3連戦の幕開けを飾ったイモラでの激闘を経て、F1パドックは地中海沿いを移動し、再び最も象徴的な地へと向かう。ドライバーズ選手権では上位3名がわずか22ポイント差の接戦を演じ、新ルールによってレース展開にも変化が加わることから、今週末のモナコGPには注目すべき点が数多くある。
今季のF1は中盤戦を迎え、勢力図が一層複雑になってきた。マクラーレンの台頭に加えて、フェルスタッペンが復調の兆しを見せ、さらにはフェラーリやウィリアムズも浮上のきっかけを掴みつつある。そんな混戦模様の中で迎えるモナコGPは、ドライバーの技量とチームの戦略が試される特別な舞台だ。予選の一発勝負に加え、今年は義務化された2ストップ戦略が展開に波乱をもたらす可能性もあり、順位変動の鍵を握る要素が揃っている。1.タイトル争いが再び接近マイアミGPの時点では、今年のドライバーズ選手権はマクラーレンの2人による一騎打ちになりそうだと感じたファンも多かっただろう。オスカー・ピアストリとランド・ノリスの2人は、他チームを圧倒するパフォーマンスを見せていた。しかし2週間後のイモラで、その印象は一変した。マックス・フェルスタッペンは依然として予選で強さを見せるだけでなく、今回のレースではすべてのタイヤコンパウンドで競争力のあるマシンを手にしていた。ピアストリをタンブレロで見事にオーバーテイクした後は、まったく危なげのない走りを披露した(以下の映像参照)。ノリスもピアストリから3ポイントを奪取し、上位3人の差はさらに縮まった。現在ピアストリが13ポイント差でノリスをリードし、フェルスタッペンも22ポイント差で追う展開。これはレース1勝分にも満たない差であり、モナコを終えた時点で誰が首位に立っていてもおかしくない状況だ。レッドブルは過去2戦にアップグレードを投入しており、依然として調子には波があるかもしれないが、フェルスタッペンがコンスタントにポイントを重ねていることからも、タイトル争いに留まり続ける力があることを示している。2025年エミリア・ロマーニャGP:フェルスタッペン、スタートでピアストリを抜く鮮やかな動きでトップへ2.フェラーリに希望の兆しフェラーリがドライバーズタイトル争いに加わるのは簡単ではないが、その第一歩は再び勝利を狙える位置に戻ることだ。イモラではその可能性を感じさせる前向きな要素も見られた。マイアミではパフォーマンスが振るわず、イモラでは両ドライバーがQ2で敗退するという流れだったが、決勝では非常に強力なレースペースを発揮し、追い抜きが難しいこの狭いサーキットでも2台揃ってトップ6入りを果たした。シャルル・ルクレールは今季すでに表彰台を経験しており、ルイス・ハミルトンもグランプリで初の表彰台に手が届くところまで迫った(彼は今季のスプリントで1位と3位を記録している)。ハミルトンはピアストリに1.4秒差まで迫り、マシンとの「シナジー」や「一体感」がようやく感じられてきたと語っている。モナコはまったく異なる特性を持つサーキットだが、イモラでのレース内容がフェラーリの士気を高めたことは間違いない。イモラ決勝では、フェラーリに前向きな兆しが見られた3.ウィリアムズの進化が続く最近、雰囲気が良いチームといえば、ウィリアムズの名前が挙がるだろう。マイアミでの素晴らしいパフォーマンスに続き、イモラでも非常に競争力のある走りを見せた。アレックス・アルボンは表彰台争いにも加わる勢いで、最終的には2戦連続で5位という好成績を収めた。カルロス・サインツも2戦ともにアルボンに並ぶペースを見せていたが、マイアミではダメージ、イモラでは戦略面で悔しい結果となった。チーム代表のジェームス・ボウルズも、「5位と8位という結果は、実のところ我々にとっては物足りなかった」と認めている。ウィリアムズはイモラでの再現性には慎重な姿勢を見せていたが、モナコについては「大きな可能性がある」とボウルズは語っている。同氏はかねてから2026年の大幅な進化を目指していると明言しているが、今季すでにこのような成果を出していること自体が嬉しい誤算だ。アルボンはイモラで再び5位を獲得、表彰台も狙える内容だった4.“王冠の宝石”モナコGPF1カレンダーには24戦が組まれており、それぞれに個性があるが、モナコの市街地をF1マシンが駆け抜ける姿は、やはり特別だ。これまでは“予選がすべて”と言われるサーキットだったが(戦略面は後述)、ある程度競争力があるマシンさえあれば、ドライバーの腕次第で順位を上げられるのがモナコだ。バリアすれすれを通過する予選アタックは、モータースポーツ界でも最も見応えのあるシーンのひとつだ。20人のドライバー全員が週末中に一度はバリアに接触するだろうが、場合によってはもう少し“強く”当たることもある。そのリスクがあるからこそ、サン・デボーテ、ミラボー、タバコといった歴史的なコーナーで繰り広げられる“ダンス”は圧巻だ。加えて、急斜面の街並み、岩山の上に佇む宮殿、そして港に浮かぶ豪華ヨット――これほど絵になる舞台は他にない。モナコはF1において唯一無二のロケーション5.2ストップ義務化で戦略に変化モナコでは依然として予選順位が非常に重要になると見られるが、今年のレースでは大きなルール変更が加わっている。全チームの合意により、今年のモナコGPでは「2回のピットストップが義務付けられる」こととなった。これにより、戦略面での順位変動の可能性が高まり、レース展開がよりダイナミックになることが期待されている。従来は、他車がピットインするのをひたすら待ち、空いたタイミングで唯一のピットストップを済ませるというケースが多発していた。オーバーテイクが困難なモナコでは、タイヤの摩耗を抑えながら長く引っ張る戦略が有効だった。そこで新たに導入されたのが、「3種類の異なるタイヤをレース中に使用する」ことを義務付けるルールだ。従来の「異なる2種類のコンパウンド使用」ルールも併用されるが、これにより最低でも2回のピットストップが求められる。つまり、2度のピットインのためにトラフィックや空いたスペースを見極めなければならず、戦略面での判断ミスやピット作業の失敗が順位に大きく影響する可能性が高まる。トップランナーたちは、できるだけ早く後続を引き離してスペースを確保する必要があり、レース序盤から限界近くで走ることが求められる。そして何より、この新ルールの“本...
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