「メーカーの賛成は不要」 F1にV8エンジン復活へFIA会長が強行姿勢

スライエム会長は、2030年の導入を目標に掲げつつ、仮にメーカー側の合意が得られなかったとしても、2031年には「FIAの単独権限」でレギュレーションを強行できると言明。ハイブリッド比率50%を目指す2026年規定がスタートする前から、F1の勢力図を根底から覆す「メーカー支配からの脱却」を宣言した形だ。
2031年は投票不要 FIAが単独で決定可能
スライエム会長はロイター通信に対し、F1が再びV8エンジンへと回帰するのは避けられない流れであると強調した。その言葉に迷いはない。
「それは起きる。時間の問題だ」
特筆すべきは、これまでF1の意思決定を左右してきた「パワーユニットメーカー(PUメーカー)」の合意さえも、今後は必須ではないと明言したことだ。
「2031年にはFIAが単独で実行できる。パワーユニットメーカーの投票は必要ない。それがレギュレーションだ」
現在の規約では、2030年までのルール変更には6メーカー中4社の賛成が必要な「セーフガード」が存在する。しかし、スライエム会長はその期限が切れる翌2031年を“デッドライン”に設定し、法的権限を持ってV8導入を断行する構えだ。
メーカー主導からの転換 F1の意思決定が変わる
なぜ、FIAはここまで強硬なのか。そこには現行の2026年レギュレーション策定プロセスへの強い反省がある。
2022年に合意された次世代ルールは、当時の自動車業界の急進的な電動化シフトを反映したものだった。しかし、現在は世界的に内燃機関(ICE)の価値が再評価されるなど、潮流が変化している。
メーカーの顔色を伺いすぎた結果、F1は「電動比率50%」という極めて複雑で重量のあるパワーユニットを採用することになった。スライエム会長は、こうした「メーカー主導のルール作り」がレースの質やコスト面で課題を招いていると見ており、主導権をFIAの手に取り戻そうとしている。

V8回帰は「軽量・単純化」の象徴
スライエム会長がV型8気筒エンジンにこだわる理由は、ファンが求める「F1の原点」への回帰に他ならない。
「最も人気があり、扱いやすいのはV8だ。サウンドがあり、複雑さが少なく、そして何より軽量だ」
「ごくわずかな電動化は残るが、主役はエンジンになる」
現在のハイブリッドシステムが抱える「重すぎる」「静かすぎる」という欠点を、100%持続可能燃料(e-fuel)を用いたV8エンジンによって解決する。これは単なる懐古主義ではなく、最新技術をファンが喜ぶパッケージで包み直す戦略と言える。
2030年前倒し導入を狙うも最終ラインは2031年
FIAのターゲットは2030年だが、たとえメーカーが反対し続けても、その1年後には「強制執行」という切り札が待っている。
「我々は1年前倒し(2030年)での導入を望んでいる。しかし仮にメーカーが同意しなくても、その翌年には実現する」
「これは支持を得るかどうかの問題ではない。実行されるのだ」
この発言は、メーカーの撤退を恐れて妥協を繰り返してきたこれまでのF1の歴史に終止符を打つものだ。V8エンジンの復活は、マシンが奏でる咆哮だけでなく、FIAが再びF1の絶対的な統治者として君臨する時代の幕開けを象徴している。
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