2026年F1マシンのスタートに安全懸念 開幕前に手順見直し論が浮上

FIA(国際自動車連盟)はすでに状況を把握しており、来週開催予定のF1コミッションでスタート手順の変更が議題に上がる見通しとなっている。
なぜ2026年F1はスタートが難しくなったのか
2026年から導入された新型パワーユニットでは、従来の1.6リッターV6ハイブリッドからMGU-Hが撤廃された。これによりターボラグを電動で補完する仕組みが消失し、スタート時に十分な過給圧を作るまでに時間を要するようになった。
従来はMGU-Hがターボを即座にスプールさせ、低回転域のラグを補っていた。しかし現在は内燃機関とターボのみで初期加速を担い、MGU-Kが本格的に機能するまでの間に回転数を適正域へ維持しなければならない。
ピットレーン出口での練習スタートでは、ドライバーが10〜15秒間も空ぶかしを続けてブーストを作る光景が見られた。ターボサイズの違いも影響しており、各メーカーごとに最適ウインドウが異なる状況だ。
ハースF1チームのオリバー・ベアマンは、そのタイミングが「ミリ秒単位」であると明かし、わずかなズレでスタートが失敗する可能性があると示唆している。
現行スタート手順とのミスマッチ
現在のスポーティングレギュレーション(B5.7条)では、最後のマシンがグリッドに停止してから約10秒以内にスタートが切られる。5灯式のレッドライトは1秒間隔で点灯し、その後2〜3秒以内に消灯するのが通常だ。
しかし後方グリッドのドライバーにとって、この短い時間ではターボを理想状態に持っていく余裕がない。前方のマシンが正常発進する一方で、後方では加速できない車両が混在する危険な状況が想定される。
アルピーヌのピエール・ガスリーは次のように語った。
「オーストラリアではテレビの前に座っていたほうがいい。みんなの記憶に残るスタートになるかもしれない」
「どうなるかは分からない。正直、自分でも分からないよ。間違いなく以前より難しくなる」
FIAと各チームの対応
FIAはバーレーンテスト中に複数のシミュレーションと技術評価を実施し、問題点を把握している。F1コミッションでは、オーストラリアGPまでにスタート手順を調整する可能性が検討される予定だ。
2025年の議論段階ではフェラーリが反対意見を示していたとされる。小型ターボを採用していると見られ、他メーカーより有利な可能性があるためだ。
もっとも、安全性が理由であればFIAは全会一致を待たずに規則変更を進めることができる。

過去に起きたスタート事故の教訓
スタート直後の速度差は極めて危険である。1982年カナダGPではリカルド・パレッティがスタート直後の事故で命を落とした。1994年ブラジルGPではベネトンのJJレートがストールし、ペドロ・ラミーが追突して観客にも破片が飛散した。
2001年ドイツGPではミハエル・シューマッハが4番グリッドからギアボックストラブルで停止し、ルチアーノ・ブルティが空中に舞い上がる事故も発生している。同年ブラジルではミカ・ハッキネンがストールし、後続車を避けるために手を振って警告する場面もあった。
スタートラインでの停止車両は視界が遮られる中で極めて危険な障害物となる。
マクラーレンとメルセデスの見解
マクラーレン代表のアンドレア・ステラは次のように述べた。
「スタート手順は、すべての車がパワーユニットを適切に準備できるものでなければならない」
「グリッドは発進が遅れる場所であってはならない」
「これは競争上の問題ではなく、より大きな利益の問題だ。すべてのチームとFIAが責任ある姿勢で臨むべきだ」
マクラーレンのオスカー・ピアストリも「競争以前に安全なスタートを切ること自体が難しい」と認めている。
一方、メルセデスのジョージ・ラッセルは改善傾向を示した。
「僕は自分のウインドウに入った時にしかローンチを行わない」
「レースではライトが消えたら行かなければならない。ターボが理想状態かどうかは関係ない」
「バルセロナでは確かに安全上の懸念があったが、その点では大きく改善している」
オーストラリアGPまでに決断は下されるか
2026年F1開幕戦オーストラリアGPを目前に控え、スタート手順の見直しは急務となっている。グリッド上でのわずかなタイミング差が重大事故に直結する可能性がある以上、競争優位よりも安全性が優先される可能性は高い。
F1コミッションの判断が、2026年シーズン最初の大きな政治的決定となるかもしれない。
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