【F1】 2021年のF1パワーユニットから姿を消すことになったMGU-H
FIA(国際自動車連盟)とF1は31日(火)、2021年のF1エンジンに関するF1レギュレーションの方向性を発表。“安価”“大音量”“高性能”を実現するためのF1パワーユニットの計画を明らかにした。中でも一番のトピックはMGU-H(熱エネルギー回生システム)の廃止だ。
2014年に“エコフレンドリー”なF1を目指して複雑な1.6リッター V6ターボ“パワーユニット”が導入された。
しかし、エンジンノイズが軽減された新世代のF1エンジンは不評であり、MGU-K(運動エネルギー回生システム)、MGU-Hという2つ回生エネルギーが搭載された複雑な構造により、開発コストは膨れ上がった。
今シーズン、最も故障が多いのもMGU-Hだ。ホンダは、フェルナンド・アロンソが11基目、ストフェル・バンドーンが12基目のMGU-Hを投入。ルノー勢もほぼ全ドライバーが7基目のMGU-Hを投入している。また、MGU-Hはターボチャージャーと関連しているため、大量グリッドペナティの温床となっている。
MGU-Hとは、エンジンから出る排気の熱をエネルギーに変換するシステム。通常、エンジンの燃焼室を出た高温の排気は、排気管を通じて大気に放出される。この熱エネルギーを再利用するために、専用のモーター/ジェネレーターユニットを作動させて電気を作っているのが熱エネルギー回生システム。MGU-Hの「H」は、Heatの略で「熱」(排熱エネルギー)を意味している。
ターボ車の場合、減速を終えて次に加速しようとアクセルを踏んでも、排ガスの流量が増えてタービンが本来の性能を発揮するのに一定の時間を要してしまう(ターボラグ)。そこで、MGU-Hを利用してコンプレッサーを回転させ、タービンが排気の到達を待たずに機能させることで、ターボラグの解消を行っている。全開加速時は、タービンに供給される排気エネルギーが増えるため、エンジンが必要な空気を圧縮するためのコンプレッサーの仕事を上回る場合がある。その際、使いきれなかった排気エネルギーによってMGU-Hで発電し、その電力を、直接MGU-Kに送る。
MGU-Hでの発電量は制限されておらず、バッテリーの充放電エネルギー制限に縛られることなく、エンジンにMGU-Kの出力を上乗せして走ることができる。言い換えれば、余った排気エネルギーを、効率良く加速に使うことができる。コーナー出口の全開加速では、MGU-Hからだけでなく、バッテリーからもMGU-Kに電力を供給する場合がある。こうすることで、MGU-Kをレギュレーションで決められた最大出力(120kW)で駆動し、フル加速することができる。
2つのエネルギー回生システム、特にMGU-Hの構造が複雑過ぎることで、高度な技術や設備を持たない独立系メーカーには開発ができないことや、コストが問題視されていた。
実際、2015年の時点で、メルセデス、フェラーリ、ルノーは高価なMGU-Hを完全に廃止するという案に合意したが、ハイブリッドにこだわるホンダがこれに反対していた。ホンダは、MGU-H / MGU-Kによるデプロイメント(アシスト量)が弱点だったにも関わらずである。
しかし、2021年のF1パワーユニットからはMGU-Hが廃止される。1.6リッター シングルターボV6エンジンはそのままに、エンジン回転数を15,00rpmから18,000rpmと3000prm高めてサウンドを向上。MGU-Hの廃止で失われるパワーは、MGU-Kを大型化することで補われる。
MGU-Hを廃止することで、2021年からはポルシェやアストンマーティン、コスワースといったメーカーがF1に参戦する道が開かれることになる。ポルシェは、今シーズン限りで撤退するWECでMGU-KとMGU-Hを開発してきたノウハウがある。WECのLMP1で唯一のマニュファクチャラーとなるトヨタのF1復帰もあり得るかもしれない。
コスワースのCEOを務めるハル・レイシガーは「エンジン規約が変更になるのであれば、我々はF1復帰に非常に適していると思っている。その強制的な変更は熱エネルギー回生システムでなければならない。それは最も高価で時間のかかる要素だからだ。F1が2021年に新しいエンジンサプライヤーを望むのであれば、その点でいくつかの変更がなされなければならない」と述べていた。
また、アストンマーティンのCEOを務めるアンディ・パーマーも「我々はエンジンメーカーであり、ルールが大きく変化し、我々のような会社がエンジンを開発する余裕ができるようにコストが下がれば、我々はエンジンを開発したい」と述べていた。
F1の競技面のマネージングディレクターを務めるロス・ブラウンは「シンプル、安価、ノイズが大きいパワートレインを供給し、新しいマニュファクチャラーがパワートレインサプライヤーとしてF1に参戦することを容易にし、スポーツをより平準化されたフィールドに到達させるための条件を作り出していくという一連のレギュレーションを定義するための課題として、ファンが現在のパワーユニットについてどのように考えているか、近い将来にどのよなものを見たいと考えているかに注意深く耳を傾けてきた」とコメント。
「新しいF1は最先端の技術と結びついた世界有数のグローバルなスポーツ競技を目指している。あらゆる年齢層のファンを興奮させ、エンゲージし、圧倒するだけでなく、持続可能な方法でそれをやっていくということだ。我々は将来のパワーユニットがそれを達成すると信じている」
関連:【F1】 2021年のF1エンジン仕様を概説…MGU-Hを廃止した1.6L V6ターボ
カテゴリー: F1 / F1マシン / FIA(国際自動車連盟)
2014年に“エコフレンドリー”なF1を目指して複雑な1.6リッター V6ターボ“パワーユニット”が導入された。
しかし、エンジンノイズが軽減された新世代のF1エンジンは不評であり、MGU-K(運動エネルギー回生システム)、MGU-Hという2つ回生エネルギーが搭載された複雑な構造により、開発コストは膨れ上がった。
今シーズン、最も故障が多いのもMGU-Hだ。ホンダは、フェルナンド・アロンソが11基目、ストフェル・バンドーンが12基目のMGU-Hを投入。ルノー勢もほぼ全ドライバーが7基目のMGU-Hを投入している。また、MGU-Hはターボチャージャーと関連しているため、大量グリッドペナティの温床となっている。
MGU-Hとは、エンジンから出る排気の熱をエネルギーに変換するシステム。通常、エンジンの燃焼室を出た高温の排気は、排気管を通じて大気に放出される。この熱エネルギーを再利用するために、専用のモーター/ジェネレーターユニットを作動させて電気を作っているのが熱エネルギー回生システム。MGU-Hの「H」は、Heatの略で「熱」(排熱エネルギー)を意味している。
ターボ車の場合、減速を終えて次に加速しようとアクセルを踏んでも、排ガスの流量が増えてタービンが本来の性能を発揮するのに一定の時間を要してしまう(ターボラグ)。そこで、MGU-Hを利用してコンプレッサーを回転させ、タービンが排気の到達を待たずに機能させることで、ターボラグの解消を行っている。全開加速時は、タービンに供給される排気エネルギーが増えるため、エンジンが必要な空気を圧縮するためのコンプレッサーの仕事を上回る場合がある。その際、使いきれなかった排気エネルギーによってMGU-Hで発電し、その電力を、直接MGU-Kに送る。
MGU-Hでの発電量は制限されておらず、バッテリーの充放電エネルギー制限に縛られることなく、エンジンにMGU-Kの出力を上乗せして走ることができる。言い換えれば、余った排気エネルギーを、効率良く加速に使うことができる。コーナー出口の全開加速では、MGU-Hからだけでなく、バッテリーからもMGU-Kに電力を供給する場合がある。こうすることで、MGU-Kをレギュレーションで決められた最大出力(120kW)で駆動し、フル加速することができる。
2つのエネルギー回生システム、特にMGU-Hの構造が複雑過ぎることで、高度な技術や設備を持たない独立系メーカーには開発ができないことや、コストが問題視されていた。
実際、2015年の時点で、メルセデス、フェラーリ、ルノーは高価なMGU-Hを完全に廃止するという案に合意したが、ハイブリッドにこだわるホンダがこれに反対していた。ホンダは、MGU-H / MGU-Kによるデプロイメント(アシスト量)が弱点だったにも関わらずである。
しかし、2021年のF1パワーユニットからはMGU-Hが廃止される。1.6リッター シングルターボV6エンジンはそのままに、エンジン回転数を15,00rpmから18,000rpmと3000prm高めてサウンドを向上。MGU-Hの廃止で失われるパワーは、MGU-Kを大型化することで補われる。
MGU-Hを廃止することで、2021年からはポルシェやアストンマーティン、コスワースといったメーカーがF1に参戦する道が開かれることになる。ポルシェは、今シーズン限りで撤退するWECでMGU-KとMGU-Hを開発してきたノウハウがある。WECのLMP1で唯一のマニュファクチャラーとなるトヨタのF1復帰もあり得るかもしれない。
コスワースのCEOを務めるハル・レイシガーは「エンジン規約が変更になるのであれば、我々はF1復帰に非常に適していると思っている。その強制的な変更は熱エネルギー回生システムでなければならない。それは最も高価で時間のかかる要素だからだ。F1が2021年に新しいエンジンサプライヤーを望むのであれば、その点でいくつかの変更がなされなければならない」と述べていた。
また、アストンマーティンのCEOを務めるアンディ・パーマーも「我々はエンジンメーカーであり、ルールが大きく変化し、我々のような会社がエンジンを開発する余裕ができるようにコストが下がれば、我々はエンジンを開発したい」と述べていた。
F1の競技面のマネージングディレクターを務めるロス・ブラウンは「シンプル、安価、ノイズが大きいパワートレインを供給し、新しいマニュファクチャラーがパワートレインサプライヤーとしてF1に参戦することを容易にし、スポーツをより平準化されたフィールドに到達させるための条件を作り出していくという一連のレギュレーションを定義するための課題として、ファンが現在のパワーユニットについてどのように考えているか、近い将来にどのよなものを見たいと考えているかに注意深く耳を傾けてきた」とコメント。
「新しいF1は最先端の技術と結びついた世界有数のグローバルなスポーツ競技を目指している。あらゆる年齢層のファンを興奮させ、エンゲージし、圧倒するだけでなく、持続可能な方法でそれをやっていくということだ。我々は将来のパワーユニットがそれを達成すると信じている」
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