのメンバーが成し遂げたことを誇りに思っています」
「大きな振動の問題は解決しました。そして耐久性とエネルギーマネジメントの面でも大きく前進しました」
「今年ここまで達成してきたことを考えれば、今後についてもかなり自信を持っています」

ザントフォールトでPUアップデート投入へ
ハンガリーGPでは、アストンマーティンが大規模なシャシーアップデートを投入し、空力性能と車体バランスを大幅に改善した。
次戦オランダGPでは、ホンダも2026年最初のADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)を投入する予定となっている。
2026年のPUレギュレーションでは、性能面で基準に達していないメーカーに対し、ホモロゲーション期間中でも一定範囲の性能改善が認められている。
ホンダはこの制度を活用し、内燃エンジンを中心としたアップグレードを投入する計画だ。
経験者を呼び戻し体制も強化
折原氏は、技術体制そのものも強化が進んでいると説明した。
以前、ニューウェイはレッドブル時代を知る経験豊富なホンダのF1エンジニアが数多く離れていたことが、新プロジェクトに影響したと語っていた。
これに対しホンダは、経験豊富な技術者を現場へ呼び戻すとともに、新世代エンジニアも半年間で大きく成長したという。
「今年は、以前のF1プロジェクトを経験した専門家を何人か呼び戻しました」
「また、このプロジェクトで初めてF1に携わった若いエンジニアたちも、冬季テストから前半戦までで多くの経験を積みました」
「ですので、現在の体制はパフォーマンスと信頼性を回復できる状態にあると考えています」
ホンダとアストンマーティンの新プロジェクトは、期待とは程遠いスタートとなった。しかし折原慎太郎氏の証言からは、最大の課題だった振動問題を克服し、組織体制も着実に立て直しつつあることがうかがえる。
オランダGPで投入されるPUアップグレードは、その再建プロジェクトが本格的な反撃へ転じるかを占う重要な一戦となりそうだ。
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