メルセデスは、今季のF1マシン「W16」が直面しているパフォーマンス低下の原因を突き止めるべく、7月29日(月)にブランズハッチの本拠地で両ドライバーを交えた技術会議を実施した。ジョージ・ラッセルとキミ・アントネッリも出席し、ここ数戦で顕在化しているマシンの問題について意見を交わした。シーズン序盤はレッドブルと並びマクラーレンの最大のライバルと目されたメルセデスは、ラッセルが6戦中4回の表彰台を獲得するなど好調だった。
しかし、カナダGPで1-3フィニッシュを飾った後は失速傾向にあり、特にスパではその問題が浮き彫りとなった。ラッセルはフェラーリのシャルル・ルクレールやレッドブルのマックス・フェルスタッペンに及ばず、孤独な5位でのゴールに終わった。「正直言って、今季で最も期待外れのパフォーマンスだった」とラッセルは語る。「コンディション的には僕らに理想的なはずだったのに、なぜこうなったのか理解しなければならない。今週、大きな話し合いをしてその原因を突き止めるつもりだ」リアの不安定さが最大の課題チームによると、最大の問題はコーナー進入時のリアの不安定さにあるという。近年の開発の方向性がマシンを「幸せではない状態」に導いてしまった可能性があると見ている。メルセデスのトラックサイド・エンジニアリングディレクター、アンドリュー・ショブリンは次のように説明した。「シーズン序盤は、どのサーキットでも安定していた。予選では常に2列目、あるいはフロントローを争っていた。しかし最近は違う。どこかで間違った方向に進んでしまったようだ。元の正常な状態に戻す必要がある」リアの不安定さに苦しむW16──ベルギーGP後、原因究明のため会議が開かれた可変フロントウイング規制が引き金?ラッセルは、問題が始まったのはスペインGP以降だと見ており、FIAによる可変式フロントウイング(フレキシブルウイング)規制が影響している可能性を指摘する。「その対応でセットアップの方向性を変えたけど、あれから明らかにパフォーマンスが落ちた。元に戻すだけで改善するかもしれない。フロントウイング自体は戻せないけど、それ以外の部分でまだやれることはあるはずだ」ショブリンも、フロントウイングの影響だけでは説明がつかないと考えている。「モントリオールでは同じウイングを使っていたけど、問題なかった。他のチームはうまくバランスを取れている。我々も解決策を見出さなければならない」ハンガリーGPまでに修正可能かメルセデスは週末に控えるハンガリーGPに向け、即時の対処を検討している。「深い変更になるかはパーツの在庫次第だが、いくつかの要素は変更可能だ。今季やってきたことを整理し、正しい方向に努力を集中させることが大事だ」とショブリンは語る。アントネッリの苦戦もマシンが原因W16の扱いにくさは、ルーキーのキミ・アントネッリにも影響しているという。ベルギーGPでは再びノーポイントに終わり、厳しいレースが続いている。「ジョージはF1での経験を活かして、難しいマシンでもうまくやっている。しかしキミにはその経験がない。だからこそ最近の成績が落ちているんだと思う」メルセデスは今季の巻き返しのためにも、マシンの根本的な問題解決に本腰を入れる必要がある。ドライバーと技術陣が一丸となってその糸口を探る作業が始まっている。