レーシング・ポイントのオーナーであるローレンス・ストロールは、“ピンクメルセデス”を巡る騒動において、ライバルチームは“スポーツマンシップに欠けている”と非難し、チームの名前に“泥を塗ろうとしている”と激怒している。F1 70周年記念GPに先立ち、FIAスチュワードはレーシング・ポイントRP20のブレーキダクトの設計プロセスが競技規則に違反しているとして、40万ユーロ(約5,000万円)の罰金を科すとともに、コンストラクターズ選手権から15ポイントを剥奪する処分を下した。
だが、レーシング・ポイントは該当のブレーキダクトを使用し続けることができることから、マクラーレン、フェラーリ、ウィリアムズ、ルノーが処分は甘すぎるとして上訴の意向を申請した。レーシング・ポイント自身も上訴の意向を示しており、国際控訴審判所で争うと強硬な姿勢をみせている。昨年、投資家のコンソーシアムを率いていチームを買収したローレンス・ストロールは、スチュワードの裁定とライバルチームの反応に怒りを露わにした。「私が公の場で話をすることは滅多にないことだが、『我々が裏で取引をした』『不正を働いた』といった噂に非常に憤っている。特にそういった発言がライバルから出ていることは不愉快だ」とローレンス・ストロールは語った。「私は人生で一度も不正を働いたことなどない。このような告発は決して受け入れられるものではないし、真実とは異なる。私、そして、チームの誠実さは疑う余地のないことだ」「レーシング・ポイントが技術規則に従ったことが明白であるにも関わらず、ルノー、マクラーレン、フェラーリ、ウィリアムズが上訴し、我々のパフォーマンスを損なおうとしていることには開いた口が塞がらない。彼らは我々の名前に泥を塗ろうとしている。このようなことを見過ごすことはできないし、決して受け入れることはできない」 「必要などんな手段を使ってでも我々の無実を証明するつもりだ。私のチームは、グリッド上に今の競争力のあるなマシンを並べるために疲れを知らず働いた。ライバルのスポーツマンシップの欠如には本当に腹を立てている」 「FIAの立場上、多くの理由によって難しく、複雑なことは理解できる。だが、同時に私はスポーツにとって最大の利益を考えて解決策を見つけようとする彼らの努力には感謝している」 FIAスチュワードが、裁定を下す決め手となったのは、レーシング・ポイントが昨年メルセデスが使用していたリアブレーキダクトをベースにして2020年のブレーキダクトを設計した点にある。2019年の時点ではブレーキダクトはノン・リステッド・パーツであり、ライバルチームから購入することができていたが、今年からチームが独自に設計しなければならないリステッド・パーツに移行した。レーシング・ポイントは、昨年まだブレーキダクトがノン・リステッド・パーツだったときにメルセデスから合法的に情報を入手したが、フロントのブレーキダクトの設計だけを使用し、リアのブレーキダクトは独自設計のものを使っていた。2019年に使用していたことを理由に、スチュワードはフロントのブレーキダクトの設計を今年も継続使用することは“既得権パーツ”とみなされることから許容できると判断している。しかし、メルセデスの2019年型の設計を元にしたリアのブレーキダクトを2020年マシンに導入することはレギュレーション違反だと結論づけた。 ローレンス・ストロールはレギュレーションに“既得権”についての記載はないと反論し、FIAが今年3月にチームのファクトリーを訪れ、設計プロセスを調査した際には、RP20は合法との判断されていたことを指摘した。「FIAから、リステッド・パーツへの移行がレギュレーションの精神や意図の範囲内でどう扱われるかについて特定のガイダンスや説明はなかった」とローレンス・ストロールはコメント。「現状のルールでは、2019年より後にブレーキダクトの設計を共有または取得してはならないと書かれている。その時点で知っていること、すでに学んだものは個人の情報だ。そこから先はその個人の自由だ。我々はその通りにしただけだ」「明確にすると、ノン・リステッド・パーツからリステッド・パーツへの移行をおいて、FIAはガイダンスを用意していなかった。レーシング・ポイントは2020年3月にこの件に関してコンプライアンスを示す承認書を受け取っている」 「だが、今週になってFIAが新たな既得権条項を導入したことにショックを受けた。これまでそのようなものは存在もしていなかった」