F1 トロロッソ 2018年のF1世界選手権 オーストラリアグランプリ ブレンドン・ハートレー
今週末に行われている2018年のF1選手権の開幕戦オーストラリアGPは、ホンダF1の歴史のなかで、新たな1ページの始まりを意味する。トロロッソとのパートナーシップが、2018年シーズンの幕開けとともに、本当の意味でスタートすることとなるからだ。

トロロッソ・ホンダは、メルボルンで初めてレースに挑むことになるが、それは今週末にチームが迎える数多くの“初体験”の一つでしかない。

ドライバーのピエール・ガスリーとブレンドン・ハートレーは、どちらもルーキーで、F1ドライバーとして初めてのシーズンフル参戦を経験することになる。

ブレンドン・ハートレーにとっては、今週末はより忙しい週末となるかもしれない。タスマン海を越えた先にある、ニュージーランドのパーマストンノースという町で生まれた彼にとって、開幕戦が行われるメルボルンは自身の故郷に最も近く、第二のホームグランプリとも言える大会になるからだ。

「とにかく、シーズンの開幕戦を迎えられることをすごくワクワクにしている。しかも、メルボルンという、僕の生まれ故郷に最も近い場所でのレースなので、なおさらに楽しみだ」

「厳密に言えばホームグランプリではないよね。オーストラリアはニュージーランドとは違う国だから(笑)。でも、去年のシーズンオフにニュージーランドに戻ったときには、本当にいろいろな人から『レースを観にいくよ』と言われた」

「だから、オーストラリア国旗ほどではないにせよ、今週末はスタンドにニュージーランド国旗がはためくのを見られると思っている。僕の友達や家族もレースを観に来てくれるので、僕にとって、とても特別なレースになるね」

彼の父親は開幕戦の舞台となるアルバート・パークを走った経験もあるドライバーであり、ブレンドン・ハートレーにはもともと、レーサーの血が流れているようだ。彼は自分の父親のことをこんな風に語っている。

「父は、四輪であればほぼすべてのカテゴリーでレースをしていた。ダートトラックや、アデレード市街地サーキットで行われたオーストラリアGP、さらにはメルボルンで初めて開催されたグランプリにも、フォーミュラ・ホールデン・カーを駆って参戦している。よくマーク・ウェバーと優勝をかけて争っていたらしい。自分が世界耐久選手権に一緒に参戦していたチームメートが父のかつてのライバルだなんて、おもしろいよね(笑)」

「僕の一番古い記憶は、父がレースしているのをスタンドから見ていた場面だ。4歳上の兄は、僕より早くゴーカートに乗り始めたので、それもよくスタンドから眺めていた。6歳になってからは自分でもレースをするようになり、それ以来、レースが僕のすべてになった」

「6歳から8歳の間、僕はよく周りに、いつかF1ドライバーになると豪語していたらしい。今になって振り返ると、ニュージーランドのごく普通の家庭に生まれた子供が、よくそんな大それた夢物語を言っていたなと思っているが、どうにかここまでたどり着くことができた」

「いくつものチャンスをつかんで、ようやくここまで来られたんだと思っている。15歳のときにレッドブルに選ばれて、友達や学校、家族を残してヨーロッパへ旅立った。紆余曲折あったが、ル・マン24時間レースで勝利をつかんだり、いくつかの世界選手権で優勝を果たしたりして、28歳でようやくF1ドライバーへの切符を手にすることができた」

「数年前だったら、こうしてF1のパドックへまた戻れる日が来るとは、とても想像できなかったかもしれない。でも、いつのときもその瞬間を思い描いていた」

ブレンドン・ハートレーがF1ドライバーになるまでの道のりは、かなり異例と言えるかもしれない。8年前にはレッドブルからF1へ挑戦するチャンスを与えられながら、シーズン途中でプログラムから外れ、F1のシートを獲得するという夢は叶わなあkった。しかし、若きニュージ―ランド人ドライバーは、その野望を諦めなかった。

「2009年に、僕はF1のリザーブドライバーだったけど、チームメートのハイメ・アルグエルスアリが代わりにF1のシートを獲得したことがあった。あれが一番のショックな出来事だった。あれだけF1ドライバーの夢に近いポジションにいたにもかかわらず、結果的にそれを逃してしまったわけだからね」

「その頃、僕はあまりいいレースをできていなかった。精神的にも未熟で、夢を逃してしまった。チャンスを逃して初めて、自分が夢の実現にあと少しのところまで近づいていたことに気づいた」

「それからはさまざまな面で努力を続け、結果的にドライバーとして大きく成長を果たすことができた。今振り返ると、多くのカテゴリーで経験を積めたこと、そしていくつかの試練を味わえて、本当によかったなと思っている」

ブレンドン・ハートレーとホンダは、レースに関して、同じスピリットを持っていると言えるだろう。ホンダが長年のブランクを経てF1に復帰した際も、幾多の苦難を経験したが、それでもいつの日か勝利を得るためのチャレンジングスピリットが消えることはない。ホンダが続けてきたダイナモテストやファクトリーでの開発は、ハートレーが成し遂げたル・マン24時間レースでの勝利や、世界耐久選手権でのタイトル獲得のように輝かしいものではないかもしれない。ただ、どちらもF1から離れたところで積み重ねられた努力による結晶であることに変わりはない。

ホンダとトロロッソとが新たなパートナーシップを結ぶにあたり、ホンダF1の拠点であるHRDさくらとミルトンキーンズも、新しいスタートを迎えることになる。新シーズンの開幕を控え、ブレンドン・ハートレーは、過去の経験から学び、未来の成長に繋げることが大切だと語る。

「成功のためには、失敗が必要なこともある。僕がF1のシートを逃したときに言われたことだが、これはドライバーだけでなく、チーム、企業にとっても同じだと思っている。誰にでも失敗はある。でも、そこから学び、前を向いて進んでいくことが大事なんだと思っている。僕も、失敗を通して自分自身について学び、それによって、より強くなることができた」

再びF1のトップ集団に加わることを目指して、これまで3年間にわたって奮闘を続けてきたホンダは、トロロッソと新たにパートナーシップを組み、ウインターテストで好調な滑り出しをみせている。それは、ブレンドン・ハートレーが失敗を経て、多様なレースカテゴリーを経験してついにF1という夢を掴んだ道のりと似ているかもしれない。ハートレーは、この新しいパートナーシップに明るい未来が待っていることを強く信じていると語る。

「ホンダにはF1での輝かしい歴史がある。いま、僕はその歴史についてより深く知ろうとしているところだ。ホンダはF1の歴史に残るような勝利をいくつも挙げているからね。当時の自分はまだ幼く、よく分かっていなかったけどね(笑)」

「ここまで、トロロッソ・ホンダは非常に順調なスタートを切ることができている。一カ月半前にトロロッソのファクトリーを訪れた際に感じたことだが、チームの皆が、このパートナーシップについて確かな自信を持っている。トロロッソにとって、エンジンのマニファクチャラーから単独供給を受けること、また、ホンダが持つ豊富なリソースへのアクセスを得ることは、本当にすばらしい機会だ」

「ホンダとトロロッソのパートナーシップは、互いにとって非常にポジティブなものだ。密に連携を取って動けているし、お互いを思いやって、譲歩すべきところは譲歩している。双方が驚くべき情熱と決意を持ち、日々の仕事に取り組んでいる」

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カテゴリー: F1 / ブレンドン・ハートレー / トロロッソ / ホンダF1