ジェンソン・バトンは、インディカードライバーのジャスティン・ウィルソンの死亡事故を受け、F1はコックピットキャノピーを導入する道を見い出すべきだとの見解を語った。2週間前にポコノ・レースウェイで開催されたインディカーのレース中、他車のデブリが衝突したジャスティン・ウィルソンは頭部に重傷を負い、翌24日(月)に帰らぬ人となった。
これを受けて、オープンコックピットのレース界の安全性に関する議論が白熱している。2009年にはF2でヘンリー・サーティースが他車から外れたタイヤホイールとぶつかって命を落とし、さらに同年のF1ハンガリーGPではフェリペ・マッサの頭部に飛んできたスプリングが直撃して大怪我を負っており、以来、FIAはコックピット保護を強化する方法を調査している。カート時代にジェスティン・ウィルソンとしのぎを削ったジェンソン・バトンは、ポコノの事故が保護強化の必要性に関する自身の意見を変えたと明かす。「今回の出来事は本当に悲しいし、僕たちみんなが精神的に打ちのめされていると思う」とジェンソン・バトンはコメント。「カート時代にレースをした相手であり、F1でも競争し合った仲だからというだけではない。今のモータースポーツで起きではいけないことだからだ」「1970年代ではないし、もっと良くなっているべきだと思っている。僕はずっとオープンコックピットのレースなんだから、オープンコックピットのままにすべきだと言ってきたドライバーの一人だけど、もう十分だ」「真剣に何かに取り組むべきタイミングだと思う。マシンのヘッドレストなどを変えるだけではなく、キャノピー的なものを導入するなどの必要がある。ここ数年で発生した回数を考えてみてほしい。ヘンリー・サーティースの一件以来、死亡につながる頭部の怪我が多すぎる。変えるべきだと思う」FIAが検討しているアイデアは2つあると言われている。ひとつはドライバーの頭上に1本のステーで支える細いながらも強固な保護的ボディワークのフープを設置する案だ。しかし、事故発生時にドライバーがマシンに閉じ込められる欠点があるが、ジェンソン・バトンは戦闘機スタイルのキャノピーの導入を真剣に検討すべきだと主張する。「僕はキャノピーがいいと思っている。頭部周辺にブレードが設置されれば、もちろん破損しないことを想定しつつだけど、特殊な衝撃があれば壊せる、とか、そんな感じでね。正直、あまり詳しく考えたことはないけど、たぶんキャノピーが進むべき道だと思う」「もちろん、時間はかかるだろう。来年のF1に導入されるとは思っていない。個人的にはすぐにでもそうなるべきだと思っているし、インディカーは僕たち以上に問題が多いようなので、彼らはそうすべきだと思う。彼らが出しているスピードもそうだ。クラッシュすればバンクから逃げられないので、どんなアクシデントもデブリがつきものだ。だから、わりと早めにキャノピーを目にすることになればいいと思っている」一方、メルセデスのルイス・ハミルトンは、クローズドコックピットが検討されるべきだとしながらも、ドライバーシートからの景色は奇妙に映るだろうと認めた。「難しい問題だねし、悩んでいる。将来的にはクローズドコックピットになるのではいかと思うけど、アイルトンの時代のレースを見て育ってきた者としては、ずっとオープンコックピットだったからね。考えを変えるのは難しいけれど、変化が前進になることもある。自分が好きかどうかはわからない。頭上にキャノピーがあったら変な気分だろうね。でも、あまりに多くの死があった」「20年前よりははるかに少ないけど、それでも多すぎるし、これ以上はあってはならない。改善するために変えていかなければならない。F1だけではなく、他のクラスもね。若いサーティースのことや、スパのGP3のレースで起きたクラッシュとか、タイヤがコースを横切るシーンを見ると、“もしあれが他のドライバーにぶつかったら・・・”と考える。これ以上、そうならないことを願っている。ただ、閉鎖する必要はないかもしれない。別のメカニズムがあるかもしれない。それをみんなが調べているんだと思う」だが、F1ドライバー全員がその意見に賛同しているわけではない。フォース・インディアのドライバーでル・マン24時間レースを制したニコ・ヒュルケンベルグは、クローズドコックピットになればシングルシーターレースのDNAを変えることになると考えている。「確かにメリットもデメリットもある。僕的にはシングルシーターのレースはオープンコックピットだ。今年の契約をするとき、リスクがあることは承知していたはずだし、危険が伴う可能性もわかっていたはずだ。それがレーシング、モータースポーツのDNAだ」「全てをなくすべきではないし、殺風景にしすぎたり、何もかもを守ろうとしすぎるのも違うと思う。それはこのスポーツにとって良くないだろうし、魅力がなくなってしまう気がする」コックピット保護の強化や導入に関して厳正なタイムフレームは決められていないが、FIAのチャーリー・ホワイティングはこの問題が統括団体の重要課題であることを明言している。