ホンダF1とザウバーの契約白紙化が与えた影響 / F1特集
F1に“ザウバー・ホンダ”が誕生することはなかった。ホンダF1とのザウバーとのエンジン契約は発表から3か月後に白紙撤回された。それによってF1の状況は大きく動くことなった。

2017年のF1世界選手権のスタートは、ザウバーとホンダF1のどちらにとっても期待できるものではなかった。

2009年末のBMWの撤退後、ザウバーは2010年代半ばまで財政的に苦労し、2016年にその存続のために資金をかき集めて、1年前落ちのフェラーリ製エンジンと標準以下のシャーシで2017年に入った。

一方、ホンダF1はマクラーレンとのパートナーシップの3年目に入っていたが、パフォーマンスと信頼性の問題の中でパワーユニットのコンセプトが変更され、プロジェクトは立ち戻っていた。

マクラーレンとホンダF1の関係は崩壊しつつあった。以前はその独占権を破るという考えに抵抗していたマクラーレンは、より多くのデータを収集してコンセプトを理解するために2番目のチームに提供するというホンダの願いを受け入れた。

4月末、ザウバーはモニシャ・カルテンボーンの管理下で、2018年からホンダF1がパワーユニットサプライヤーになることを発表し、2010年から続いたフェラーリとの関係を断った。

ドライバーを務めていたマーカス・エリクソンとパスカル・ウェーレインはホンダF1との提携に前向きだった。

マーカス・エリクソンは、ホンダのF1エンジンの欠点を認めながらも「長期的にはチームにとって正しい決断だと思う。ポテンシャルはあると思う」と語り、パスカル・ウェーレインも「ホンダF1が来年ザウバーの競争力を高めるための役割を果たしてくれることを期待している」と付け加えた。

しかし、ザウバー・ホンダのパッケージは実現しなかった。

モニシャ・カルテンボーンは6月にザウバーを去り、その直後に2016年にルノーのチームプリンシパルを務めていたARTの長年のボスであるフレデリック・バスールが後任として加入した。

フレデリック・バスールの最初の行動の1つはホンダF1とのパートナーシップを打ち切ることだった。彼はホンダF1に対するマクラーレンのコミットメントに対する不確実性、特にギアボックスの使用に関して悪影響を与える可能性があることを恐れていた。ザウバーではギアボックスを構築することはできなかった。まだ、2018年のF1マシンの設計は別のパワーユニット、ギアボックスで回収できる段階にあった。

ザウバーの公式発表では決定は「ザウバーF1チームの将来への最善の意図を念頭に置いて」行われたというものだった。ホンダF1は「ホンダとザウバーの将来の方向性には、パワーユニット供給システムの準備プロセスに認識の違いがあった」とコメントした。

その後まもなくザウバーはフェラーリとのパートナーシップを更新することを発表した。

ホンダF1とザウバーが行った唯一の共同作業は、契約の白紙化が確認された数日後にブダペストで行われた若手ドライバーテストでホンダF1の育成ドライバーである松下信治がザウバーのF1マシンをテストしたときだけだった。

理論的にはホンダF1は2018年に供給先がない状態となったが、レッドブルは状況を監視しており、トロロッソにワークス供給することで契約が成立した。トロロッソとホンダF1の契約は、マクラーレン、レッドブル、ルノー、カルロス・サインツなどの複数の関係者が関与する複雑な契約だったが、決定的に重要なことはホンダがF1に残ったことだった。

2018年のホンダのF1エンジンのパフォーマンス向上は、ルノーのパフォーマンス停滞に同調し、レッドブルに2019年の供給を確信させ、レッドブル・ホンダのパートナーシップはマックス・フェルスタッペンとの3勝を挙げた。

一方、ザウバーは、2018年に最新のパワーユニットを確保し、フェラーリとの関係を強化。フィアット・クライスラー・オートモービルズは、アルファロメオのブランド活用に熱心であり、タイトルスポンサー契約に調印した。

ザウバーがフェラーリとの提携を再開したことで、フェラーリは1つのシートの決定権を獲得し、2018年にはF2チャンピオンのシャルル・ルクレールをF1デビューさせ、メルセデスに支援されていたパスカル・ウェーレインを外した。

ザウバーでのシャルル・ルクレールのパフォーマンスは、フェラーリに2019年の準備ができていることを確信させた。その後、アルファロメオがザウバーのネーミングライツを引き継ぎ、2007年のF1ワールドチャンピオンのキミ・ライコネンが復帰した。

フレデリック・バスールが、ホンダF1との契約を手付かずのままにした場合、F1界の状況はどのように展開していただろう?

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カテゴリー: F1 / ホンダF1 / ザウバーF1チーム