2008年 F1チーム
2008年のF1世界選手権に参戦するF1チーム。2008年は新たなF1チームであるフォース・インディアの参戦やスーパーアグリの動向とともに、王者フェルナンド・アロンソのルノー復帰など、新たなドライバーラインナップとなるF1チームが多くあり、注目のシーズンとなりそうだ。
スクーデリア・フェラーリ・マールボロ
Scuderea Ferrari Marlboro
2007年のチャンピオンチーム、フェラーリ。ドライバーは昨年と同じく、キミ・ライコネンとフェリペ・マッサがコンビを組む。チーム体制としては、ジャン・トッドがチーム代表の座を退き、ステフェノ・ドメニカリが新たにチーム代表に就任。ルカ・バルディセリがチーム・マネージャーとしてレース戦略の責任者となった。
今年のマシン「F2008」は昨年マシンよりホイールベースを短くしてきた。その他、空力や重量配分、サスペンションジオメトリーを変更し、弱点だった低速コーナーへの進入、縁石乗り越えのパフォーマンスを改善。まら、全チームの中で最も早くに発表&シェイク・ダウンを行い、信頼性の確保に努めた。冬のテストでは、一発の速さ、ロングランともに他チームを圧倒する速さをみせた。今季の優勝候補の筆頭といえる。
BMWザウバーF1チーム
BMW Sauber F1 Team
2007年は予想外の構想を見せたBMWザウバー。今季は実力で優勝することを目標に掲げている。ドライバーは、昨年に引き続き、ニック・ハイドフェルドとロバート・クビサがコンビを組む。その他、技術陣の顔ぶれもほとんど変わっていない。テストドライバーには、昨年までホンダのテストドライバーであった。新たにクリスチャン・クリエンが就任した。
今年のマシン「F1.08」は、コンサバティブだった昨年マシンから一転、アグレッシブな空力マシンとして誕生。初期テストでのパフォーマンスは、昨年のようなパフォーマンスは発揮されなかったが、ロングランでは安定したペースをみせた。エアロ面で多くのアグレッシブな手法をとるが、ややセンシティブな性格を持っている。しかし、そのポテンシャルは完全には明らかになっておらず、警戒するチームは多い。3番手ポジションの有力候補。
INGルノーF1チーム
ING Renault F1 Team
2008年は、過去ルノーで2年連続チャンピオンに輝いた王者、フェルナンド・アロンソが復帰。フラビオ・ブリアトーレとのタッグが復活した。チームメイトには、新人のネルソン・ピケJrが昇格した。また、テスト開発ドライバーには山本左近が就任した。
昨年はブリヂストンタイヤへの変更に対応できず、1年間苦しみ続けたルノー。今季のマシン「R28」は、その反省を活かし、フロントの空力面が大幅に改良されている。その最たるものがセロキールサスペンションの採用。しかし、サスペンションアームの取り付け位置は他のチームほど、ハイマウントでなく、ツインキールに近いレイアウトとなっている。ただし、アロンソはR28のエアロ面での弱さを口にしており、今後シーズンを通しての改善、また経験豊富なアロンソのマシン開発力が鍵になってくると思われる。
A&T ウィリアムズ
A&T Williams
2008年はグランプリ500戦、5万ラップといった記録的な年を迎えるウィリアムズ。ドライバーは、ニコ・ロズベルグのチームメイトとして、中嶋一貴がフルタイムドライバーとして抜擢された。2006年に低迷を迎えたウィリアムズだが、トヨタエンジン2年目となる今年は名門チーム復活を目指す。
今年のマシン「FW30」は、基本的には昨年マシンFW29のキープコンセプトモデル。ただし、一見代わり映えのなくみえるマシンは、空力面で大幅な進化を遂げている。ポッドウィングは巨大なフェンス形成する。冬季テストでは、ロングランでかなり速いラップタイムを刻んでおり、中団グループのトップ有力候補とみられている。
レッドブル・レーシング
Red Bull Racing
2007年は信頼性不足に悩まされたレッドブル。ドライバーは、引き続きデビッド・クルサードとマーク・ウェバーのコンビとなる。
今季マシン「RB4」の最優先事項は、信頼性の確保であることはいうまでもない。エイドリアン・ニューウェイによる、革新的なデザインが予想されていたが、実際に登場したRB4は意外にもRB3のそれと似通った保守的なものだった。昨年もピークパフォーマンスはかなり良く、その実力を安定して発揮することがこのマシンに定められた目標だろう。ただ、冬季テストでは、シャークフィンのような奇抜なエンジンカバーを採用。これは、直進安定性を狙ってのものと思われる。一発の速さはあるだけに、昨年同様、信頼性が今季の鍵となるだろう。
パナソニック・トヨタ・レーシング
Panasinic TOYOTA Racing
2006年以降、苦しいシーズンを過ごしているトヨタ。このような状況の場合、他チームは組織の大改編を実施するところだが、トヨタは今季もマネイジメント体制や技術部門の顔ぶれを変えることなく、継続することで良い結果を生み出すという道を選んだ。その中で最も大きな変化といえるのが、ラルフ・シューマッハに変わってヤルノ・トゥルーリのチームメイトとなったティモ・グロック。昨季のGP2王者がチームに与える影響に期待した。また、サードドライバーにはTDP主審の小林可夢偉が就任した。
昨年マシンはブリヂストンタイヤに対応に苦しんだトヨタだが、今季マシン「TF108」は、空力コンセプトを大幅に変更。昨年のトレンドを採り入れたモダンなスタイルへと変化を遂げた。ただ、その変化はトヨタ的なオーソドックスな領域から踏み出せていない印象を受ける。トヨタのして、真価が問われる1年となるだろう。
スクーデリア・トロロッソ
Scuderia Toro Rosso
昨シーズンは親チームのレッドブルを脅かすほどの予想外の健闘をみせ選手権7位を獲得したトロ・ロッソ。今季はセバスチャン・ベッテルに加え、チャンプカーの4年連続チャンピオンであるセバスチャン・ブルデーを迎えた”ダブル・セバスチャン”体制とガ注目だ。
レッドブルがRB4の開発に全力で取り組んでいるため、開幕4戦は、昨年マシンSTRを今季のレギュレーションにあわせて改良した「STR2B」で戦うトロ・ロッソ。ただ、レッドブルRB3とするその実力は実証済みであり、信頼性さえ確保できれば、アドバンテージとなるかもしれない。
今季の話題とは逸れるが、レッドブルは2010年までにチームを売却することを発表しており、その動向も注目される。
ホンダ・レーシングF1チーム
Honda Racing F1 Team
昨年は最悪のシーズンとなったホンダ。今季は、チーム・プリンシパルにロス・ブロウンが就任し、改革の1年を迎える。
ドライバーは、引き続きジェンソン・バトンとルーベンス・バリチェロのコンビとなる。
昨年マシンRA107は、エアロダイナミクスを失敗したことはチームも認めるところ。ダウンフォースの変化に過剰に反応し、スタビリティに問題を抱えた。今季マシンRA108は、それらの問題を解決するために、エアロダイナミクスを根本的に変更。ハイノーズの下面を持ち上げ、フロント床下空間を確保。また過激だったサイドポッドはごく通常の形に改められている。カラーリングは昨年のアースコンセプトを継承。
ロスの手腕によりマシンとチームがどれくらい新化するかが鍵といえる。
スーパーアグリF1チーム
Super Aguri F1 Team
昨年はスペイン、カナダGPでポイントを獲得するなど大活躍をみせるも、資金難により後半戦は開発もままならない状態だったスーパーアグリ。資金難は冬季テストまで尾を引き、まともなテストを行うことすら出来ず、一時は参戦が危ぶまれた。しかし、マグマ・グループがチームを買収することが決定し、無事に開幕戦のグリッドにたどり着いた。
今季マシン「SA08」は、昨年のホンダRA107のレギュレーション対応型といえる。しかし、ギアボックスは今季ホンダRA108のものであり、リアサスペンションも同様。したがって、SA08AはRA107のフロントにRA108のバックエンドを移植したハイブリッドマシンということになる。昨年のホンダの不調の原因となったRA107がベースであり、またほとんどテストをしていない状況を考えると、状況は厳しいだろう。
2008年5月16日、F1からの撤退を発表。
フォース・インディア・フォーミュラ1チーム
Force India Formula One Team
インドの大富豪ビジャイ・マルヤがスパイカーを買収して誕生した新チーム、フォース・インディア。ドライバーには、ベテランのジャンカルロ・フィジケラがルノーから移籍。チームメイトにはエイドリアン・スーティルがスパイカーから引き続きドライバーを務めることになった。
今季マシン「VJM01」は、スパイカーF8-VIIをレギュレーションにあわせたもの。ただ、フォース・インディアはスパイカーの約2倍の予算を用意しているといわれ、期待が高まる。チームは冬季テストで中団に迫るペースをみせており、最下位からの脱出も現実的なものとなりそうだ。またチームは、自前でシームレス・ギアボックスを開発し、今季導入することを口にしている。
ボーダフォン・マクラーレン・メルセデス
Vodafone Mclaren Mercedes
昨年は、いわゆる“ステップニー事件”の影響でコンストラクターズポイントを剥奪され、ドライバータイトルも逃し、さらにはアロンソが離脱するなど波乱の1年となったマクラーレン。今季はルイス・ハミルトンと、ルノーから移籍したヘイキ・コバライネンのコンビで挑む。
今季マシンのMP4-23は、事実上昨年の最速マシンともいえるMP4-22の正常進化系。エアロ類にはマクラーレンらしい繊細な処理が目立つ。ホイールベースは拡大された。これは4レース使用のギアボックスが要因も考えられるが、トラクションコントロール禁止にともない、マシンの挙動を安定させるい意図も込められているだろう。
今季もフェラーリとともに2強とされているマクラーレン。ダブルタイトル奪還とともにハミルトンとコバライネンのチーム内対決も見物だ。