スクーデリア・フェラーリは、2025年シーズンの不振から脱却するために“新旧の融合”による改革を進めている。だが、イタリア国内ではその試みに対し厳しい見方が広がっている。フェラーリFチーム代表のフレデリック・バスールは、エミリア・ロマーニャGPでの決勝ペースには一定の満足感を示したものの、予選における一発の速さの欠如にはフラストレーションを抱えている。
この状況に、母国モナコGPを目前に控えたシャルル・ルクレールは希望を失いつつある。『Corriere dello Sport』に対して「楽観的にはなれない」と語り、次のように続けた。「僕たちは、チームの弱点が露呈するサーキットに向かっている。当然、予測不能な要素もあるし、モナコのようなコースでは他とは異なるセッティングが必要だから、自分たちを驚かせる展開になることを願っている。イモラの決勝のようにね」一方でルイス・ハミルトンも、低速コーナーでのマシン性能に対して疑念を口にしている。「うちのマシンは高速コーナーでは良くて、中速ではまあまあ。でも低速では他のチームに対してそれほど強くないかもしれない」ただし、イタリア紙『Corriere della Sera』の記者ダニエレ・スパリスチはより辛辣な見解を示している。「イモラでの追い上げ劇は、根本的な問題を覆い隠すものではない。フェラーリはこの世界選手権を戦える状況にはない。だが、だからといってこのシーズンを放棄することもできない」「開発が止まれば、フェラーリはウィリアムズF1にも後れを取るリスクがある」同紙によれば、現在マラネロのファクトリーでは、マシンの最大の課題とされるリアサスペンションの改良作業が急ピッチで進められている。「新しいリアサスペンションは動的試験台でのテストをクリアしており、異なる空力仕様とともに風洞での検証が行われている」ただし、その新型リアサスが実戦投入されるのは、早くても7月のシルバーストン(F1イギリスGP)以降になるとみられている。それまでの間、バスールは6月のF1スペインGPで導入されるフロントウイング規則の変更にも期待を寄せているという。今週末のF1モナコGPに向けては、スクーデリア・フェラーリは昨年(2024年)仕様のリアウイングを持ち込む予定だ。低速かつタイトなストリートコースであるモナコでは、過去のデータに基づいたアプローチが再び活用される。フェラーリの現在の技術陣にも注目が集まっている。現テクニカルディレクターのロイック・セラは、昨年末にマラネロ入りしたばかりだが、バスールはこう釈明する。「ロイックが来たのは6か月前のことで、現在のマシンはその時点で“90%完成していた”状態だった」セラは現在、アストンマーティンに移籍したエンリコ・カルディーレの後任として、再建の鍵を握っている。「我々はマシン設計でミスを犯した。もっと良い仕事をしなければならない。しかし、モチベーションも、正しいマインドセットも、チームにはしっかりと根付いている」とバスールは前を向く。だが、新たな技術人材の獲得にも暗雲が立ちこめている。『Corriere dello Sport』の報道によれば、フェラーリはマクラーレンの空力責任者かつチーフ・オブ・スタッフであるジュゼッペ・“ピノ”・ペッシェの招聘を目指したものの、交渉は失敗に終わったという。2025年のF1シーズンはまだ折り返しにも達していないが、スクーデリア・フェラーリにとってはすでに“崖っぷち”の様相を呈している。リアサス刷新の遅れ、技術陣の再構築難航、そして中団チームからの猛追。跳ね馬が再びトップ争いに返り咲くには、想定以上の困難を乗り越える必要がある。