2025年F1で4度の世界王者となったマックス・フェルスタッペンについて、長年レッドブルのマシン設計を担ってきたエイドリアン・ニューウェイが、その“特別な資質”を語った。ニューウェイは、外的要因を完全に遮断して走りに集中する能力、そして成熟した精神性こそがフェルスタッペンを“他とは違うドライバー”にしていると評価している。F1の技術開発とドライバー評価に40年以上携わってきた人物の言葉だけに、内容は重みを持つ。
ニューウェイが語るフェルスタッペンの“成熟”と圧倒的集中力エイドリアン・ニューウェイは、フェルスタッペンが備える精神的強さを次のように称賛した。「マックスは今では本当に傑出していると思う。決して楽な家庭環境で育ったわけではないが、彼の成熟ぶりは驚くべきものだ」「プレッシャーに対処する能力、プレッシャーを吸収する能力。人生で何が起きていても、ヘルメットをかぶってクルマに乗り込む瞬間に、すべての雑音が消えてレースに集中できる。その能力はスポーツ選手として本当に印象的だと思う」フェルスタッペンはすでに4度の世界王者となり、メキシコシティGPでは歴代表彰台数で3位に浮上。そのすべてのタイトルを、ニューウェイが設計したレッドブルのマシンで獲得している。2021年はルイス・ハミルトンを破り初戴冠。2022年・2023年は圧倒的な強さで連覇。2024年も終盤のマクラーレン勢の猛追を退けて王座を守りきった。その裏には、ニューウェイが指摘する“精神的な静寂をつくり出す能力”があるという。ニューウェイが語る“セナの凄み”──短くも鮮烈な関係ニューウェイは、これまで関わったドライバーの中でアイルトン・セナも特別な存在だったと振り返る。「アイルトンとの関係は、本当に短いものだった。しかし、彼には強く印象づけられた」ウィリアムズ加入が決まった1993年末、セナは初めてファクトリーを訪問。その際、風洞に到着するとすぐに膝をつき、リアサスペンションを食い入るように観察したという。「彼はすぐにリアサスペンションの違いに気づき、“これは何のために?”“なぜこうした?”と質問を投げかけてきた」「私は答えるのに必死だった。アイルトンは間違いなく outstanding(卓越した)存在だった」ニューウェイは、セナの“技術を本能的に理解しようとする鋭さ”こそが特別な才能だったと語る。フェルスタッペンとセナ──ニューウェイが感じた“共通点”と“違い”今回のコメントから浮かび上がるのは、ニューウェイがフェルスタッペンに見ている「精神面の圧倒的成熟」 と 「外界を遮断する集中力」。一方で、セナに感じたのは「技術に対する鋭い本能的理解」。いずれもニューウェイを魅了した“特別なドライバー”だが、現代F1の中でフェルスタッペンが持つ最大の武器は、雑音を完全に切り離し、レースだけに没入する能力だとニューウェイは語っている。