フォース・インディアと“アルファロメオ・ザウバー”は25日(木)にF1のガバナンスと支払構造に関する欧州連合(EU)の競争委員会への申し立てを取り下げたことを発表したが、ザウバーが取り下げを実施した背景にはフェラーリの力があるかもしれないと pitpass.com は考察している。現在、フェラーリ、レッドブル、メルセデス、マクラーレン、ウィリアムズの5チームはF1と個別に契約を結び、コンストラクターズ選手権に基づいて均等に配分される賞金に加えて、F1からプレミアム(割増)支払を受けている。
特に1950年にF1世界選手権が始まってから唯一の参戦を続けているフェラーリは、F1で特権的なステータスと巨大な権力を持っている。フェラーリには長期参戦のプレミアムボーナスが与えられており、その額は毎年少なくとも1億ドルと言われる。そのため、この10年はタイトルから遠ざかっているが、フェラーリの毎年の分配金は全チームのなかで最も多額となっている。2015年9月、フォース・インディアとザウバーは、F1の収入の分配とルール作成が“不公平かつ不法”だとして欧州委員会に正式に意義を申し立てた。そして、両チームからの申し立てを受け、2016年4月に欧州委員会内に新たに部署が設立され、監査が行われていた。2017年にF1の新たなオーナーとなったリバティ・メディアは、F1をより公平な場にしたいと考えており、分配金におけるフェラーリの“特別ボーナス”や“レギュレーション変更への拒否権”を廃止することを検討している。そして、2チームの欧州委員会への申し立ての取り下げは、2020年以降の契約についてチームとの交渉が開始された矢先の出来事だった。ザウバーは、2018年からフェラーリの姉妹ブランドであるアルファロメオをタイトルスポンサーに迎え、“アルファロメオ・ザウバー”を名乗る。フェラーリから最新のパワーユニットや技術支援に加えて、毎年2000万ドルの金銭的な支援を受けることになった。これにより、ザウバーはフェラーリの“Bチーム”になったとの見方が強い。リバティメディアは、欧州委員会からF1の分配金制度が“不当”であるとの判断が下されれば、賞金ポッドを均等に分割する計画が不可欠であると正当に主張することができた。しかし、その申し立てが取り下げられたことで、リバティメディアは計画を進めるうえでの建前となる“F1が欧州連合競争法に反することを防ぐ”という大きな切り札を失ったことになり、交渉におけるポジションはひどく弱まった。言い変えれば、フェラーリは1億ドル以上の財源と特権を失う危機を2000万ドルというコストでひとまず乗り切ったことになる。フェラーリのセルジオ・マルキオンネ会長は、リバティメディアが提示するF1の将来の計画に不満を抱いており、改善がなされないようであればフェラーリのF1撤退もあり得ると強い反発を示している。そして、“アルファロメオ・ザウバー”に加えて、マセラティを通じてハースに資金を投入して“Bチーム”として取り込み、F1内で3チームの投票ブロックを作り上げようとしていると推測されている。関連:【F1】 2016年度 F1チームの分配金の詳細
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