フェラーリがキャデラックF1チームに託した“先行データ”の価値

新レギュレーションは未知数が多く、各チームにとって“走り出す前”の準備段階こそが成否を左右する。そうした状況で、キャデラックF1チームは、フェラーリから得られる事前情報を武器に、参戦初年度から確かな地盤を築こうとしている。
このプロジェクトを率いるグレアム・ロードンは、フェラーリの2026年F1パワーユニット計画に強い信頼を寄せており、その完成度が次世代F1で十分に戦える水準にあると確信している。
マラネロで共有された“現場の時間”
ルーキーとしてF1に参戦するチームにとって、最大の課題は経験値の不足だ。キャデラックはこの弱点を補うため、シミュレーターと実地作業の両面で徹底的な準備を進めてきた。
2025年末、フェラーリはフィオラノでの作業にキャデラックの多数の技術者を受け入れ、実車とシミュレーションを結びつけるプロセスを共有した。これは単なる視察ではなく、トップチームが長年かけて築いてきた運用ノウハウに直接触れる機会だった。
この経験によって、キャデラックは新レギュレーション下で必要となる作業フローや判断基準を、参戦前の段階で具体的に理解することができた。

周冠宇という“経験の橋渡し役”
キャデラックの体制構築において、決定的な役割を担うのが周冠宇だ。彼はフェラーリでリザーブドライバーを務め、2026年F1マシン開発の中核となる「プロジェクト678」に深く関与してきた。
周冠宇は3シーズンにわたるF1参戦経験を持ち、若手候補とは一線を画す実戦的な知識を備えている。キャデラックが彼を選んだ理由は明確で、不確実性を極力排除し、確かな判断ができる人物を据える必要があったからだ。
シルバーストンの欧州拠点を拠点に活動する周冠宇は、イタリアで培ったフェラーリ流の開発思想を、アメリカとイギリスにまたがるキャデラックの組織へと伝える役割を担う。
フェラーリのノウハウを“使いこなす”ために
周冠宇はレース出走こそしないものの、その存在価値は極めて大きい。彼はバルテリ・ボッタス、セルジオ・ペレスと連携し、シミュレーター相関や開発方向性の精度向上に貢献する。
フェラーリで培った知識、2026年タイヤへの初期対応、トップチーム特有の運用プロトコル。これらすべてが、キャデラックにとっては“時間を買う”ための資産となる。
新たなF1チームが短期間で競争力を得るためには、技術だけでなく、それを扱う人材の質が問われる。フェラーリのノウハウを理解し、翻訳できる存在として、周冠宇はキャデラックF1にとって欠かせない触媒となっている。
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