桜井孝太郎
桜井孝太郎が、7月1〜3日にドイツ、ニュルブルクリンク・サーキットで開催されたイギリスF3選手権(第13〜15戦)に参戦し、第15戦では、レース中のルーキークラスにおけるファステストラップ(最速タイム)を記録した。

第8戦で、イギリスF3ルーキークラス史上最年少(16歳321日)での初優勝を達成した桜井孝太郎選手は、続く第10戦、11戦でも優勝を飾り、16歳のうちにイギリスF3ルーキークラスで3勝を記録し、6月29日に嬉しい17歳の誕生日を迎えた。

そして17歳最初のレースとなったのは、F1グランプリサーキットとしても有名なドイツ、ニュルブルクリンク・サーキット。ハイスピードでありながら、息つく暇なくコーナーが連続する高速テクニカルコースは、桜井孝太郎にとって初めて経験する体力的に厳しいサーキットのひとつでもある。

ニュルブルクリンクは、ライバルのバート・ヘレキマにとっては3年以上レースや練習でホームグランドとして走り込んできた得意なサーキット。マシン的にも不利な条件だった為チームからは、まずは全戦完走。そして1度でもファステストラップを獲得し、ライバルに精神的なプレッシャーを与えることが目標として課された。

しかしここが正念場と感じていた桜井孝太郎は3連勝を狙って臨んだ。

フリー走行は大雨。予選、決勝は晴れと、気象条件すら、初めての桜井孝太郎にとって不利に働きます。予選では一部のチャンピオンクラスのマシンより速いタイムをマークしたものの、ヘレキマにわずか及ばずクラス2番手。しかし予選での黄旗区間での減速不足を理由に、10台に5グリッド降格のペナルティが課された結果、桜井孝太郎の直前からスタートが予定されていたヘレキマのグリッドポジションが大きく繰り上がり、ヘレキマに逃げきられる結果となった。

第14戦では、ハードなバトルの応酬のうえ、最終ラップの最終コーナー手前の最後のシケインで、桜井孝太郎が、前をいくヘレキマのインに飛び込み、2台が接触。高く飛び上がった桜井孝太郎のマシンは、着地後スピンしてしまい、再スタートしたものの、リアウィングを失ったヘレキマが先にチェッカーを受けた。

レース後、この桜井孝太郎の接触行為に対して審査委員会での審議が続けられ、正式結果が出ないまま、続く第15戦のスタートを迎えた。

そして第15戦のレース中盤、再びヘレキマを追い詰める桜井孝太郎に、突如、『ピットスルー・ペナルティ』の判断が下った。理由は第4コーナーでのホワイトラインカット。これにはピットも騒然とし、桜井孝太郎も無線で怒りをあらわにし、ペナルティを無視しようとしたが、ライアン・シャープ監督が「抗議はあとでする。まずは競技長に従って、ピットに入れ」と無線で指示。無言でピットに戻った桜井孝太郎は、ピットを通過してレースに復帰するや否や、「ファステストを狙う」と無線で突然叫び、猛然とたったひとりのアタックを開始した。エンジニアも毎ラップ無線で区間タイムを読み上げ、チーム一丸となって最後の最後まで、果敢に攻め続けた。

チェッカーフラッグを受けて走り抜ける桜井孝太郎のマシンを横目で見ながら、エンジニアの表情がほころんだ。「孝太郎、たぶんファステストラップを出したよ」と小さくガッツポーズ。チーム全員の悔しさを走りで表現してくれたレースだった。

レース後、競技長から再び呼び出され、「君は17歳と若く、まだまだ経験が必要だが、F3での充分な速さはある。あの事故(ヘレキマとの最終ラップの接触)はクレージーだが、反省もしていることだし、最終ラップの最終シケインで抜こうとするのは、レーサーだからだ。危険行為のペナルティで、若く未来あふれるドライバーの、F1へのキャリアを汚したくはない。よって第14戦の事故に関しては、問題なしとする。しかし、逆に15戦でのラインカットは他のドライバーより回数が多かったとし、厳重にペナルティを課した」と、温かい表情で肩を叩かれながら伝えられました。

桜井孝太郎
「今回も初めてのサーキットでぶっつけ本番だったので、出だしは苦しかったけれど、ウィークを通じてひとまわりも、ふたまわりも大きく成長出来たすごくポジティブなレースでした。優勝できなかったのは残念ですが、どのレースもチャンピオンクラスのマシンを追い回せたし、バトルもできた。ルーキークラスの優勝争いでも最後に接触覚悟で突っ込むまでの攻めの走り、姿勢を見せられたのは、今後に大きく影響すると思っています。第15戦もチャンピオンクラスのマシンを挟んで、ルーキークラスの優勝争いをしていただけに、ドライブスルーのペナルティーは痛かったです。でもその後も気持ちを切り換え、最後の最後にファステストラップを狙って取れたのは大きな自信になりました。ドライバーとして大きく成長出来たと思うし、すごくモチベーショナルなウィークでした。全てのレースが接近戦だっただけにいつも以上に悔しさはありますが、これは次のポールリカールでの飛躍につながると信じています。次戦はチャンピオンクラスにも勝って見せます。」

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カテゴリー: F1 / 桜井孝太郎