F1 ハロー
FIAは、2018年にF1世界選手権にコックピット保護デバイスとして『ハロー』を導入するに至った経緯を説明した。

19日(水)、全F1チーム、FIA、リバティ・メディアが参加する“臨時”のストラテジーグループ会議がジュネーブで開催され、2018年からF1マシンに『ハロー』が安全デバイスとして導入されることが発表された。

F1は、何らかの頭部保護システムをF1マシンに導入することを検討しており、昨年は『ハロー』、そして、レッドブルが発案した『エアロスクリーン』をテストした。

今年に入ってから、ハローは一旦廃案となり、新たに『シールド』が提案され、F1イギリスGPのフリー走行1回目にフェラーリのセバスチャン・ベッテルがテストしたが、湾曲したスクリーンは視界が悪く、走行していて眩暈がしたとネガティブなフィードバックをしていた。

ハローの導入に関しては、フェラーリ以外の全チームが反対票を投じたとされるが、FIAはそれを覆し、安全を理由に『ハロー』を2018年のF1レギュレーションに組み込むことを決定。ファンだけでなく、ニキ・ラウダを始めとするF1チーム側からも多くの批判が出ている。

FIAは22日(土)に声明を発表。ハロー導入という決定を擁護し、その決定に至った経緯を説明した。

「モータースポーツの安全はFIAにとって最優先の懸念だ。モータースポーツの多くのエリアで大きな進歩がなされてきたが、シングルシーター競技の頭部保護は長年にわたる懸念のエリアだった」とFIAは声明で述べた。

「モータースポーツは元々危険をはらんでいるが、優れた研究と技術開発を通してコース上でより素晴らしい安全性を恒久的に追求し、その危険を最小にすることに絶えず務めることがFIAのミッションだ」

「過去10年間、モータースポーツはドライバーに影響を及ぼした深刻な事故を目撃した。その事故の厳しさは、コックピットのエリアの正面へのインパクトを軽減するためのソリューションを開発することが、既存の弱点に対処するFIAにとってのリサーチ上のプライオリティであることを明白にした。多くのニアミス事故があったこともアクションを起こす必要性があることをハイライトした」

「いくつかの事故の結果、GPDA(グランプリ・ドライバー・アソシエーション)も2016年7月にFIA会長ジャン・トッドに何らかの正面のコックピット保護を“できる限り早くに実装”するべきとの要請を出していた」

「1か月後のF1ストラテジーグループとF1コミッションの会議の後、コミッションは“2017年シーズンから何らかのコックピット保護”を導入するというコミットメントを確認し、“現在の好ましい選択肢である『ハロー』コンセプトを実現するために全投資家が協力していく”ことを保証した」

「デバイスの静的テストを継続する間、特にコックピットの両側に縁材を取り付け、対のピラーでウィンドウシールドを搭載する“エアロスクリーン”など、他のソリューションも同時に探索された。そのシステムは2016年のロシアGPでフリー走行1回目でテストされたが、いくつかのエリアでは成功したものの、さらなるテストはデバイスの効果に関する懸念を引き起こした」

「対照的に、ハローのテストは成功を証明し続けた。クルマ対クルマの接触、クルマと環境との接触、外部オブジェクトという3つの重要な種類をリスクを中心に据えて、テストはクルマ対クルマの事故のケースで、ハローがクルマの大部分の静的負荷の15倍に耐えることができ、怪我の可能性を大きく減少させられることがわかった」

「参照として以前の事故を選択して行われたクルマ対環境のテストでは、ハローは多くのケースでウォールやバリアとのヘルメットの接触を避けられることが確認された」

「最終の外部オブジェクトのケースでは、ハローはコックピット環境から大きなものを逸らすことができることがわかり、小さなデブリに対するほぼのレベルを高めることも示された」

「さらにまた、広範囲なトラックテストからのフィードバックから視認性があまり影響を受けず、中心支柱にはそれほど大きな視覚への障害がないことが分った。また、トラックテストはコックピットから出ることに関しても問題がないことを明らかにした。安全な救出を確実にするために定式化された手順が修正され、ハローを装着した複数の救出テストが行われた」

「成功にも関わらず、2016年7月にF1ストラテジーグループは、ハローデバイスでのトラックテストを実施し、代替となるソリューションを探求するためのより多くの時間を提供できるようにコックピット保護システムの導入を延期することに同意した」

「しかし、実施が延期される間、ストラテジーグループは“2018年シーズンにドライバーの安全性を大きく強化するためにF1カーにとって正面コックピット保護の導入することを満場一致で合意”することを述べており、保護システムの導入へのコミットメントを再確認していた。ハローは好ましいオプションのままだった」

「より多くのチームとドライバーが視認性へのデバイスの影響を評価するために集中的なトラックテストが2016年F1シーズン後半に実施された。同時に、FIAは2018年シーズンのためのデバイスの導入へのコミットメントを維持していた」

「それらのトラックテストと代替システムの分析に続き、F1ストラテジーグループとF1コミッションは今年4月に“透明な『シールド』にプライオリティを与える”ことを決定した。FIAは2018年の実装に備えて今シーズン中にこのシステムの走行テストを実施することを目指した」

「静的テストの後、シールドシステムは2017年のイギリスGPでフェラーリのセバスチャン・ベッテルに装着され、短いトラックテストが行われた。このテストからのフィードバックでは、そのようなシステムのいくつかの制約への懸念があった」

「ハローシステムで実施されたたわみテストの成功、2016年シーズン後半のドライバーとチームによって行われた複数の成功したトラックテスト、そして、2018年シーズンの開始時にむけた最終期限のためのレギュレーションへの実装の必要性という点で、ハローシステムが現存する正面コックピットほどの問題に対するベストなソリューションであることが示された」

今後、ハローの最終デザインは、チーム、ドライバー、FIA間の共同の努力によって、2018年の導入にむけてさらに洗練されていく」

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カテゴリー: F1 / FIA(国際自動車連盟) / F1マシン