ホンダF1 特集
ホンダF1にとってスペック3を投入した2019年のF1フランスGPはターニングポイントとなった。

今年からトロロッソに加えて、レッドブルにもパワーユニット供給を拡大したホンダF1は、マックス・フェルスタッペンが3勝、9回の表彰台、2回のポールポジションを獲得。トロロッソも2回のポールポジションを獲得する成功したシーズンとなった。

開幕戦オーストリアGPではマックス・フェルスタッペンが3位でフィニッシュし、ホンダに11年ぶりとなる表彰台をもたらした。

「まず、復帰して初の表彰台だったので正直もう本当に嬉しくて、開幕前のスぺインのテストから非常にある意味で概ね順調にきてたものですから、前の日の土曜日にクリスチャン・ホーナー(レッドブル F1チーム代表)から『明日は3位は狙えるぞ』と大きく言ってくれたのが力強くて、予定通り、本当にそういう風に運べてのが嬉しかったし、最終的に表彰台をしたから眺めるのが本当に感極まるものでしたね。最高でした」と山本雅史は F1GPニュース でコメント。

そこから3戦はマックス・フェルスタッペンが4位でフィニッシュしていたが、第5戦スペインGPでは、再び3位表彰台を獲得する。

「開幕戦のテストをスペインでやったということも含めて、スペインが第2のスタートみたいなF1でいうとそういう感覚があると思うんですけど、そんな中で3位に入ったということで、改めて前半戦の途中から私もなんとか『モナコで勝利を』と思っていたんですけど、そういった意味ではスペインの3位は良かったと思います」

「スペインGPのカタロニアのセクター3は去年はレッドブルが速くて、『セクター3を制して者がモナコを制する』みたいな流れがあるじゃないですか。そこで言うと、今年のスペインのセクター3はメルセデスが速かった。あの辺からちょっと『モナコに行って大丈夫なのかな』と正直思っちゃったところがありますね。ただ、チームは全力でいい動きをしてくれていたので、モナコもいいレースをしたと思います」

モナコGPでは、結果的にピットストップ時の接触にタイム加算ペナルティを科せられて2位でフィニッシュしながらもリザルトは4位となったが、マックス・フェルスタッペンが抜けないサーキットで終始ルイス・ハミルトンを追い詰めた。

「ハミルトンもマックス・フェルスタッペンがお互いが強くて、このレースを見てもわかるように田辺(豊治/テクニカルディレクター)ともよく話をしているなかで、パワーユニットもまだメルセデス、フェラーリにはホンダはまだ負けているという事実も明快にあそこでわかったと思うですよね。だから、私たちは常に前に進んでいくことが最も重要だったということも改めてモナコで良く見えたレースだったと思います」

第4戦アゼルバイジャンGPで“スペック2”エンジンを投入していたホンダは、第8戦フランスGPで早くも“スペック3”エンジンを投入する。スペック3はジェット部門と共同開発したMGU-Hを投入。ターボとの相乗効果で後の高地のレースでパフォーマンスを発揮することになる。

「ホンダにとってはフランスでスペック3を導入して、もちろん、メルセデス、フェラーリの方も常にアップデートしてきているので、そういった意味で私たちのスペック3に期待値もあったし、そんな中で迎えたフランスが天候も良かったこともあって、ちょっとオーバーヒートの対策がうまくやり切れなかったというのが前半の一番のターニングポイントかなと思います」

「全体的にそうだったんですけど、特にフェルスタッペンにその事象が起きた。パワーが数10馬力が失速しているのを後で田辺と話したときにわかったことで、これの対策をフランスの後でしっかりやり切ったことが次に繋がった」

「やはりキャリブレーションしながら、どうコースに合わせてマッピングしていくかというところが、コースが毎回同じではないので、そういった意味では一戦一戦の積み上げで。今年から2チーム4台体制になってますので、そういった意味ではデータが倍になって、エンジニアが解析する時間も多大になりますけど、データ量が多いことで精度が上がっていく。そういった意味でも今シーズンはエンジニアも大変な思いをしていますけど、一歩二歩前に進んでいると思います。もちろん、パワーユニットを含めて壊さないことがゴールに近づき、いろんなデータが収集できるというのが重要なことだと思います」

そして、レッドブルのホームレースとなった第9戦オーストリアGPでマックス・フェルスタッペンが待望の初勝利をもたらす。

「勝つとは言っていなかったんですけど、レッドブルのホームコースなので、ホンダにとってもいつもよりさらに力を入れて、レッドブルのためにもいいレースをしようという気持ちでサーキットに行ったのは事実です。そういった中でいうと、FP1から非常に流れが良くて、特にレッドブルでいうと、フェルスタッペンもガスリーも非常にいい走りをしてくれていました。そんな中で金曜日の時点でいうと、ネガティブな話がひとつもなかったのが初めてのレースだったんですね。FP2ではご存じのようにフェルスタッペンがクラッシュをして、そんな中でも本当にネガな話がなくて。あと、レッドブルのアップデートも良かったし、すべてにおいて追い風で、結局予選もハミルトンのペナルティでフロントローに行ったりとか、金曜日の時点で夕方に私たちの広報メンバーに『今週勝つからリリース準備しとけ』といったのは事実です」

レースではフロントローからスタートしたマックス・フェルスタッペンがスタートに失敗し、8番手まで順位を落とす。

「アンチストールの介入が入って、そんな中でクラッチが切れてしまったですけど、僕らも見たとき正直『あれ?』ってなりましたね。ただ本当にスタートして8番手まで下がって、あの追い上げていくレースが逆にフェルスタッペンに今まで以上の力を出せたかもしれないし、彼はもちろん自身たちのホームコースだし、そういった意味ではF1ファンにとって非常に面白いレースだったと思います。もしかしてスタートうまくいってたら、本当にああいうレースになったかというのはわからないし、そういった意味ではドラマチックなましてや21歳同士の本当にいいバトルだったし、いちファンとしても楽しいレースだったなと思います」

「正直、今だから言えると思うんですけど、田辺と金・土とミーティングをして、ここはギリギリ攻めていこうと。で、極論言うと『勝つか壊すか』というところまで攻めないと私たちまだまだパワーユニットが足りていないので、そういった意味では『エンジンモード11 ポジション5』というのがあのレースのモードで予選のモードと決勝のレースモードをミックスしたいろんな要素が入っているものなんですね。最後は実はこれ無線であれが流れたんでちょっと話題になりましたけど、最終的に『エンジンモード11 ポジション7』まで使ってるんですね。MAXが7ですね」

レース中にはセンサー不良でパワーが低下するというトラブルが発生していた。

「そういうコメントも田辺に聞くとマックス・フェルスタッペンは明快なんですよね。フィードバックの精度が高いのでホンダのメンバーも対応がしやすい。それが他の3台にも行きわたっていくという非常にいい関係だし、いい環境を作れていると思います」と山本雅史は語る。

『勝つか壊すか』という方向にシフトできた理由として、ホンダジェットの技術を取り入れて、信頼性についての考え方が変わったことを山本雅史は挙げた。

「毎レースいろんな葛藤があるんですけど、昨年まではMGU-Hが非常にリスキーなパーツだと見ていて、そこは開発のLPLをやっている浅木っていうのがいまして、浅木が研究所のいろんな分野から優秀な人材を一回集めて、ホンダでは“ワイガヤ”っていうのをよくやっているんですよ。“ワイガヤ文化”がホンダにあって、そういったところからホンダはホンダジェットもやってますし、そういったところで信頼性の精度を挙げることができました」

「レースの場合は7レース1基のレギュレーションですけど、だいたいマイルでいうと6000㎞くらいを7レースで使うという感じなんですけど、飛行機でいうと何かトラブったらアウトじゃないですか。それくらいの信頼性の違いの考え方の違いも含めて、新たなエンジニアの技術を入れた。それが本当に去年の中盤くらいからMGH-Hがまったく壊れなくなったとか、そういった意味で本当に信頼性が上がってきた。そんな中で初めてフランスがターニングポイントといったところで、熱対策をしてオーストリアで攻めて、マックスがその力をフルに生かしてくれて優勝してくれたというのがホンダにとっても大きな財産になったし、エンジニアにとっても自信になったと思うんですね。それが、そのあとのイギリスとハンガリーまで続いていったんだと思います」

次ぐF1イギリスGPは、パワーサーキットのシルバーストンが舞台ということもあり、大きな期待はしていなかったと山本雅史は語る。

「正直、僕もシルバーストンに行くまでは、パワーサーキットなので、フェラーリとメルセデスとのバトルで、レッドブル・ホンダがそこについていくというカタチになるかなと思っていたんですけど、やはり、オーストリアの優勝たちが田辺たちが一段も2段もエンジニアが強くなってくれて、そういった意味では思った以上のパフォーマンスだった」

「最終的にはベッテルにぶつけられて、いいレースだったと思うんですけど、ちょっと表彰台を逃すという結果にはなりましたけど、でも、パワーサーキットでまたああいうレースができたことがまた次のステップに繋がっていく、もう毎レース毎レース、ホンダのエンジニア、メカニックの人たちが学んでいく、成長していくというのが、今年だと思いますね」

そして、雨で大波乱となったF1ドイツGPでは、マックス・フェルスタッペンが今季2勝目を挙げるとともに、トロロッソ・ホンダのダニール・クビアトが3位でフィニッシュしてチームにとって11年ぶりとなる表彰台を獲得した。

「僕は昨年からトロロロッソと新たに組んで、1年間ある意味今年を見据えた動きをフランツ・トストもしてくれたんで、私はこのドイツはもちろんマックス・フェルスタッペンの優勝も嬉しいですけど、3位、2回目の表彰台なのでこれが本当に嬉しかったですね」と山本雅史は振り返る。

夏休み前最後のレースとなったF1ハンガリーGPでは、マックス・フェルスタッペンが初ポールポジションを獲得する。

「これはもうホンダにとっても、マックスにとっても初めてのポールだったんですけど、前半戦最後のハンガリーで予選の速さっていうのはやっぱりエンジニアとか開発している人にとってはもう『エンジニア冥利に尽きる』っていうんですかね。予選が一番速いっていう証明なので、レースはやっぱり戦略もあるし、天候もそうですけど、いろんな条件が異なってくるので、やっぱりポールポジション獲ったということで、前半戦が終われた。これがやっぱり、ホンダにとっても、エンジニア、メカニックにとっても、開発者にとっても本当に次に繋がる、本当にいいプレゼントをマックスがくれた。そんな感じですね」

「インターネットでボッタスとの比較が出ていたじゃないですか。あれが本当に見事にメルセデスの強いところとフェルスタッペンがうまく走らせているところが出ていて。あと、『うちのパワーユニットが意外といい音するな』とちょっと思いましたね」

その後、ホンダF1はブラジルGPで28年ぶりとなる1-2フィニッシュを達成。山本雅史は、レッドブルがホンダの今年の目標達成を促進した語る。

「スペック1からスペック4まで、計画どおりすべてが順調に進みました」と山本雅史は語る。

「優れたチームであるレッドブルと、優れたフィードバックを提供する優れたドライバーであるマックス・フェルスタッペンのおかげで、開発が促進され、スムーズに進められたと言えます」

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カテゴリー: F1 / ホンダF1