2025年シーズンFIA世界耐久選手権(WEC)第3戦「スパ・フランコルシャン6時間」の決勝が、5月10日(土)にベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催された。TOYOTA GAZOO Racing(TGR)のGR010 HYBRIDは後方グリッドからのスタートとなったが、ドラマに満ちたレースを果敢に戦い抜き、2台揃ってポイントを獲得した。
TGRにとって、このスパは来月のル・マン24時間レースに向けた最後の前哨戦である。チームは厳しい予選結果を乗り越え、ドライバーの力強い走りと綿密なレース戦略により貴重なポイントを積み重ねた。セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮が駆るGR010 HYBRID 8号車は、攻めのピット戦略を用い、激戦の末に4位でフィニッシュ。小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ニック・デ・フリースのGR010 HYBRID 7号車は7位でチェッカーを受けた。この日のスパ・フランコルシャン・サーキットは好天に恵まれ、ドイツ・ケルンのチーム本拠地やベルギー拠点のトヨタ・モーター・ヨーロッパから応援に訪れた従業員を含め、週末を通して約10万人の観客が来場した。グランドスタンドを埋め尽くす大観衆が見守る中、現地時間午後2時に6時間の決戦の幕が開けた。予選で15番手に沈んだ8号車のブレンドン・ハートレー、16番手スタートの7号車のマイク・コンウェイは、序盤からポジションアップを狙って激しい追い上げを展開した。最初のスティントでは、18台のハイパーカーによる緊迫した接近戦が随所で繰り広げられ、TGRの2台も正確かつアグレッシブなドライビングでトップ10圏内を狙える位置まで浮上した。しかし、マイク・コンウェイはスタートから23分で右前タイヤがパンクし、クラス最後尾に後退する苦しい展開となった。2時間が経過する前にバーチャルセーフティカーが導入されたことで、7号車はグリーンフラッグ下でのピットストップよりも有利なタイミングでピットイン。これによりトップ10圏内に復帰し、2時間半を経過した時点で小林可夢偉にドライバーを交代し、8位でコースに戻った。一方、8号車は11位で平川亮へバトンを渡した。小林可夢偉はポルシェ5号車とのスリリングな7位争いの中で一度コースオフするも、数周後に再びオーバーテイクを成功させた。このタイミングでセーフティカーが導入され、各車が一斉にピットへ向かった際、7号車は2本のみのタイヤ交換という戦略と迅速な作業により3位でリスタートする好機を得た。しかし、その後はフェラーリ勢からの猛攻にさらされ、集団バトルの最中にバス・ストップ・シケインでブレーキをロックさせてコースオフ。7号車は7位へと順位を下げた。4時間目前に2度目のセーフティカーが出動し、2台のGR010 HYBRIDは共にピットインしてドライバーを交代。ニック・デ・フリースが駆る7号車は4位、セバスチャン・ブエミが乗る8号車は9位でレースに復帰した。この時点でセバスチャン・ブエミは、2012年のデビュー以来のWEC決勝出走回数が89回となり、WEC史上最多記録に並んだ。残り2時間は、各チームのピット戦略が勝敗を分ける展開となった。8号車は他車よりも早めにピットに入ってトラフィックを回避する戦略を採用し、セバスチャン・ブエミは速いラップを連発。ライバルたちが通常どおりのタイミングでピットインする中、8号車は一時的に首位を走行。残り45分で最後の給油を行った。一時は10位に後退した8号車だが、ライバルが順次ピットへ向かうなかで順位を回復し、終盤には4位まで浮上。ニック・デ・フリースがドライブした7号車も最後まで粘り強く戦い、7位でゴール。TGRは今季開幕から3戦連続で2台揃ってのポイント獲得となった。次戦は、6月14日(土)~15日(日)に決勝が行われるシーズンのハイライト「ル・マン24時間」である。TGRは、サルト・サーキットでの6度目の勝利を目指す。小林可夢偉(チーム代表 兼 7号車 ドライバー)「4位と7位というのは、今大会の我々にとって最高の結果だと言えます。2台の戦略を分けたため、我々の7号車は順位を落としましたが、8号車が素晴らしい走りで4位フィニッシュを果たしてくれました。この週末、チーム全てのメンバーとドライバーが素晴らしい仕事をした結果であり、彼らの多大な努力に感謝したいと思います。次はル・マンの大舞台です。必要なパフォーマンスを見出すべく努力を続けて行きます。再びル・マンでの勝利に挑むのが楽しみです」マイク・コンウェイ(7号車 ドライバー)「今日のレースは刻々と展開が変わり、多くのアクシデントもありました。私のスティントではパンクに見舞われ、戦略を変更せざるを得ませんでした。しかし、すぐ後にバーチャルセーフティカーが導入されたのは幸運でした。最終的には、8号車が変則的なピット戦略を採り、それが効を奏しました。彼らはよくやったと思います。2台揃って選手権ポイントを獲得できました。上位を争うライバルにはペースでは及ばなかっただけに、予想以上の結果でしたが、もっと上を目指していかなければなりません」ニック・デ・フリース(7号車 ドライバー)「チームとして厳しいレースでしたが、4位と7位フィニッシュという結果は良かったと思います。今週の我々のパフォーマンスを考えれば、これが最大限の結果だったのは間違いありません。大変な挑戦でしたが、全力を尽くして必死に戦い、チャンスを上手く活かしました。チームとして、この週末に持っていた力を最大限に引き出せました」セバスチャン・ブエミ(8号車 ドライバー)「全て考えて、この結果には満足しています。ピット戦略を上手く変化させ、ポジションを上げていくという素晴らしい戦いでした。チーム全員が最大限のパフォーマンスを発揮した結果で、これ以上は難しかったと思います。高い信頼性と考えられた戦略を実行し、コース上のトラフィックの中でもミスを犯すことはありませんでした。もっと上位でフィニッシュしたかったですが、素晴らしいレースパフォーマンスだったと思います」ブレンドン・ハートレー(8号車 ドライバー)「波乱のレースでした。我々は2台揃って後方グリッドからスタートしました。ペースではライバル勢には及ばなかったものの、素晴らしいチームワークを発揮できたと思います。良い戦略で、集中力を切らさず戦い続けた結果、一時は表彰台の可能性も見えました。ただ正直なところ、4位が現実的に達成できる最良の結果でした。とはいえ、予選を終えた時点では、この結果は夢にも思いませんでした。メカニック、エンジ...
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