ホンダF1:2021年 第9戦 F1オーストリアGP 決勝レポート
2021年第9戦F1オーストリアGPは、レッドブル・レーシング・ホンダのマックス・フェルスタッペンが圧倒的なペースで3連勝を果たし、ホンダとしては1988年以来の5連勝を飾った。

全員がQ3に進出した予選結果により、ポールポジションのフェルスタッペンと3番グリッドのセルジオ・ペレスがミディアムタイヤ、6番手のピエール・ガスリーと7番手の角田裕毅のスクーデリア・アルファタウリ・ホンダ勢はソフトタイヤでのスタートとなった。

スタート直後はポジションを維持したホンダF1パワーユニット勢だったが、1周目にエステバン・オコン(アルピーヌ)がストップしたことで、セーフティカーが出動。そのリスタートで、ペレスは2番手のランド・ノリス(マクラーレン)に迫るが、ターン4で押し出されてコースアウト。10番手までポジションを落とし、その後ノリスには5秒のタイムペナルティーが科された。

ソフトタイヤのスクーデリア・アルファタウリ勢は、早めのタイヤ交換が必要となり、角田が12周目、ガスリーがその翌周にピットイン。ハードタイヤに交換しますが、角田はピット入口の白線をまたいでしまい、5秒のタイムペナルティーを受けると、ガスリーはピット作業に時間がかかり、どちらもタイムをロスしてしまう。

ミディアムタイヤでスタートしたレッドブル・レーシングの2人は、どちらも32周目にピットイン。フェルスタッペンは順調にリードを拡大する一方で、追い上げを期すペレスはシャルル・ルクレール(フェラーリ)と激しいバトルを繰り広げ、2度の接触を喫する。

この接触の原因を作ったとして、ペレスには2度のタイムペナルティーが科され、合計10秒が加算される。しかし、ペレスは追い上げを続け、53周目にダニエル・リカルド(マクラーレン)をオーバーテイク。このタイミングでピットインしたルイス・ハミルトン(メルセデス)の背後に迫り、4番手を目指して追撃するも、オーバーテイクには至らずチェッカーフラッグに。後方のカルロス・サインツ(フェラーリ)が10秒差以内に入ったことで、6位フィニッシュとなった。

フェルスタッペンはリードを拡大し続け、残り11周、首位の座を万全にした状態で2度目のピットイン。2番手のタイムに1.5秒以上の大差をつけてファステストラップをマークする。後続に17.9秒の差をつけてチェッカーフラッグを受け、ポールポジション、優勝、ファステストラップに全ラップリードを加えた“グランドスラム”を達成した。

スクーデリア・アルファタウリは、両ドライバーともに2ストップ戦略を採り、ガスリーが45周目にピットイン。トップ10圏内を目指して追い上げる。角田はその6周後にピットインするが、ここでもピット入口で白線をまたぎ、2度目の5秒ペナルティーを科されてポイント圏外へ後退する。

ガスリーは前方のリカルド、ルクレールに迫りながら9位でフィニッシュ。2ポイントを獲得した。角田はフィニッシュ後に5秒を加算され、12位が最終結果となった。

今大会の勝利が、ホンダとしてはF1通算84勝目。チャンピオンシップでのリードも拡大し、ドライバーズ部門ではフェルスタッペンが32ポイント差、コンストラクターズ部門でレッドブル・レーシングが44ポイント差をつけて首位に立っている。

今日のレース後の表彰台には、レッドブル・レーシングの計らいで、2019年のオーストリアGPと同様に、田辺豊治テクニカルディレクターが登壇。壇上のフェルスタッペン選手や、スタンドをオレンジに染めたフェルスタッペン選手の応援団とともに喜びを分かち合った。

次戦は2週間後の7月18日(日)に決勝を迎えるイギリスGP。レッドブル・レーシング、ホンダともに拠点を置く地元での戦いで、再びのホームグランプリとなる。また、スプリントレース形式の予選が実施されるなど、新しいフォーマットで初めての大会となる。

田辺豊治(ホンダF1 テクニカルディレクター)
「今日のオーストリアGP決勝は、フェルスタッペン選手がポール・トゥ・ウインで見事に優勝。自身の3連勝とともに、レッドブル・レーシング・ホンダにとっての5連勝を達成することができました。ポールポジションからスタートしたフェルスタッペン選手は、先週に続いて完璧にレースをコントロール下に置き、レッドブルにとってのホームレースで連勝という、また一つ記憶に残る勝利を挙げてくれました。いつもながら素晴らしいパフォーマンスだったと思います。チームメートのペレス選手は接触により10番手までポジションを落とし、ポジション回復のバトルの中で10秒ペナルティーを科される苦しいレースとなりました。最後までプッシュし続け、6位入賞はいい結果だと考えています。スクーデリア・アルファタウリの2台はガスリー選手が6番グリッド、角田選手が7番グリッドという好位置からスタートしたのですが、レースペースが上がらず厳しいレースとなりました。粘り強くレースを続け、ガスリー選手が9位入賞、角田選手はペナルティーもあり12位に終わり、週末を通して見せていた速さからすると、残念な結果になりました。フランスGPからの3連戦を終え、次戦はホンダ、レッドブル・レーシングともに拠点を置く地元、英国シルバーストーンでのレースになります。ここまでのいい流れを維持して、また十分に準備をして臨みたいと思います」

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング・ホンダ)
「ホームのレッドブル・リンクで再び勝利できて最高の気分です。いい戦いができるとは予想していましたが、ここまでとは思っておらず、マシンはまるでレール上を走っているようでした。ドライブしていてとても気持ちよかったですし、どちらのタイヤコンパウンドでも素晴らしいペースでした。プッシュすることができましたし、タイヤのケアも思い通りで、一周ごとに差を広げていけました。他のドライバー同様に先週のレースから学び、セットアップを向上させることでマシンの最適化を進めることができました。どんな言葉で表せばいいのか分からないほど、ドライビングが楽しめましたし、レースウイークもベストな形で進んだので、これを続けられるように願っています。チームのみんなが最高の形で報われたと思いますし、ホンダを代表して田辺さんがポディウムに立ったこともとてもよかったです。また、今週末はファンのみんなも最高でした。グランドスタンドがオレンジ色で染まる光景と、サーキットに人が戻ってきてF1を楽しむ姿を見られたのは素晴らしいことです。これからも多くのレースがありますし、次のシルバーストーンでは、普段と異なるスプリントレースが行われるのも面白くなるはずです。ただ今は、今日のレースの内容がとてもうれしいです。こうした形のレースは頻繁にできるものではないので、みんなで勝利を喜ばなければなりません」

セルジオ・ペレス(レッドブル・レーシング・ホンダ)
「今日のレースにはあまり満足できていません。4周目にランド(ノリス/マクラーレン)をアウト側から抜こうとしたのですが、コース外へ押し出されたことで、僕のレースは終わってしまったようなものです。シャルル(ルクレール/フェラーリ)とのインシデントについては、2度目の方はっきりしていますが、両方とも僕の方が前に出ていたように感じます。状況を見直してみなければいけないと思うので、今はコメントが難しいです。2度目のターン6では、ブレーキングをできる限り遅らせて、(前のマシンが発する)乱気流の中に入りましたが、そのときのタイヤはかなり古いものだったので、リアを失ってしまいました。僕はこうしたレースのやり方が好きではないですし、シャルルのレースに影響を与えてしまい、とても申し訳なく思っています。他のドライバーのレースを犠牲にしてしまった自分自身に満足できません。ただ、マックスやチームのみんなのことはうれしく思っています。レッドブル・リンクでのホームレースでさらにポイントを重ねられたことは素晴らしいです。僕らは前を向き、次のシルバーストーンを楽しみにしています」

ピエール・ガスリー(スクーデリア・アルファタウリ)
「今日は僕らが想像していた以上に厳しい戦いでしたが、ポイント獲得を継続できたのはいいことです。2ストップ戦略の利点がもっとあると考えていましたが、レース序盤で履いたソフトタイヤで、予想以上に苦戦しました。中団勢の中で上位に立てるように戦い続けますが、今日はグリッド以上の順位でフィニッシュできなかったことが残念です。今夜すべてのデータを見直して、大好きなシルバーストーンに目を向けていきます」

角田裕毅(スクーデリア・アルファタウリ)
「今日は僕にとっては難しい一日となりました。レース中のペースに苦しみ、タイヤマネージメントはとても難しかったです。昨日の予選がよかっただけにフラストレーションがたまりますが、気持ちを切り替え、今日の課題を振り返る必要があります。次のシルバーストーンで同じミスを繰り返すことがないようにしていきます」

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / ホンダF1 / レッドブル・レーシング / F1オーストリアGP / スクーデリア・アルファタウリ